第14話 正々堂々とちょっとした国探索
「勝負あり!」
「は!?おかしいだろ!ずるするなよ!」
「そうだよ!そんなスキルで勝って恥ずかしくないのか!」
「そうだそうだ!」
勝負ありという審判の声が響き渡ると、観客席からは俺の勝利が気に食わないとブーイングが聞こえてくる。ズルやしょうもない、つまらない勝ち方など言われ放題。ルーナの方を見ると、観客者の文句が気に食わないのかしかめっ面だ。アーロンなんて今にもキレそうだ。手がプルプルしている。はぁ、しょうがない。
「すいません」
「ん?なんだ」
「もう1試合決闘することってできますか?」
「相手側が許可すれば可能だ。しかし、今君は負傷している」
「いいですよ、勝手に治るんで。シャルロッテ、いいか?」
「.......」
「さっきのような悪意まみれなスキルは使わないから」
「...分かったわよ」
俺は審判にもう1試合できるか聞いてみたが、相手側の了承がいると。俺はシャルロッテに絶対にスキルを変なように使わないと誓い、了承してもらった。ここでしっかり力の差を見せつければブーイングもおさまるだろう。そう踏んで俺はもう一度決闘の台に立つ。今度はクナイを構え、『無呼吸』『歩行音抑制』『気配遮断』を発動。でも強く発動しないように調整をする。
「では、第2回戦を行う。構え!.....始め!」
決闘の合図は何回聞いても聞きなれない違和感がある。しかし、不快ではなくこれから戦うのかという俺の闘争心を心の底から沸かせてくる。初めていう合図でシャルロッテも動き出すが俺にとっては赤子の手をひねる様なもの。俺は『無呼吸』『歩行音抑制』『気配遮断』を最大限に強くする。俺からの得られる情報は周りからはほぼ無いに近い状態になる。俺はシャルロッテの後ろに無音で回り込む、その状態で止まってもバレることはなく、何なら全貌を見渡せるはずの観客も見失っている。俺は『気配遮断』を解除する。すると俺の気配が急に後ろに現れたことによりシャルロッテは後ろを見るために体をひねようとする。しかしそんな暇は与えずに俺はクナイを首に当てる。
「これで俺が切ったら死ぬ。致命傷だな」
「......えと、勝負あり!」
「「「おぉぉぉぉぉぉ!」」」
俺が勝つことが分かった瞬間、観客からの歓声が響き渡った。さっきまでずるをして勝ったやつが超実力者が手も足も出ない状態で勝ったのだそりゃ驚く。シャルロッテは俺に当てられたクナイを見つめ、ルーナの方を見る。すると、「はぁ」とため息をつき、両手を挙げた。
「お手上げ、悪かったわ。勝手にいちゃもんつけて」
「わかってくれるならそれでいい」
「いやルーナもルーナだろ。勝手に決闘取り付けるなよ」
「それは...シリルが悪く言われたから」
「そう言ってもらえるのはありがたいが俺は自分で言うのなんだが非常識人だ、決闘とかでやらかしたりするかもしれないだろ?」
「それはない、手加減得意だから。さっきもしたはず」
「う、まぁそうだが」
「さっきので、手加減なのね」
今度こそ、と言わんばかりに俺の目を見つめ降参を宣言。ついでに俺がルーナを取ろうとしているという最低極まりない勘違いを謝罪してくれた。俺は悪気はないことを知っているので許し、固く握手を交わした。んで、俺は決闘の元凶であるルーナを呼び、説教を開始。まぁ数秒で終わるんですが、重いことじゃないんで。説教を始めるとともに俺なら手加減してくれるという信頼の言葉。いや得意だけど。ルーナと俺の手加減の話をすると、シャルロッテ目を開き手加減していたことに驚いていた。
「とりま決闘終わったし早く宿に戻ろうぜ!」
「え、俺宿とってない」
「いいから!これくらいおごる!命の恩人に金はとらないって!」
「私も同じ宿。何ならシャルロッテと同じ部屋」
「仲いいんだな」
「あったりまえよ!何年一緒にいると思ってんの!」
「いやそこまで興味ない」
宿をおごるというアーロン、っていうか同じ宿だったんだな。シャルロッテと同じ部屋っていうのは大丈夫か?今日のことでまた喧嘩しないか?そう思いながらも、結構な年数一緒にいると考えるとそんなこともないなと自己解決して俺はみんなと一緒に宿へ向かった。俺の仲間はまた増えた。
