第26話 瘴気

奥から垣間見えるもの、地面にへばりつきドロドロと流れ出てくる。俺は変化したスライムか何かと思い、ただ単に炎魔法をぶっ放した。ハイゴブリンくらいなら瞬殺できるくらいの魔法。命中すると、煙が舞い、ドロドロの液体が認識ができなくなる。その煙が徐々に晴れていく。全くダメージを負ってない状態で俺の視界に参上した。


「嘘だろ!結構いい魔法だと思ったんだけどな」

「舐めプしているご主人様が悪いかと」

「なんか口答えが多くなってないか?」

「気のせいです、それより早く仕留めてください」

「はいはい」


結構勢いよくやったつもりだが、ダメージはゼロということに気づくとちょっとショックを受けた。それでも、まだ本気で相手にしていないため俺はまだ余裕が心の中にある。ルーシーは俺が悪いと一言言ってそのまま早く殺せと催促してきた。適当な返事を返し、俺は左手を突き出す。霹靂魔法を唱え、液体に直撃する。しかし、傷を与えられることなく耐えられてしまった。驚いた俺とルーシー、俺はさっきのハイドラゴン戦と同じようにならないように鑑定を発動。


攻撃力・0

耐久力・?

体力・968195

魔力・0


特殊スキル

『肉体変化』『体力暴食』


通常スキル

『肉体制御』


条件発動スキル

『邪念融合』


目を奪われたのは数値ステータス。『?』と表示されている耐久力に『0』と表記されている。なのに、体力の数値だけが異様に高い。もう少しで100万越え、俺はやっと1000行ったくらいだ。おそらく、この体力ステータスはこの『体力暴食』のスキルから来ているのだろう。大量の死体は、こいつが体力をすべて吸い取っていたのかもしれない。そして、こいつの存在を確定とさせるもの。『邪念融合』だ。これは邪念という邪というものが集まり、ある一定の集まりを超えると出現するもの。邪念のもととなるものはいまだに解明されておらず、邪念は一定の集合をすると霧となり、そこに入ったものの魔力を吸い取っていくというもの。そして、その邪念が唯一共生する生き物が存在する。それは瘴気。これは瘴気という気体がある一定数の集まりを超えると液体となり出現するもの。こちらも邪念と同じく解明はできていない。そして、共生するという観点からこのスキルから考えてみると、こいつは確定で瘴気だ。本から得た情報だが、本には倒すことはほぼ不可能とされていると記載。負ける確率が高いと考えた俺は、ルーシーを左腕で構えながら思考をまわしているうちに気づいたら再生しきっていた右腕で鎌を構える。


「ルーシー、引くぞ」

「何故ですか、確かにあれはご主人様の魔法を耐えましたが私から見ては引くほど強いとは思えないです」

「あれは、おそらく瘴気だ」

「~っ!....それに確証はあります?」

「鑑定をした結果にスキル欄に『邪念融合』があった、このまま戦闘を挑めば死ぬと思うほどにいびつな数値ステータスもあったんだ、引くのが妥当だろう」

「.....まさかこんなところでEXランクの魔物と遭遇するとは思いもしませんでしたね」


ルーシーに引くと伝えると、なぜ逃げるのかという少し怒っているような声で俺に問い詰めてきた。俺は冷静に今の状況を伝えると、その怒ったような声は薄れて恐怖という震えた声に変った。俺も早くここから脱したいため、音を立てずに後退していく。この時、俺は瘴気に知能がないと思っていた。でも、なぜこんなにも多くの死体があることが答えが出している。瘴気は液体の塊を放ち、俺の顔のま隣を通過した。俺は通過したほうを見ると、入り口は液体で深く閉ざされている。さっきの強度から見て、おそらく破ることが不可能。俺らは逃げ場を失った。俺は前を1度見る。しかし、瘴気の姿はなかった。


「後ろ!」

「なっ!グァ!」


ルーシーの叫びを聞き、俺は後ろを向く。すると、本の中で1度だけ見たことのある人型の影らしきものが俺の視界に映った。しかし、見れたのは一瞬で俺の腹部に物凄い蹴りが入れられた。俺はその衝撃で後ろに吹っ飛び骸骨に激突。骸骨のあばらだと思われる骨は、俺の背筋をぶっ刺した。けられたことをすぐさま理解して、俺は前を向くとすでにその場いたはずのルーシーと人型の影らしきものが消えていた。左右を見渡すと、壁によりかかった状態で吐血しているルーシーとそれをゆっくりと追いつめている人影があった。俺は人影を見て、何かを理解した。本の中で登場していた。瘴気は、自分に見合った器を探すために戦うときは変化する。そして、本気で戦うなどそのものに見込みがあった場合のみ人型で戦闘する。その姿は黒く、神から与えられた者すらも汚す力。確か本に書いてあった異名は、『涜神ディエリー捕食者プレデター』。


