第3話 ハンカ湖の北から東へ移住する

 アラーン

 しばらくしてハンカ湖の周りには、たくさんの人が訪れるようになった。

 勇敢で礼儀正しく勤勉なアジン・モルゲンは、客人を丁寧にもてなした。食料と薬草を分け与え、道を教えた。レフー川に沿って何度もロシア人の探検隊が送り込まれ、そのたびに迷う人も多くいたので、アジン・モルゲンは迷い人を助け、時に虎や熊に食われた人たちを葬った。湖の周りは巨大な湿原で、足を取られて動けなくなる客人が多かったので、見つけるたびにアジン・モルゲンはそれを助けた。

 ある寒い冬、とてもたくさんの客人が湖にやってきた。それはコサックでも探検隊でもなく、住むところを失った貧しい人々だった。アジン・モルゲンらが村に招いたところ、彼らは続々と増え続けた。そして春になると、湖の周りの乾いた土地を興し、大豆や玉蜀黍とうもろこしを育て始めた。そのため、舟をつける場所がなくなるほどだった。

 「畑の作物は動けない。人には足がある。」

 アジン・モルゲンと村の人々は、ハンカ湖のほとりを進み、村の場所を東に移した。

 新しい村には、以前より更にたくさんの人が訪れた。その多くはロシア人で、たくさん酒を持っていて、毛皮や絹や青玉と引き換えに村の人々に与えた。アジン・モルゲンは酒を好まなかったが、求められると必要な分だけ毛皮を彼らに与えたため、ニングダで商品に引き換えたり、イランへ献上したりする分がなくなった。長く献上することがなくなったため、郷長の証書も効力がなくなった。毛皮は酒と引き換えたのでなくなった。酒は皆が飲んだのでなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る