2章 エルフ奴隷との出会い
第20話 一気に変わる自然
俺の目の前には、高さなんてとらえられないほどの壁がある。壁の奥に行くには、この門というよりか扉を通る必要がある。通行料は大銅貨5枚。ここの門番として働いている人の給料となるんだろう。俺の順番が回ってくると、俺とルーナ分を銀貨1枚を出す。偽物じゃないかと確認した後、俺らはすんなり入国ならぬ入土地することができた。
俺はナオ土地を見ると、感嘆の声を漏らした。さっきまでの自然とは打って変わって、周りが雪で囲まれていた。積もっている雪に白く濁された空。太陽なんて顔を出してこない雪の独占欲が垣間見える。しかし、不思議なことに雪が降っているからって寒いわけではない。微妙、ちょうどいいくらいの気温。風が吹くと、地面に積もっている雪を削り取ってくれる。
「雰囲気が寒い」
「確かにな」
「ほら、早く行こ。目の前にもうナルアリ王国見えてるよ」
「そうだな、よし。全力で旅を楽しもう」
「うん」
俺とルーナは相槌を打ちながら一緒に第1歩を踏み出した、すると横からズボッと雪のこすれる音が聞こえてきた。横を見てみると、膝まで雪に埋もれているルーナの姿。ルーナも固まっており、何とも言えに絵面だ。
「....抜けない」
「こればっかりはしょうがない」
「まさかこんなに積もっているとは思わなかった」
「注意して歩こうな」
「注意した結果がこれ」
「それはどうかしたほうがいいな。ういしょっと」
手を雪に当てながら踏ん張っているが、一向に抜ける気配がないルーナ。少し恥ずかしく、頬は赤みを帯びている。まぁ、確かに雪がこんなに降ってたらこんな感じになるわな。俺は注意して歩こうと、子ども扱いしてルーナの脇に両手を当てて引き抜いた。中で雪が解けていたのかルーナの足はビチョビチョだ。
俺はルーナを下ろし、バックから布を出した。足の水をふき取っていると、不意に上から声が聞こえた。
「別に拭かなくてもいい」
「風邪ひいたらどうするんだ?」
「風邪ひかない」
「仮に風邪ひいて死んだらどうするんだ」
「そんなに私病弱じゃない」
「はいはい、ほら拭き終わったぞ。次は気を付ろよ」
「子ども扱い」
「実際俺から見て子供だろ」
まぁ、胸は抜きとして顔立ちとしゃべり方がなんか幼女っぽいんだよなぁ。別に俺は決してロリコンじゃない。決して...おそらく...多分...きっと...そう信じたい。俺はそんなことを思いつつ、足を前に出した。すると俺の足もズズズっと雪の中に足が持ってかれそうになった。もちろん俺はすぐに対応する。手を沈みかけの足の両隣に置き足を無理やり引き抜く。腕は持ってかれることはなく、そのまま引き抜くことができた。
「シリルも落ちればよかった」
「ルーナ、それはどういう意味だい?」
「そのまんま、今度こそ行こ」
ルーナ、成長してるな。足が雪の中に持ってかれてない。意味わかんない感動を覚えながらも、俺はルーナの後ろを追いながらナルアリ王国を目指した。
「治安、悪いな」
「少し変わったくらい」
「裏路地から見える奴隷商は何だ?」
「あれは....気にしない」
「気にしないことはできないだろ」
ナルアリ王国に到着して、荷物検査も無事突破。そのまま大通りを歩いていくと、裏路地から声が聞こえた。昔っから裏路地に住んでいたため、何かあったのかと目を向けると檻の中にいる奴隷の姿があった。奴隷制度を廃止しろとは言わないが、やはり見ていて気分はよくならない。しかも俺が見えているのは獣人族の子だ、髪の毛は白色で猫耳。多分髪の毛はルーナのもともととは違っておそらくストレスから来ているものだろう。よーく見てみると値札には金貨1枚と、命を売るには安すぎると思いながらも俺はさすがに買う気はない。俺が目を離すと女の子はより目を暗くして、終わったという顔をした。心が、痛い。
「私に似てた」
「だからどうしたって話だろ?」
「さすがに同じ種族の子が奴隷にさせられたら悲しくもある」
「そうか、そりゃそうか」
「とりあえず忘れよう。あの子は運がなかった。それでいい」
「あぁ。そう、だな」
正直、奴隷商を見て運がなかったで区切るの苦しすぎる。心の底から助けてあげたいし、ルーナに似てるせいかより心が締め付けられ感覚がある。それを忘れろはさすがに無理がある。忘れようとしてもどうせ忘れられないんだろうな。はは...