「こっちだ!」


俺はルーシーが殺されないように瘴気の意識を俺へとずらす。クナイを投げ、できる限りダメージを与えつつ俺にヘイトを向けさせる。瘴気はノールックでクナイを避け、俺へ目を向けた。すると瘴気は俺の先から俺の目の前へと瞬間移動かと疑うくらいの速度で俺に接近してきた。瘴気に握られているのは長さ140くらいの刀。剣ではなく刀だ。両刃じゃないのが唯一の救い。俺は間一髪で顔に目掛けられた横斬りを前傾でよけると、瘴気に向けて鎌を振りかぶる。瘴気は分かっていたようにバックステップを踏んできた。俺は後ろに壁があるのは分が悪いためすぐさま移動し洞窟の中心へと移動。数秒のにらみ合いが起きた。すると、瘴気から言葉が発せられた。


「ちょうどいい器かもしれないな」

「~っ!お前しゃべれるのかよ」

「もう少し殺し合おう、それで....決める!」


低く、しゃべるごとに俺の恐怖心をあおってくるような声。もう少し殺し合おうという言葉、刀を構えた瘴気は少し溜め、居合斬りを俺の腹部目掛けて切りかかってきた。俺は鎌の柄でぎりぎり抑え込むが、徐々に俺の鎌は腹部へと近づいていく。俺は切られることを防ぐために刀を下へ流し振り返した。でも、下からものすごい速度で刀が上がってきて俺の鎌もたやすく受け止められてしまう。そこから、突きが来たり普通にアッパーが来たりと俺がぎりぎり抑えられるところの攻撃が何度も何度も続く。しかし、相手の体力から考えてみると勝てることはできず、徐々に小さい攻撃が俺の血管を切りつけていく。3分間、ずっと俺は防戦一方だった。俺はついに肩に突きを食らった。鎌を持っていない腕だったが、俺は攻撃を受けた瞬間に今までの疲労が襲ってきて片膝をついてしまった。


「っはぁ、っグゥ、はぁ、ぜぇ」

「まさか俺の攻撃をここまで受け止められるとは、思いもしなかった」

「はは、意外だろ。人間になんかにこんなに止められるとは」

「そうだな、今まで倒してきた人間はお前に向けた瘴気弾で1発だったが、お前はよかったよ。器として十分だ」

「今更だが器って、ガァ!」


片膝をつきながら呼吸を整える。今にも出しそうな血液を無理やり飲み込み、呼吸を優先する。瘴気は俺がこんなにやるとは思っていなかったのかさっきよりも少し高い声で俺へ話しかけてきた。俺もふざけで会話のキャッチボールを返したが、ほんとに意外だと言わんばかりに長い文章で返してきた。瘴気が言っている器というものが純粋にわからないため、俺は瘴気に最後の知恵として聞いたが、聞く途中にドクンと心臓の鼓動が耳まで伝わってきた。痛みと共に来たことで、俺は声を抑えることなく下を向き大声で叫んでしまった。痛みを耐えながらゆっくりと上を向くと、俺の体全身から瘴気が入ってきていることが分かった。心臓が瘴気も俺の体に循環させているため俺に激痛が起こったのだろう。しかし、俺は止められることはなく叫ぶことしかできなかった。


「ア˝ァ˝ァ˝ァ˝!グ˝ゥ˝ゥ˝ゥ˝ァ˝ァ˝ァ˝!」

「うるさいな、入れないだろ」


俺の断末魔をうるさいと放ち、指先、腕、胸部、腹部と徐々に瘴気の体の崩壊がはじまり、俺への侵略が早まっていく。そして、瘴気の入り込みが左腕に突入したくらいに、俺は痛みに耐えきれず、気絶してしまった。





