第4話 他国の違和感と化け物(第三者視点)

「どういたしましょう?」


ルキアルア王国の隣国、パステル王国の王は頭を抱えていた。最近、ルキアルアからの魔物の出現が異様に少なくなったのだ。別にこの国からは死傷者が減るので何ともうれしいことなのだが、違和感を覚えることが多々ある。


「確かに、一気に減りすぎな気もする」

「はい、1週間前には50体。3日前で約100体が減り今では1日に10数体の出現に減りました」


そう、減り方が異常なのだ。前まではS級のエリートワイバーン・・・・・・・・・がちらほらいたのに、今では見かけすらしない。さすがにおかしすぎる。王女と王は考えに考えたが、結局いなくなった原因は分からずじまい。もう最終手段だといわんばかりに、王は口を開いた。


「国の騎士団の半分、冒険者ギルドからA級5人パーティーの『太陽の光来』、冒険者ギルドからS級冒険者のルーナを呼び、調査に行かせる」

「ですが、もし敗北したときのリスクがデカすぎるかと」

「そうだが、仮にこのまま何もせず、大量の魔物が国を襲ってきたらどうする」

「そうですが....わかりました。ギルドの方に確認を取ってきます」


少し暗い顔をしながら足早に去っていった王女。そのあとを見送り、王はまた悩みだした。


「はぁ、どうしたものか」





冒険者ギルドで1位2位を争うほど有名なパーティー『太陽の光来』、と単独でS級冒険者になりあがったルーナはギルド長応接室に呼ばれていた。


「突然来てもらって悪い」

「大丈夫です」

「俺らも大丈夫だ」


強面のギルド長が謝罪をすると、呼び出されたルーナとパーティーリーダーのアーロンが快くそれを許した。


ルーナは白髪の白い犬耳、紫の瞳や白い尻尾を持つ獣人族。白い髪は肩まで伸びており、整っている顔立ち。小柄で犬耳獣人には珍しい敬語タイプだ。服は高ランク冒険者が所有している防弾ジョッキ、防弾ジョッキのポケットは深く密閉されており毒薬や回復薬など戦闘に役立つものが入っている。剣使いで恐ろしく早い剣技は国の軍に匹敵する。


冒険者パーティーリーダのアーロンは青髪青の瞳の人間族には珍しい大剣使い。鍛錬され切った体は何もかもを持ち上げ、大きな大剣を短剣のように振り回す。服装はアダマンタイトでできている全身鎧。1人ではルーナには劣るがパーティー全体になると止めることは不可能になるといっても過言ではない。


「今回は国からの緊急クエスト。しかし、死亡確率が相当高いため、一応拒否はできる」

「で、その内容は何だ?」

「.....DOUBLEダブルZゼータ危険区域、ルキアルアの調査だ」

「っ!....それは国王からですか?」

「あぁ、お前らも知ってるとは思うがルキアルアのA~S級のモンスターの出入りが限りなく少なくなっている。その調査にいってもらいたい」


DOUBLEダブルZゼータ危険区域。

ある場所には危険区域と言いどのくらい危険なのかというのを指し示すランクのこと。

D、C、B、A、S、DOUBLEダブルSシグマZゼットDOUBLEダブルZゼータ。そして最後にEX。EXは世界全体が危険と認め、侵入は死を意味する。


そして、そのルキアルア王国跡地は上から2番目のDOUBLEダブルZゼータ危険区域に属する。もちろん、ここに入るには国の許可など遺書の先作成など、重く深刻な準備が必要である。しかし、生きて帰ってくるのであればそれ相応の対価が用意される。


「まぁ、俺はいいけどよ」

「ルーナ、確かにお前はこのギルドのトップと言っても過言ではない。しかし、今ここでお前を使わないと危険なのだ。」

「.....わかりました。承諾します」

「ありがとう、本当に。出発は1週間後だ」


快く受け入れたアーロンと、悩みながらも強くなるには欠かせないと思い承諾したルーナ。ルーナは宿屋に帰った後に、戦利品をしっかり確認し、1週間後の出発までに遺書を書き残した。






~シリルSide~

「よし、スキル獲得」


2度目の鬼神化をしてから3週間が経過した。

俺は今日久しくゴブリン狩りをしている。そして、今まで倒してきたエリートワイバーンは以外にもスキルが多く、2週間で3つのスキルを獲得した。


攻撃力・6511

耐久力・2292

体力・810

魔力・2007


特殊スキル

『無呼吸』『スキル強奪』『鬼神化』『弱点可視化』


通常スキル

『歩行音抑制』『鑑定』『予測眼』『知識倍化』『運調節』

『傷害交換』『柔軟性向上』


条件発動スキル

『自動治癒』『自己蘇生』『銃スロー』『体力、魔力返還』

『傷害時攻撃力上昇』


『傷害交換』に関しては使う場面が限れられてくるだろうが、『柔軟性向上』と『傷害時攻撃力上昇』はそこそこ使いそうな模様だ。少々ウキウキ気分な俺は裏路地からひょこっと顔を出し、ゴブリンの群れを探す。すると、キングゴブリンの群れ(13体)を発見した。今回は最近研究が終わった、ショットガンという銃を手に持っている。


