第21話 命の買い方

「金貨8枚が出ました!ほかにいませんか!?」

「金貨8枚大銀貨5枚!」

「金貨8枚大銀貨5枚出ました!ほかにいませんか!?」

「シリル、これって」

「あぁ、エルフ奴隷のセリだ」


手を上げて自分が出せる大金を叫ぶ男たち、ここから見ても女性はいる気配がない。声のトーンでどれくらいこのエルフが欲しいかが見て取れる。使い方は分からないが、あのエルフ奴隷の容姿から見ておそらく性奴隷として使われる可能性が高いだろう。俺が考え事をしていると、ついにセリの金額は大金貨に突入。エルフ奴隷は、檻に入れられており首輪がついている。目は虚ろで、もう何もかもに希望を持っていないくらいに衰弱している。だが、とてもかわいらしい顔立ち。おそらく俺と同じくらいの年になるだろう。尖った耳に、緑の髪色と瞳はどんなにみじめな姿でも美しく俺の視界に映し出されている。しかし、あのエルフには会話だけではない。もっと奥には膨大な強さが隠れている。俺はそう予想して、鑑定を発動。


攻撃力・710(⇩300)

耐久力・464(⇩300)

体力・891(⇩400)

魔力・1052(⇩500)


特殊スキル

『魔力消費量軽減』『自然看破』


通常スキル

『魔法詠唱省略』


条件発動スキル

『危機回避』


呪縛『奴隷の首輪』

これを付けている間はスキルが使えず、数値ステータスも相当衰弱する。そして、何かしらの理由で主人ができた場合主人には逆らえなくなる。その分、主人ができるとステータスは元に戻り、いつも通りの状態になる。


そのせいだ。エルフは魔法が得意で集団行動が基本と言われている。しかもこの子のステータスを見てる普通に強い部類に入る。おそらく不意打ちで首輪をつけられたのだろう。急に力が制限されたら驚くわな。それは。


「大金貨3枚と金貨4枚!」

「大金貨3枚と金貨4枚が出ました!ほかにいませんか!」

「大金貨8枚!」

「大金貨8枚が出ました~~!ほかにいませんか!」


鑑定をしていると、ある1人の大きな男が大金貨8枚と今までの金額を相当凌駕する金額を叫んだ。売り手も驚いて最後の部分に伸ばしが入っている。周りも、大金貨8枚という大台には届かないのだろう、静かになりほかの金額を言う雰囲気もない。静かな空間が何秒か続くと、エルフの顔は完全に下を向いた。手もプルプルと震えている。命は買いたくないけど、しょうがない。俺はエルフも欲しいし、こんな屑を塊にした人間たちにエルフは渡したくない。


「ルーナ、ごめん」

「何が?」

「白金貨1枚!」

「~!白金貨1枚出ました!ほかにいませんか!」

「ちょ、シリル?」


俺は手を挙げて、ここにいる人がまだ行っていない貨幣。白金貨を叫んだ。もちろん白金貨を出す俺もどうかと思うが黒金貨を3枚も持っているんだ。ここで大金を使っておかないとなんかもったいない。しかも、こんなにも美しい命なんだ。大金貨じゃ足りない。俺はそう思い、大金貨9枚ではなく白金貨を叫んだんだ。すると、まさか白金貨を出すとは思ってもいなかった者たちは徐々にざわつき始める。しかし、その声を破るかのように、俺に対抗するように叫んできた者がいた。


「白金貨2枚!」

「白金貨2枚出ました!ほかにいませんか!?」


白金貨2枚、俺の二枚の金額。俺は男の方を向くと、男は俺の視線に気づき憎たらしいニヤッとした顔を向けてきた。しかし、別に俺は二枚になったところで折れるわけじゃない。俺は静かに手を挙げた。


「あの、いくらでしょうか?」

「白金貨5枚!」

「は、白金貨5枚!...でました!ほかいませんか」


2.5倍の値段を言われたからだろう。売り手も動揺を隠しきれていなかった。売り手もいい顔をしており、ほかにいませんかと上機嫌で聞いた。そこからはずっと静寂が続いた。30秒くらいだろうか。何もない沈黙を破ったのは売り手だった。


「白金貨5枚!落札です!!」


俺は、エルフを購入した。奴隷という、俺がしたくなかった方法だが仕方がない。俺はバックから黒金貨を取り出し、右手で強く握った。そっさに出た金額だが、あそこから張り合いがなくてよかった。このままだと黒金貨が1枚飛ぶところだったからな。安堵を見せると、ルーナが俺の腕をつついてきた。


「買ってよかった?」

「あぁ、苦しくはあったが後悔はない」

「そっか」


ルーナはエルフの方を見ると、たとえ同種族じゃなくとも奴隷は苦しいのか目を細めこぶしを握りだした。俺もエルフの方を見ると、エルフは俺の方を見た。俺が買い手だと気づくと、少しだけ、ほんの少しだけ瞳に光が映った気がする。すると、セリをしていた人間たちは次々とドアから退場していった。俺が1番後っていうのもあるけど、何人か俺に舌打ちをしてきたりににらんできたりする者がいた。あんまし気にせんようにする。全員がいなくなり、俺とルーナだけになると売り手が俺にステージから話しかけてきた。


