第5話 違和感の正体

あれ?今更だけど俺人間としゃべるの初めてじゃないか?そう気づいたのは俺が「大丈夫ですか?」と聞いてから3秒後。しかし、誰も俺に反応してくれないためこの思考に至る。


ほんっとに今更だけど人と話すの初めてじゃね?言語勉強しておいてよかった~。そんな安心感に包まれていると、獣人女の子が口を開いた。


「あなた、誰ですか」

「俺はシリル。ここの国に生活しているしてる。年は15でこの国のプラットフォームの下層部にいる人間だ」

「なっ!この国に住んでいるとか死ぬ気かよ!」


頬に汗をたらし、少し焦りながら俺のことを聞いてきた。俺は正直に答えたつもりなのだが自己紹介が気に入らないのか、青髪の青年が大声で否定してくる。....ん?大声で?


「っば!そんなデカい声出すな」

「ング!ンン」


俺は青髪の青年の口を手でふさぐ。だが、もう遅い。大通りの角から、家の中からぞろぞろとエリートゴブリンやキングゴブリンの群れが現れてくる。よかった、ワイバーンの群れはきていない。俺が安心のため息をつき横を見る。


青い顔をしている騎士らしき男たち。すでに構えて、しかしその顔に焦りがある獣人女の子。座りながらもゴブリンを睨みつける青髪の青年。2人だけが戦闘できる様子だが見るからにさっきの戦闘で疲弊している。他の騎士らしき人は腰が抜けて動けないようだ。


また厄介ごとが増えたなと少し苛立ちを覚えるも、初めての人との対面だ。俺はできる限り怒りを見せないように2人にお願いを口にした。


「俺が突っ切って全匹を叩く。でも、俺も弱いから少し取り逃してしまうかもしれない。君たちはその取り逃したのを殺してほしい。あと、その腰の抜けてる人たちも守ってほしい」

「あなた、大丈夫?こんな群れの量」

「だから、俺は弱いから取り逃したのを殺してほしいとお願いしてる」

「死にたいのか!」

「俺は君たちより強い自信はないが、疲弊しきっている君より万全な俺の方がいい」


うっと確信をつかれた青年は口ごもり、獣人女の子は疑心暗鬼な目で俺を見つめてくる。俺は銃を置き、錆びた短剣を取り出す。この量で銃だとリロードも入れて相当な時間がかかってしまう。ここは無難に短剣で切り裂いた方がいいだろう。


「何ですか、その剣」

「ん?何って言われても。短剣としか言いようがないが」

「無理、やめといたほうがいい。確かにさっきの魔法の精度はすごかったと思います。でも、そんな錆びた剣では皮膚すら切れないかと」

「いや、B級のキングゴブリンはこれくらいでいいだろ」

「何いってんだ、A級だぞ!」


何とも話がかみ合わない気がするが、まぁいいか。俺は群れの方に視点を向け、『弱点可視化』『予測眼』『運調節』『柔軟性向上』『知識倍化』を発動。....ついでにどれくらいの強さが試しとくか。


俺は、手のひらを自分の腹に向け岩魔法を発動。魔法名は(豪華な落石)。発動すると同時に俺腕からヒヒイロカネが出現、そして俺の腹を貫通した。


「ウッ...カハ!」

「お前、何してんだよ!俺らともども殺す気か!」


後ろでどんな顔しているかわからないが、まぁいいか。途端に俺の条件発動スキル『傷害時攻撃力上昇』が発動。俺の体から赤い蒸気が放たれ、徐々に俺の闘争心に火がついてきた。おそらくおなかを貫かれた状態は3倍だろうな。


俺はすぐさま剣を構え、地面を踏みこむ。1番先頭にいたエリートゴブリンは、おなかが貫かれた俺を甘く見ていたのだろう。俺が目の前に来たことが脳で処理されていない。俺は黒光りしている心臓に向けて短剣を突き刺す。


もちろん心臓を刺されたゴブリンの脈は止まり、体から崩れ落ちた。次だ、俺の目の前には....63体のゴブリン。エリートが41体、キングが22体。俺はすぐさまエリートに目を付ける。一番俺に最初に攻撃を与えてくるのはおそらく、俺を正面にして右32度のゴブリン。次は左11度、左44度、右55度。