「結構広いんだな」
「1人銀貨二枚だからな」
この宿は1人部屋、2部屋、3人部屋で別れていて、アーロンは俺のために1人から2人に切り替えてくれた。ちなみにルーナとシャルロッテは別の部屋にいる。銀貨二枚がどれくらいすごいのかわからんが、結構充実している。ベットが2つ、作業机と椅子が1つ、シャワールーム。シャワールームあんのか....俺きったないだろうな。
「シャワー先いただくぞ」
「ん、っていうか今までどうやって体きれいにしてきたんだ?」
「布を濡らして体拭いてた」
俺は服を全部脱ぎ捨て、シャワールームに入る。中はシャワーと石鹸くらいだろう。おぉ、あったけぇ。あいつはいつもこれを浴びれたのか?早めに俺も国出ておけばよかったなぁ。そんな贅沢な後悔をしながら頭、体と順に流していく。やはり拭くだけでは意味がなかったのかすっげぇ汚れが落ちてきた。真っ黒ってレベルだ。俺はその汚れが完全になくなるまでシャワールームに籠り今までの努力の結晶の汚れを水に流した。
「ふぅ、上がったぞ」
「お、じゃあ俺も入ろう」
「お前何かいてるんだ?」
「日記だよ、日記。自分の冒険記録書くとさ、なんか俺頑張ったんだ、次はもっとって思えるんだ」
「へ~」
「お前もやってみるか?」
「いや、俺はもういろいろメモすることが多すぎて日記なんて書く余裕ない」
「そうか」
部屋の中だとさすがにアーロンも静かで、静かに書き物をしている姿は普通にかっこよかった。知的で運動ができるハイスペックみたいな感じだ。俺はまだ濡れている髪の毛をいじりながらベットに座り、今までのメモをめくり暇をつぶした。
「なぁ」
「どうした」
「シリルもせっかくこの国来たんだから回らないか?国の中」
「いいのか?俺は金なんて持ってないし」
「だからいいって言ってるだろ?何ならおすすめの質屋紹介してやるよ。いらないものいっぱいあるだろ」
アーロンは俺に国の中回らないかという魅力的な提案をしてきた。もちろん行きたいが、金が...と思うもむしろ奢りたいみたいな視線でこっちを見てきた。ついでに俺のいらないものを売却して金にしようと考えている。ん~、まぁ奢ってくれるなら
「よし、行こう」
「乗ってくれると思ったぜ。準備してすぐ行くぞ」
「おぉ~」
「な!意外と広いだろ!」
いつもの声量に戻るアーロンと共に、俺は感嘆の声を漏らした。繁盛している商店街は半端じゃなく、どこもかしこも人であふれている。武器屋や防具屋、レストランにポーション屋などなど多種多様、この中だったら俺の好きなものもある程度見つかるだろう。俺は心躍らせながら商店街に足を踏み入れた。
「これは?」
「さっき国に来る途中で見た牛っていう動物を焼いて串にしたものだ。脂がのっているの多くてなうまいんだよ」
「へ~、1本いいか?」
「あたりまえだ!おっちゃん、これ2本」
「うい毎度あり!」
「あざっす~」
アーロンが銅貨を8枚取り出しておっちゃんに渡すと、俺の手元に串焼きが届いた。黒く焼き目がついており、上がっている湯気はよだれを過剰反応させて来る。俺はアーロンの方を見ると、頷いてきたの、ゆっくり串から1つ引き抜き口に放り込む。一口噛むともう俺の目の前には川が見える。中にある肉は外の焼かれた肉とは違い、俺の口の中で天国を作ってくれる。しかも、中からは今まで経験したこともない量の肉汁があふれ出てくる。やべ、涙出そう....
「よし!まだまだうまいもんはあるからどんどん行くぞ!」
「お前は俺を殺す気か!」
「え!俺なんかしたか!?」
後で感謝しないとな。俺はアーロンの後を追いながら、鶏肉を油で揚げた唐揚げ、豆をすり潰して作った苦い飲み物のコーヒーなどいろいろ。俺の道の食が出回っていた。俺は最大限胃を開き胃袋と舌を感動させていたら、アーロンおすすめ質屋に着いた。
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