俺の体は、血液以外に回っているものがある気がする。どす黒くて重みがある謎のもの。しかし、その中には理解が追い付かないほどの力が隠されていることが分かる。その謎の液体は、俺の体に完全になじんでいる。いや、なじんでしまっているという言葉の方が正しいのか?俺の血管では今にも俺を支配したいかのように暴れまっている感覚がある。そんな感覚にさらされている俺は、気絶から目を覚まし脳は徐々に覚醒をしていき、俺の視界には目元ウッルウルのルーシーが映し出されていた。


「ご主人様!大丈夫ですか!生きていますか?」

「ルー、シー?」

「はい、はい!ルーシーです、あなた様に忠誠を誓わせていただいていますルーシーです!よかった...生きていてくれて」


ルーシーは忠誠を誓っている従者と言わずともわかるくらいに俺に自分の存在を伝えに来ている。でも、最後の言葉だけが1人の女の子としての言葉に聞こえた気がする。俺は倒れている体の腕だけを上げ、美しいルーシーの瞳にある涙を指で拭いた。.....あれ?もっと気にしないといけないものが出てきた気がする。俺の腕が異様に軽い。さっきまでの戦闘でヘロヘロだったはずなのに、なぜか軽い。俺は体に異常が起きたのかと思い、鑑定を発動した。ステータスには、俺が思っている2倍近くの変化が表れていた。


攻撃力・15622

耐久力・8926

体力・65152

魔力・9951


特殊スキル

『無呼吸』『スキル強奪』『鬼神化』『弱点可視化』『スキル譲渡』『混合魔法作成』『呪い削除』


通常スキル

『歩行音抑制』『鑑定』『予測眼』『知識倍化』『運調節』『傷害交換』『柔軟性向上』『防御特化』『気配遮断』『捨て身』『武器鑑定』『武器強化』


条件発動スキル

『自動治癒』『自己蘇生』『銃スロー』『体力、魔力返還』『傷害時攻撃力上昇』『理性凝固』


ユニークスキル

『瘴気の器』



スキル紹介⇩


『肉体変化』

肉体を自由に変化できる瘴気と邪念の特有スキル。発動すると、1度認識した生物や物であれば自由に変化できる。知能や肉体の強さなどは変化はしないが、どの状況に置いての有利な立場を自由に作り出すことができる。


『体力暴食』

発動して自分の体の70%を相手の肉体に合わせることで使うことができる。ものすごい速度で相手の体力を吸い取り、その分最大値も上げることが可能となる。


『肉体制御』

相手の体を乗っ取ることができる瘴気と邪念の特有スキル。これを使い、相手の奥深くに潜り込むことが可能となる。相手の体を無理やり制御し、自分の肉体として動かすことが可能となる。しかし、乗っ取った体は万全の2分の1のステータスになる。


『邪念融合』

邪念と重なることによって発動される条件発動スキル。これは発動のデメリットが存在せず、邪念と混ざり合いEXランクモンスターの中でもトップに君臨できるほどの強さを手に入れることができる。異名は『涜神ディエリー捕食者プレデター』と『厭悪ローディング復讐者リベンジャー』が合わさり『殺意キル冒涜者ラスフィナー』となる


ユニークスキル

極稀に所持者が出てくるといわれるスキル。このスキルは、他から得たものや他人からもらい受けたものが多くとなる。このスキルは1つで何個もの力を持っており、これだけ持っているだけでZゼットランク冒険者になれる程だ。


『瘴気の器』Lv3/Lv10


『瘴気魔化』

『邪念完全無効』

『瘴気武器作成』

『???』

『???』

『???』

『???』

『???』

『???』

『???』



『瘴気魔化』

これを発動すると、魔力が完全に使えなくなる。そして、体に回っている瘴気が外に放たれていく。その外に放たれた瘴気は徐々に自分の分身を作成していき、自分の命令通りに動いてくれる。魔力が完全に使えなくなる代わりに、体力を消費して使う魔法が使えるようになる。瘴気魔法、毒魔法、浮遊魔法が可能になる。しかし、これを解除すると一気に瘴気が体に戻ってくるため解除した後はものすごい激痛が伴ってしまう。


『邪念完全無効』

邪念の魔力吸い取りを完全に無効化できる。


『瘴気武器作成』

瘴気でできている武器を作成可能となる。これで切りつけた相手は体力が抜かれ、徐々に体に力が入らなくなる。武器は様々で県や刀、槍にトンファーなど多種多様。一応盾もできる。

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