第13話 圧勝という言葉すら生温い

「あの~、本当に決闘するんですか?」

「当たり前でしょ、ルーナを簡単に預けられるわけがない」

「そんな別にルーナをもらおうとしてるわけじゃない」


俺は今、決闘場に来ている。屋外で、決闘ということもあり観戦が可能。そしてここの冒険者ギルドのトップレベルで強いシャルロッテに喧嘩を吹っ掛けられえた男がいるとまた中で話題になったこともあり、観戦席には約200人近くもの冒険者が訪れていた。ルーナとアーロンは俺の1番の理解者として決闘場の場外のベンチにいるのだが...いやプレッシャー!?別にいいんだよ、戦う分には全然やらせてもらってもいいけどさすがに限度があるよね!?こんなに人来なくてもいいよね!?


「はぁ、ルーナ」

「どうかした?」

「これ、一応持っといてくれない?」

「鎌?メイン武器使わないの?」

「クナイで戦ったことないからクナイで戦いたいと、鎌でやると殺すかもしれないでしょ?」

「あら?煽ってるの?メイン武器で全力で来なさいよ」

「いいよ、こいつを使いたいし」


俺は鎌を一応ルーナに預けた。説明にあるけどスキルを封じるってだけで期限は書いていない。数秒か傷があるうちなのか期限話で一生なのかわからないうちはさすがにガチで命のかかっている戦闘しか使いたくない。あとクナイを使ってみたいってのが1つ、なんだかんだ言って今までクナイは使ったことはないからここでどれくらい使えるのかっていうのをしっかり確認しないといけない。使えない場合は即刻焼却処分だ。


俺がメイン武器を使わないと聞いたシャルロッテは俺が自分をなめているのかと勘違い。別にそういうつもりではないんだけどなぁ、後悔させてやると言わんばかりの目線してる。やめてそんな目で俺見ないで。


「今からルールの説明を始める!大前提として相手を殺してしまうような攻撃はだめだ。殺したり治らない重傷を負わせた場合はその場で即刻捕縛とする!もし場外になってしまった場合は落ちてしまった相手は敗北とする!相手に回避不可能な致命傷を負わせられる体制になった場合に負わせる側が勝利となる!降参した場合も敗北とする!スキルに関しては命が大事にならない限り使ってもよい!しかし、鑑定を使うことは禁止とする!正々堂々1対1で行うこと!それ以外は何でもしてもよし!切っても殴っても蹴ってもだ。両者、準備はよいか!」


ルール説明が始めるとともにルーナが後ろへ下がり、ベンチへと戻った。ルール説明をする限り、まぁつまり落ちずに殺さずに致命傷を負わせられる体制になればいいんだろ?結構単純だな。


「「はい。」」

「では、構え!」


構えという合図を最初に観客席が徐々に静かになっていく、そして完全に静かになったと確認した俺はすぐさま『知識倍化』を発動。静かなおかげで聴覚は余計に働かずに視覚だけが懸命に働く状態になる。俺の脳にはシャルロッテの状態が思考を駆け巡らせてくる。


「始め!!」

「はっっ!」


初めて同タイミングといってもいいほどのスピードで俺の首めがけて刃が振りかぶってきた。俺はすぐさまそれを避けて相手の武器の状態や疲労度の確認。呼吸音からして1度の振りかぶりで疲れている様子はないがこのまま攻撃するとなる20回前後で少し汗が垂れるくらいになるだろう。相手は二刀流なため剣を2つ操るための集中力は相当なため体の疲労より思考的な疲弊のが速いだろう。俺はすぐさまバックステップを踏み相手との距離を最大限開く。


「そんな逃げてばっかりじゃ勝てないわよ!」

「よっと」


今度は俺の右足と左腕をつぶす気で剣をふるってくる。俺は体をかがめ地裁ジャンプをすると剣は当たることなく空を切った。俺は再度ステップを踏みまた距離を一手に保つ。右足と左胸、右耳と左肩、右手首に左膝。よけにくい攻撃を俺は無駄な体力を消費することなくよけ続けた。当たり前だが攻撃している方が体力を多く消費するため、5分近くたったころには相手の呼吸は荒くなっていく。俺はバク転で攻撃を避けると、疲れているのか攻撃をやめたシャルロッテ


「あんた、逃げないで戦いなさいよ!」

「やだな」

「正々堂々でしょ!」

「だから正々堂々1対1じゃん」

「逃げてるあんたに言われたくない!」


ついに痺れを切らしたのか俺に軽く怒声を響かせてくるシャルロッテ。う~ん、少しだけ戦意喪失させるか?そっちの方が相手側も怒鳴れないかもだし....ん~~、そうしよう。そっちの方が楽かもしれないし。俺はシャルロッテに話しかける。


「じゃあ、ちょっとおもしろいことをしよう」

「面白いこと?」

「そう、俺は傷を負って、君は少しだけ戦意喪失するの」

「は?私が簡単に戦意喪失するわけないじゃん。これでもDOUBLEダブルSシグマランクなんだけど」

「そうだ、だから....あぁ!ちょうどいいんだ」


俺は目の前で自分の腹部にクナイを突き刺し、狂気的な大声を上げた。大声に関してはわざとなんだが、クレイジーな方がいいだろ。俺の腹部からは血液がドバドバと出血していく。もちろん痛いし、苦しくもあるが面白いことはこんな苦しみを打ち消してくれる。


「な!あんた何してんの!」

「何してるって、自分の腹部に攻撃しただけだが...グフッ」

「ハンデのつもり?にしてもやりすぎよ」

「いや、これから五分五分になるんだよ」


俺の行動に衝撃が隠せないシャルロッテ。シャルロッテと会話しているわけで俺は別に肺が刺されたわけじゃないのに吐血する。さすがランク・Zゼットの武器だ。俺が吐血すると、さすがに心配の視線が観客から飛び込んできた。しかし、そんな心配もすぐになくなる。


「は?何言って.....あぁ!あぁぁぅぅ....カハッカハ!」

「ふぅ、全回復。言ってた意味が分かるか?」

「ゴホッ!これじゃ五分...五分じゃない..」

「知ってるさ」


俺は悪人顔で『傷害交換』を発動。俺の傷は癒えていき、逆にさっき俺にあった傷がシャルロッテに移っていく。急な激痛が腹部に来たことによってさすがにDOUBLEダブルSシグマランクの冒険者も叫び声をあげ、膝をつく。しかし、これで五分五分じゃないということをすぐに気づいたシャルロッテは俺に指摘をしてくる。知ってると言って、俺はまた『傷害交換』を発動。シャルロッテは癒え、俺に傷ができるというさっきの状態に戻る。腹部のおなかが収まったのか、おなかを確認して、立ち上がり俺の方を見る。そして俺の傷の状態を見ると今度は顔が青くなっていった。


「俺は傷を負い、お前は少しの恐怖を覚える、五分五分だろ?」

「~っ!」


シャルロッテの顔は完全に青ざめ、恐怖などは思っていないだろうか勝てないと判断した視線になった。そのまま発言したシャルロッテの言葉。


「降参、するわ」


俺は勝利を手にした。今回は俺の頭脳がちだったので、次はちゃんとしたせんとうをお願いしよう。

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