第2話 アジン・モルゲンとウラジオストクを目指す三人のロシア人

 アラーン

 あるとき、アジン・モルゲンが山中に人参を取りに行っていると、山小屋に三人のロシア人を見つけた。いずれも毛皮の衣をまとっていたが、破れてぼろぼろになっており、顔は泥にまみれていた。ロシア人は虎に仲間を二人食われ、怯えて言葉も出ないほどだった。

 高貴な虎は非礼を許さない。臆病な人は礼儀を忘れる。

 アジン・モルゲンは勇敢で礼儀正しい男であったので、煙草をひとしきり燻らせると、ロシア人に代わり虎に礼儀を尽くした。猪と鹿の頭を捧げ、刀を地に刺して叩頭した。虎はフルルと喉を鳴らして近づいたが、アジン・モルゲンの礼儀を認めて立ち去った。

 アジン・モルゲンは三人のロシア人に薬と食料を分け与え、三人はアジン・モルゲンに尽くせないほどの感謝を示した。一人は教師、一人は探検家、一人はコサックだった。レフー川を遡り、その後ウラジオストクを目指すと言って出発した。

 三人が出発してまもなく吹雪がやってきた。あっという間に空が暗くなり、すぐに吹雪で真っ白になった。三人が凍り付いて動けなくなったところ、アジン・モルゲンは葦を切って仮小屋を作り、これを助けた。

 次に三人はブシュクに襲われた。ブシュクはふわふわと飛ぶ火の玉に似ていたが、人の姿を見つけると毒の刃で襲い掛かる化け物だった。三人が夜営のために小屋を見つけて入るとその中にブシュクがいた。オンドルの上に腰掛けて、死人の頭を抱き、その脳を食べていた。

 三人が逃げようとすると四つ目の犬が追ってきた。アジン・モルゲンは拾った柄杓で犬を打って怯えさせた。次にかんぬきを持ってブシュクに対峙し、囲炉裏の灰をぶちまけた、ブシュクは何も見えなくなったので、その間にアジン・モルゲンと三人の男は走って逃げた。

 ついに三人のロシア人とアジン・モルゲンはウラジオストクにたどり着いた。三人はアジン・モルゲンへのお礼に、金と酒と煙草と食料を渡した。

 アジン・モルゲンはハンカ湖まで戻るまでの間、山小屋を見つけるたびに金と酒と煙草と食料を少しずつ残していった。そのためハンカ湖に戻るころには、アジン・モルゲンはもらったものを何も持っていなかった。

 真面目な男、アジン・モルゲン。チョウザメの夫、アジン・モルゲン。

 ハリララ ハリラ ハリラ ハリララ ハリリ ハレイ

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