「そこの人、こちらへどうぞ」

「はい」


男の人はエルフの入っている檻を移動させ、ステージの横に消えていった。俺とルーナはそれを追うため、階段を下りていきステージに立った。ここから席を見てみると、割と見晴らしがいい。急に俺があそこで手を挙げて白金貨って叫んだと考えると、そりゃ驚くなと思いながら、ステージの横の仕切りを分けて奥に進んだ。


「失礼します」

「では、こちらに座ってもらっても」

「はい」

「では、こちらのエルフ奴隷を買っていただきありがとうございます。しかも結構な高額で」

「全然、エルフの命はあんな大金貨じゃ足りないと思ったので白金と叫びましたから」

「それはそれは、それでは購入の手続きに入りますがよろしいですね?」

「もちろんです」


入った部屋は別に何の変哲もない部屋。白色の壁にそこら辺にありそうなソファーとテーブル。余りの質素さにあっけを取られていると、売り手の商人が話しかけてきた。高額でエルフ購入ありがとうと伝えられたので、心の底からある本心を伝えると営業スマイルで対応された。購入手続き入って大丈夫かと言われたので、勝った側の責任としてしっかり買わないとな。


「まず、購入するとエルフ側には○○の奴隷と、あなたには○○の主人とステータスに表示されます。奴隷はあなたを裏切ることや命令に背くことも不可能なので自由にお使いください。そして、首輪に新しい呪いをかけることも可能です。奴隷はあなたを攻撃することが不可能とされていて、攻撃した場合首輪から電流が流れる仕組みとなっております。もちろん外すこともできますが、いろいろと面倒なのでなるべくそこらへんはあまり改変しないでいただきたいです。もしエルフを捨てる場合、売った方が得ということを忘れないでください、高額で売れます。もしエルフが逃げてしまっても問題はありません。主人が命令を下さないかぎり奴隷は指定の位置までしか移動ができなくなります。ここら辺の注意事項を守れるというならば、ここに署名してください」

「わかりました」


商人がテーブルに紙を出してきた。先ほど言った注意事項が書いており、同意するにチェックをして署名すれば購入が可能おなるのか。俺はすぐさまチェックを入れて署名をした。すると、俺の前に手が出てきた。


「それでは購入代金である白金貨5枚を徴収します」

「すいません、黒金貨1枚でお願いします」

「毎度ありがとうございます。それでは白金貨5枚のお釣りです」

「ありがとうございます」


俺は握っていた黒金貨を商人に出し、初めての白金貨5枚を手に取った。黒金貨よりもビジュはよく、美しい見た目をしている。すると、購入が確定したためさっき署名した紙が消え光となり、俺とエルフに入っていった。俺は不思議に思いエルフを見ると、エルフも光が入っていった部分を見ている。すると、俺はエルフと目が合いお互いまだ主人と奴隷の部分が分かっていないためすぐに両者目をそらした。


「それでは、ステータスにはもう記載されておりますので不備があれば何なりとお申し付けください。ではエルフを檻から出しますね。ほら、早く出ろ」


俺へは丁寧対応なのに対し、やはり奴隷には荒い対応だ。商人は檻を開け、エルフに早く出ろといった。エルフは重い足取りで檻から出ようとする。しかし、奴隷になった現実がまだ受け止められていないといわんばかりに遅かった。出るのに時間がかかったのか商人は声を荒げ大声を出した。


「おせぇよ!早く出ろ!主人が待ってんだぞ!」


商人は檻をけり、エルフはびくっと体を身震いさせた。そこだ、俺の頭にあった何かが切れた。きっかけはどこかわからない、しかし何か俺の中で気に食わないものがあった。このエルフは俺の子だ。


「おい、俺の奴隷を手荒く使うな」

「え、あっすいません」

「俺は商人で売りてだろうが関係ねぇ。俺のものに手を出すな、容赦しねぇぞ?」

「し、失礼しました。」


商人は俺の顔を見て顔を青くして、謝罪をしてきた。俺の顔はそんなに怖かっただろうか?まぁいい。あ、エルフの子まで怖がらせちゃった。今後の進展心配になってくるな。俺は謝る商人の横を抜けて檻の中でおびえているエルフの子に手を差し伸べていった。


「俺はシリル。これからよろしく」


スキル説明⇩


『魔力消費量軽減』

魔法を使うときの魔力消費を軽減すことができる。通常スキルの魔力消費も抑えることが可能。


『自然看破』

周りが自然で囲まれていた場合、周りの自然の状況を完璧に理解することが可能になる。ほかにも、森の反響でどこに何がいるのかも正確にわかる。


『魔法詠唱省略』

魔法の詠唱を省略化することが可能になる。


『危機回避』

自らの命のかかわる攻撃が来た時に発動。体が勝手に動き、1番負傷を追いにくい体制を取り、命を落とすことを防ぐ。

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