「とりあえず、私はここで冒険者登録する。シリルばっかにお金を頼ってちゃいやだから」
「黒金貨3枚持ちに何を言い出すか」
「ヒモだけは嫌だ」
「別にいいんだけどな」
「私が怠けちゃって戦闘中シリルの足引っ張りたくない」
「あぁ、そういう」
冒険者登録をしてお金を稼ぎたいのと、腕を鈍らせないための筋トレみたいな感覚で依頼を受けたいというルーナ。....俺も冒険者登録してみようかな。いやでもなぁ。正直めんどくさいしなぁ。やるんだったら商人ギルドで待ったり物を売っぱら痛いタイプなんだよな。でも黒金貨が切れるかのせいもないわけではないし....一応しておくか。
「俺も冒険者登録してみようかな」
「そしたら一緒に依頼を受ける」
「何ならパーティー組んでもいいんだよ?」
「それはシリルに悪い」
「何故?」
「パーティーを組むと得る報酬は折半。何があったも。たとえ私が何もしていなくても、むしろ相手側になっても依頼が完了すれば強制折半になる」
「それのどこが嫌だと?」
「ちゃんとした適性の報酬で分け合いたい。シリルが活躍したんだったらシリルが、私が活躍したんだったら私の報酬が多くなる。実際、そうやってパーティーを組まずに複数人でやる人もいるにはいる」
「ルーナはいいのか?」
「うん、むしろそっちに方か性に合う」
「わかった、そうと決まればすぐにギルドに行こう」
パーティーか。パーティーを組むと得られる報酬は折半、もしかしたら遺跡の調査とかで得た宝石なども折半になるのだろうか。そういうところを考えてみたら確かに組まない方が喧嘩とかはないだろうな。ギルドってすげぇ。俺のやることが増えた以上、今すぐにギルドに行かないといけない。っしゃ、やる気が出てきたぜ
俺の目の前にあるのは少々年を取っている木でできている外装の冒険者ギルド。なんかもう、活気がなさそうな感じがする。俺は緊張している腕を動かし、ルーナと一緒にギルドへ入る。中は、もう完璧居酒屋みたいな感じで大きな男から小柄な女と多種多様、俺らが入ってくると大半の冒険者がルーナに釘付けになった。もちろんいい意味だと信じたい。
「おい、あれパステル大国の
「え、
「そうそう、何でも敬語で感情がなさそうな感じで依頼はすぐさまこなしてしまうって言われてるだろ?」
「....ルーナ、
「そうみたい」
あ、顔赤くした。わかりやすい。そんなこと思っていると、ルーナが足早に受付嬢に話しかけた。俺もそのあとをついていくと、受付嬢はルーナ、いや
「冒険者登録、両方できます?」
「えっと、すいません。今はギルド長、副ギルド長と受付嬢が欠席でして、そういうものは今はできません」
「え、受付嬢じゃないんですか?」
「私は副ですので」
「そうですか、分かりました。後日また来ます」
「すいません、お手数おかけします」
まさかのギルド長と副ギルド長、おまけに受付嬢が全員ダウンということで今は冒険者登録はしていないそうだ。ルーナがこと後日来るというと、そのままギルドを出た。まぁ雰囲気最悪だけど悪い人はいなさそうな雰囲気だったな。俺は好感を抱きながら、ルーナにしゃべりかけた。
「まさかの、やってなかったな」
「もしかしたらそのせいで居酒屋みたいになってた可能性が」
「それはそうかもな」
冒険者ギルドの会話をルーナとしていると、裏路地の奥の方から何かの声が聞こえた。俺は何かその声にひかれるものがあり、1度立ち止まりその声を聴くことだけを集中した。
「シリル?」
シリルが俺の名前を呼んでも、俺の意識は裏路地にしか向いていない。俺はつられている魚のように裏路地に入っていった。入っていくごとに聞こえる声が聞こえてくる。「金貨3枚、金貨4枚、金貨6枚!」と貨幣を大声で上げる声が聞こえてきた。進んでいくにつれ、1つの建物から中心に聞こえるようになった。扉で閉められているのはお構いなし。俺はつられるがままに扉をゆっくり開けて奥に入っていった。その奥にももう1つ扉があり、その扉も開けると何十人もの人がセリを行っていた。しかも、俺が探していた奴隷、エルフの奴隷だった。
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