第11話 外にはたくさんの感動

「ここに来るのがも2回目だな」

「ここにきたことあるのか?」

「あぁ、1回だけな。12歳くらいの頃だったけか?死にかける生活に慣れない時期に抜け出してみると試みたんだ、見事に殺されたよ」

「なんかしれっと死んでる、シリルの昔の話」

「そりゃまだ心が未熟だったからな。あんときは相当『自己蘇生』に頼ってたな」


俺の目の前にあるのは、ほんとは人の行き来が活発な国の門の前。1度だけ俺はここから抜け出そうとしたんだが、外からゴブリンの群れが入国してきたせいで抜け出せずに断念。ここで生きていくことを決めたんだっけか?気まぐれで『スキル強奪』を手に入れてなかったら俺はもう生きていないかもしれない。ゾッとする背筋を伸ばし、今度こそここから発つ。


俺の見た目もだいぶ変わった。小さく、恐怖で寝れなかった時の髪の毛は白髪だったな。短剣すら握るのを躊躇していた。今では、クナイを即席の鞘に収めて鎌を大胆に背中にかけている。三日月模様の黒い刀身おかげなのかここまで来るのに全く襲われなかった。俺は服を正し、ちゃんと門と向き合った。


「今までありがとう」

「自分を何回も殺してきた国に挨拶」

「別にいいだろ、お世話になったからな」

「ほら、もう行こうぜ!これ以上この国の中にいたくない!」

「はいはい」


走って門へ向かうアーロンを後ろから見守りながら、俺も静かに足音を立てていく。テクテクと昔の俺から下らからしたら絶対に聞くことはないと思っていた平和な音、俺が昔っから聞いていたのは、焦りは走るザッザという音にスキルを発動したときの無音歩行。そして、その足音が向かっているところが国の外なんて昔の俺に言ったら発狂するんじゃないか?俺は昔のことが思い出させるいわゆる走馬灯擬きもどきみたいな感覚に陥りながら、国の外へと足を出した。


「外だ...」

「いや~やっと帰れるぜ!」

「馬で二時間くらいだから、徒歩くらいになると8、9時間くらいかかるけど」

「いや、そんなことより自然がある」

「そんなことで喜こんでいたら国についたとき大変」


俺が国の中から少しだけ見えていた、縁のないはずの自然。草原が広がり、見たこともないでかい生き物もいる。小さい生物もいれば、見たことない種類の花が咲いている。俺にとってはこれだけで生きる気力になる。しかも今から8時間近くもこの草原を歩くことができると考えると、うれしすぎて死にそうだ。


俺は指と指を絡ませ真上にあげ体を伸ばす。寝てないせいかあくび出そうになるが大きく呼吸をしてあくびを無理やり止める。しかし、そんな眠気を吹き飛ばすと言ってくれるきれいな朝日がはるか遠い台地から顔を見せた。国生活は大きな壁があったせいで10時くらいまでは朝日が見えることなく、俺が朝日と顔を合わせるのはあたりが明るくなっているとき。こうやって朝日を見ると俺は生きているんだという実感がものすごくわいてくる。


「おい!何してんだ!早くいこーぜ!」

「早く早く」

「....あぁ、今行く」


横に見える朝日に目を奪われており、視点を戻してみるとすでにルーナは数十メートル先にいた。彼らは朝日を何回か見ているから慣れているのだろう。俺もあいつらみたいに世界に慣れないとな。小走りでアーロンの隣に立ち俺は笑いかけながら、この先一生お世話になる仲間たちへの第一歩を踏み出した。



「なぁ」

「何?」

「外って、こんなにも平和なのか?」


時刻を回ってもうすぐ太陽が真上に上るころ、七時間ぶっ通しで歩いてきた。俺らの目の前には遠近法で小さく見える国が一つ見える。いや相当目を凝らせばもう1つ見えるんだが、俺らが向かってる国はおそらくあそこ。俺らは目標が見えると同時に帰ってきたという感覚に襲われ、近くにある森の近くで休息をとっている。俺は座り体を預け、アーロンはその俺が預けている岩の上であぐらをかき、ルーナは木陰に立ち索敵してくれている。


「今までシリルが生きてきた国がおかしいだけ」

「全く、普通は森にいても高くてA級くらいの魔物だ」

「...ほんとに俺の住んでる場所おかしかったんだ」

「信じてなかったのかよ」


いつもあそこで過ごしていたから外の世界が平和なんて考えたこともないし外のことすら考えようとすらしなかっただろう。日差しはこの時期温かいし、木の上からは優しい小鳥のさえずりが聞こえる。今まではうっさいでかいワイバーンしかいなかったからな。周りに見える牛という生き物がかわいく見える。


俺はまだ1回しか使っていない鎌を取り出し、丁寧に丁寧に磨いていく。物騒な名前だが1度使うと離れられなくなってしまう性能。5分くらい磨いていると材質が金属なため光沢が徐々に起きていく。真上に上る太陽が鎌を光らせ俺の目に刺激を...


「あぁ目いてぇ!」

「お前何してるんだよ」

「シリルもアホすることあるんだ」

「失礼だぞ!」


目の前に太陽の反射が来ると俺の目を刺激ではなく攻撃してくる。目を瞑ってできる暗闇のなかに明るいもやもやが見える。俺は見えない視界の中で床に鎌を置き目をこすった。太陽の攻撃も和らいできて俺もゆっくりと目を開けていく。さっき見慣れたはずの草原が俺の目を優しく包みこんでくれる。あぁ、癒しだ。まぁ『自動治癒』あったからずっと癒されてはいるんだけども。


「そろそろ休憩は終わり、いこ」

「おう!早くギルドマスターに無事...ではないが報告をしたいからな!」

「俺も早く他国に行きたい」





1時間歩いてようやく到着、目の前には門がある。やはり少しこの国は活発なのもあり人の出入りが激しく、入国のための持ち物検査も激しそうだ。一応クナイと鎌はしまっておこう。バッグの奥深くに~セット。俺はやっとの思いで到着した門の最後尾に並んだ

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