第4話 村で疫病が流行する

 アラーン

 次の春、痘病ウンビンが村に出た。痘病がとりついた人は全身に疱瘡ができて膿み爛れ死んだ。同じ集落の五人に四人までは痘病にとりつかれた。夏になると痘病はますます激しく流行した。そこで祈祷師アハ・マファが招かれた。

 夜は神霊セオンが活発になる。そのため夜になると痘病のとりついた家を祈祷師が訪れる。家の前に供物を並べ、神具を並べ、家の囲炉裏で香木を焚く。神の奴隷である祈祷師が歌って杖で鼓を鳴らすとしばらくして神霊がやってくる。神霊は住民と祈祷師に指示を出し、痘病に説得する。神霊の説得に応じると痘病はその家を立ち去る。優れた祈祷師には優れた神霊がいる。優れた神霊が説得すると痘病はすぐに退散するが、痘病が去らない場合はもっと強い神霊のいる祈祷師が呼ばれる。

 祈祷師が懇願しても痘病はなかなか去らず、最後に呼ばれたのはスモル・マファ。シホテアリン山脈の北からやってきた祈祷師だった。スモル・マファが懇願すると、ようやく痘病は落ち着いた。しかしそのとき、村の人は半分近く減っていた。

 村には「生の魚を食べると痘病がとりつく」という噂が流れた。ちょうど秋が終わって冬になっていたので、村の人は冬の間に獣をたくさん捕らえて干し肉を作った。

 果たして春になったが、人々は漁に行かなかった。ただアジン・モルゲンだけは変わらずハンカ湖に行き続けた。食べるわけではなく、いつものようにチョウザメを捕えては逃がし続けていた。

 夏になる頃、アジン・モルゲンに痘病がとりついた。祈祷師が痘病にアジン・モルゲンから立ち去るよう説得したが、痘病はアジン・モルゲンから離れなかった。

 アジン・モルゲンの子は七歳になろうとしていた。顔に痘病の兆しが現れていたので、アジン・モルゲンは病床からこの子を離そうとしなかった。

 やがて痘病が口の中まで覆い尽くそうとする頃に、アジン・モルゲンは子に告げた。

 「子に名を与えるのは父の務め。お前はまだ幼いが、名を与える」と。

 アジン・モルゲンが子に与えた名はイマハ。父はその名を一度しか呼ぶことができなかった。父が死者の国ブニオに旅立つにあたり、もう誰にも呼ばれることはないと、その名前は覚悟していた。

 しかし痘病はアジン・モルゲンを死者の国へと連れて行ったが、イマハを連れては行かなかった。イマハには疫神ウンバオ・マファの加護が宿り、顔に鱗を持つことになった。

 鱗を持つ者は痘病を退ける。父母をなくしたイマハを、スモル・マファが弟子にした。

 ハリララ ハリラ ハリラ ハリララ ハリリ ハレイ

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