まずはこの4体に目を付け、首に頭。そして胸に鼻に突き刺す。すると俺の後ろにキングゴブリンが忍び寄ってきた。おそらく気配をスキルを持っているだろう。俺はそれを対処するように後ろに向けて回し蹴り、顔は陥没して血が噴き出てくる。残り58体。


ここまで完璧に5体を殺すと、ゴブリンは驚いていたがさすがに数でこちらに分があると感じたのか1番偉くリーダー気質のキングゴブリンが命令を下し、全員俺に向かて走り出した。俺は冷静にどの順番で俺に攻撃してくるかを『予測眼』『知識倍化』を駆使し判断。『運調節』を使いキングゴブリンが半分がこける確率を25%上昇させる。


『運調節』の効果はすぐさま、キング22体中8体がこけた。こけて起き上がらないため、俺は岩魔法で(豪華な落石)を使いお起き上がれないように足を固定。これで十分だ。俺は起き上がれないことを確認した後、エリートから潰し始めた。顔面を刺す、首を切る、回し蹴りに右フック。次々にエリートを潰した後。こけたゴブリン全員にかかと落として胸を陥没させる。一度俺はバックステップを踏み残りを確認。


残りは、エリート8体にキングは14体。全員潰せそうだな。そう感じた俺は錆びた剣で左手首を切り落とした。これでおそらく3.5倍。一気に潰す。


俺は落ちている剣や槍を拾い、少し遠くにいるエリートゴブリンの弱点をしっかり穿いていく。どんどんエリートゴブリンの顔は青ざめ、ついには背を向けて逃げ出した。俺は逃がさないようしっかり投げ、エリートゴブリンは全滅した。


残りはキング。キングも逃げるのかと思いきや、自分の種には誇りがあるのかまだ勝ちは見えるのか逃げずに俺のことを睨みつけている。俺はゴブリンに近づき、残り10メートル付近で急接近。さすがに予想していなかっただろう、俺は短剣で切りつけ、切りつけ切りつけ切りつけた。


あっという間に俺の目の前にはリーダー格のキングゴブリンにだけになった。しかし、俺に勝てる未来が見えなかったのだろう。徐々にあとずさり、俺から離れていく。さて、もう『傷害時攻撃力上昇』の実験はいいか。


「ばいば~い」


俺は不吉な笑みを向けながら、『傷害交換』を発動。俺の手首は再生し、腹にある岩が消えた後に風穴がすぐさま再生した。さすがに服は戻ることはなく、おなかが丸見えだ。ゴブリンはというと、腹に風穴があき、手首が消え大量出血状態。


「オオオオオオォォォ!」


叫び声をあげ、痛みに耐えているがその叫び声は小さくなり、うつぶせになりながら息絶えた。


「ふぅう、スキルはっと」


攻撃力・6671

耐久力・2412

体力・889

魔力・2091


特殊スキル

『無呼吸』『スキル強奪』『鬼神化』『弱点可視化』

『スキル譲渡』


通常スキル

『歩行音抑制』『鑑定』『予測眼』『知識倍化』『運調節』

『傷害交換』『柔軟性向上』『防御特化』『気配遮断』


条件発動スキル

『自動治癒』『自己蘇生』『銃スロー』『体力、魔力返還』

『傷害時攻撃力上昇』


おぉ、いい収穫だ。俺は死体を避けながら少し走りながらあの人達のもとに戻る。獣人族の女の子はもう俺に殺気を持っておらず、驚愕という文字で顔が埋め尽くされていた。青年はなぜか大量の汗をかいており、騎士らしき人達は鎧を脱いでいる。


「俺の拠点来るか?」



スキル紹介⇩


『スキル譲渡』

名前通りスキルを渡すことができる。強いスキルは相当な体力を消費するがいらないスキルが捨てたりできる。


『防御特化』

自分の攻撃力の半分をすべて耐久力と体力に分ける。これを発動していても魔力消費は極端に少なく、我慢比べは負けなし。


『気配遮断』

自分の気配を薄くすることができる。調整も可能だが、完全に気配を遮断するのは相当の疲労になる。だが、ここに『無呼吸』『歩行音抑制』を追加することによりバレることはほぼないといっても過言ではない。

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