銃を構え、いつものお約束『無呼吸』『歩行音抑制』を発動。どのゴブリンにも気づかれずに俺は1体のゴブリンの横に到達。俺は銃口を頭から1センチくらい離して引き金を引いた。


思った以上に反動があるが抑えられる程度だとショットガンの試し打ちを終える。目の前には頭部がないゴブリンは血だまりに倒れている情景、他のゴブリンたちは1度見合わせてハンドガンやら弓やら短剣やらを持って襲い掛かってきた。


俺はすぐさまバックステップを踏み、『予測眼』『弱点可視化』『運調節』『柔軟性向上』を発動。すると、ゴブリンたちの右胸部と頭部が黒く光りだした。俺はその頭に銃口を合わせながら俺が勝つ確率を25%上昇させる。


俺に一番近いゴブリンはハンドガンを放ってくるが、予見眼でわかっていた俺は前傾姿勢なりしたからショットガンで打ち抜く。すぐさまコッキングを行い空薬莢からやっきょを排出。すぐさま攻撃に移る。すると予見眼は右肩に矢、左ひじに銃弾が来ると知らせてくる。


俺は膝を前に出し、腰をそり逆くの字の姿勢になる。次には、俺の目の前に矢と銃弾が見え、視界から離れたことを確認すると俺は矢が放たれた場所へハンドガンを腰から抜き引き金を引く。


姿勢を戻すと、矢を持っていたゴブリンが心臓を撃ち抜かれ死んでいる。残り10体。俺は片手にショットガンと片手にハンドガンと言う殺戮兵器なような状態で引き金を引きまくる。残り8体、6体、4体と殺してくとショットガンの弾が無くなりリロード待機状態に。


俺は撃たれないようにジョギングしながらハンドガンを腰にしまい、ショットガンの弾を1発1発丁寧に入れ最大の5発目を装弾。俺は一発の失敗しか許されないことを覚悟しながら、1対1体至近距離でショットガンを撃つ。


数十秒もしない間に、残りの4体は倒れて3分もしない間に13体のキングゴブリンの群れが壊滅した。


俺はため息をつきながらも、これはまだ下層部の戦いだと言い聞かせ調子に乗らないように気を付ける。俺はスキルの獲得がないことに少し残念がりながらも、久しぶりの大量の食糧獲得によりうっきうきで裏路地へと戻ろうとした。




「ん?あれは...」


俺の目の前にはキングワイバーンに....鎧を着た7人とと獣人族・・・の女の子。....おそらく死亡した仲間に声をかけている青髪の青年。


俺はキングワイバーンと戦ったことはないが、こんなところで見殺しにするのも嫌なので戦闘後の肉体的の疲労はゼロで精神的な疲労がマックスな状態で助太刀に向かった。


獣人の女の子は強いのだろう、50メートル以上離れている俺の方を向き、何かを叫んでいる。すまんが、戦闘音で何も聞こえない。すると、俺へと意識が向いていたのか獣人女の子は疾風魔法で吹き飛ばされてしまい、壁へと強く激突した。


まずい、と思いながら走る速度を上げ『予測眼』『弱点可視化』のみを発動。ワイバーンの両羽、首、頭が黒光り弱点を教えてくれる。俺はショットガンを片手で持ち、なるべくトップスピードで向かう。


残り20メートル近くでやっと鎧の方たちは気づき、叫びだした。さすがに20mだと何と言っているかは聞こえる。


「君は何をしている!DOUBLEダブルZゼータ危険区域だぞ!離れてろ!死ぬぞ!」


なんと今自分たちが死にかけ状態なのに俺への逃げろ宣言。こいつらは感謝がないなと思いながらも、左手を突き出し泉魔法を出す。


(轟音の滝)


俺から水の光線のようなものが出されると、ワイバーンの片羽を落とし地に落ちた。俺はそのすきを見逃さずに砂埃の中にショットガンを3回近くうつ。


砂埃が収まった瞬間、俺に炎のブレスが体中を炙ってくる。しかし、ブレスが収まると俺の体はギリギリを保ち生きていた。


ワイバーンは俺が生きていることに驚愕し、顔が青ざめていった。そんなことを知らない俺は『傷害交換』を発動。俺は片腕が消し飛び、ワイバーンは体が全身炙られ状態。俺が耐えられてもワイバーンは耐えることができずそのまま絶命した。


俺は死んだことを確認し『傷害交換』を再度行った。俺の腕は再生したが、また炙られ状態になる。しかし、『自動治癒』のおかげで俺の体は徐々に癒えていく。


俺は人たちの方を見ると、鎧の人は腰が抜けたのか全員座っており、青年は俺を恐怖の目で見てくる。しかし、獣人の女の子だけが、俺に殺気を向けだした。


はぁ....


「大丈夫ですか?」


スキル紹介⬇


『傷害交換』

相手の傷と自分の傷を交換できる。自分に傷が増える場合は魔力消費量が少なく、自分の傷が減る場合は消費魔力量が少ない


『柔軟性向上』

名前の通り体を柔らかくすることが可能。魔力消費を増やせば増やすほど柔らかくなる。


『傷害時攻撃力上昇』

自分に傷が出来れば発動。傷の具合が酷ければ酷いほど攻撃力が上昇する。

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