第15話 女の勘(シャルロッテ視点)
私のルームメイト、冒険者仲間が
「ルーナ!そこにいるの!?」
「~っ!シャルロッテ?」
「っよかった!本当に、生きて帰ってくれて....」
「死ぬ寸前まで何回かなったけど元気」
「それは元気とは言わない!」
余りにも
しかし、男を問い詰めてもはぐらかされてルーナにも止められた。そして私が横暴な態度をとったことを謝罪している。そこで私はいつもの違和感に気づいた。ルーナに敬語がない。ルーナは基本的に老若男女を問わず敬語で会話を交わしている。親しい人や尊敬に値する人だけに敬語を外している。そう、今ルーナは敬語なしで男に謝罪をしたのだ。私はそれが気に食わなかった。単純にルーナが変な男に取られたくなくて、珍しくルーナに対して声を荒げてしまった。
「言っておくけど、今のシャルロッテでもシリルには手も足も出ない」
「な!私よりこの男が強いっていうの!?一応私
「そう言っている」
「いいわ!そこまで言うなら....ねぇ!そこの男」
「え、俺?」
「そう!私と決闘しなさい!」
「....は?」
こいつが私以上に強いとルーナに聞いたときは耳を疑った。これでも私はこのパステル王国でトップとは言えないが上位の冒険者。そこら辺をほっつき歩いてそうな男に負けると聞いたときは怒りが隠しきれなかった。私は男に指をさし、決闘しろと宣言した。想定外の提案に男、シリルは変な声を上げた。決闘は1対1の正々堂々の勝負、私みたいな高ランク冒険者に喧嘩を吹っ掛けられたら驚きもする。しかし、その問いに解を提示したのはシリルではなくルーナだった。
「いいよ、シリルなら余裕」
「ちょっと待ってくださいルーナさん!!」
了承したのがルーナだけあって、シリルも敬語にして大声を上げた。顔は焦っており、頬には汗が滴っている。私はめったに起きないルーナとの喧嘩をしながらルーナはギルドへ生存報告、私は宿へと戻った。
「始め!!」
そんな合図とともに私は足の筋肉を酷使し続けた。シリル追っては切り追っては切りを繰り返した。しかし、どの攻撃もシリルにあたることもなく難なくとよけ続けられた。二刀流だった私の剣技に驚きもせず、淡々と黙々と避けていった。さすがに追いすぎて私にも体力の低下が見てわかるようになってきた。膝に手を突き手に体重をかける。すこし荒くなっていた呼吸を深呼吸する間だも、攻撃することもなくシリルは親切にも待ってくれていた。だから私は言った。なぜそんなに避けることに執着するのか、こんなんじゃ勝てないぞと。しかし、彼は正々堂々と戦っていると一点張り。私は気に食わなかった。こんな奴がルーナに尊敬される奴じゃない。そう思っていた。しかし、私の怒声が効いたのかシリルは提案してきた。
「じゃあ、ちょっとおもしろいことをしよう」
「面白いこと?」
「そう、俺は傷を負って、君は少しだけ戦意喪失するの」
言っている意味が分からない。いや、言葉の意味は理解できるのだがそのどこがおもしろいのかが理解ができない。しかも、戦意喪失なんてしない。そう思っていた。私は戦意喪失なんてしないと宣言すると、シリルは自分で自分の腹部を刺した。意味が分からなかった。さすがに心配した。だがそんな心配もすぐに消える。なぜか五分五分になると豪語しているシリルに反論しようとすると、私の腹部に痛みが走った。いや、激痛が走った。そんな痛み堪え切れず、私は大声をあげながら膝をついた。吐血する私を見て、死ぬんじゃないかとも思った。しかも目の前の相手はなぜか元気ピンピンだ。でも気づけば痛みは引き、服に残った血の跡だけになった。私は立ち上がり、シリルの方を見ると、狂気な顔で話しかけられた。怖くなった、ついでに勝てないと思った私は、そのまま降参した。
ちゃんとした戦闘が始まっても、私は手も足も出なかった。ルーナの言うとおりだ。気づけば目の前からいなくなり、急に後ろから気配が出て、後ろを向くや否や刃物が首にあった。今度こそ私はシリルを認めた。ここまで強いと、文句のつけようがないと感じた私は、しっかり謝罪をしてルーナにも謝った。
「お手上げ、悪かったわ。勝手にいちゃもんつけて」
「わかってくれるならそれでいい」
「いやルーナもルーナだろ。勝手に決闘取り付けるなよ」
「それは...シリルが悪く言われたから」
....気のせいだろうか、ルーナの顔が少し赤く染まった気がした。気のせいだと思いたいが、今は気にしている場合じゃない。このまま会話を続けていくと、シリルはまだ本気じゃないと聞いて、驚きを通り越してなんかもう呆れてしまった。しかしそこからは順調に会話は進み、そのまま宿へと帰宅した。
「ルーナはシリルのこと好きなの?」
「ふぇ!?」
私は宿に戻ってすぐ気になる私をルーナに聞いた。そのことを聞くとルーナは顔を赤らめ、気の抜けた声を出した。しかも珍しい大きな声だ。髪をいじり、身をよじった後、ルーナは口を開いた。
「わからない。この感情が恋なのかどうか。さすがに出会って1日のシリルに恋愛感情を抱くほどちょろくない....と思う」
「いや絶対好きでしょ、私がシリルと握手したら不機嫌な顔したり会話の途中何回か顔赤くしてたじゃん」
「....そんなにわかりやすかった?」
「顔に出やすすぎよ」
シリルが好きなんじゃないかという証拠を何個か上げただけで私はシリルが好きですよ~と言わんばかりの回答をしてきた。ルーナはベッドへと体を預け、枕を抱き私に背を向けている。おそらく奥では顔を相当赤らめているだろう。想像するだけでニヤニヤする。
「私は頑張りなとしか言えないけど、いつまでもあの距離感だとどこの馬の骨かもわからないとられるわよ」
「それは.....いや」
「でしょ、ならもう少し彼への態度を変えること。あれは相当な強敵だから」
「..........あう」
恋愛トークに頭がパンクしたのかまともの返事をしないルーナの声がした。少し静かにしているとベットから規則正しい寝息が聞こえてきた。スゥスゥと眠るルーナと同じ部屋で、私は血にまみれた服を脱ぎ捨ててシャワールームに入った。
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