第42話 僕にとっての恋

 逢望の2つ目の条件の答え――


「少しおかしいって思われるかもしれないけど――」


 僕の考えを今、逢望さんに打ち明ける。


「なんで言わなかったか。仮に言ったとして、逢望がそれを認めてくれるってことを知っていても、僕は言わなかったと思う。だって僕らがさ、そういう恋人だとかそういう関係を作る理由って、人生を豊かにするためとか、辛いときに支えてくれたり安心できるようにするとかそんな理由じゃん? だけど、その目的を果たすために必ずしも恋人にならないといけないか、そういう人とじゃなきゃ無理って言われたら、僕はそういうわけでもないと思うんだ。むしろ、恋人だったら僕の場合に過ぎないかもしれないけど、お互いのことを了承し合っちゃってるから、相手のことを考えられなくなる時があるんじゃないかなって、僕みたいなやつは時々相手を考えることが抜けちゃうんじゃないかって……。でも、友達だとか、友達以上恋人未満とかそういう関係なら、相手のことをいつでも思って言葉を選んだり、関係を作ったりできるんじゃないかなって思ったんだ。それに、恋人だったら連絡を頻繁に取らなきゃとか、お互いの時間をできるだけ確保しなきゃとかそういう考えが僕にはどうしても頭の中にあるけど、そういう関係ならあんまり考える必要もないからお互いが過ごしやすくなるなって思ったからかな」


 僕の考えを次々と打ち明けていく。これはあくまでも僕の考えに過ぎない。だから、この考えが人によっては間違ってるとか違うだろって感じるかもしれない。でも、あくまで僕という人の考えだ。そういうことを考えなら、僕は話を続ける。


「つまり、恋人とかそういう関係じゃないほうが、僕にとってこの青春という一瞬を豊かにできると思った。そういうことを教えてくれたのは、実は、流希なんだ。恋の形は人ぞれぞれだって教えてくれた。だから、僕の考えた形はこれだった。もちろんその考えが、変わればまたそのときにでも考えればいい。でも、僕の今の形はこれ」


 僕の考えを言えるものは全て逢望に伝えた。もしかしたら、僕の考えを少し引いたかもしれない。でも、それならそれで構わない……そう思っていったのだから。


「そうなんだ。ていうことは、恋人関係が一番の恋って人も、友達関係がそうだっていう人。自分の想いを伝えずにただ単に見守っているだけとか、尊敬してるだけ……そういうのが一番の恋ってう人も……色んな人がいるってことだね」


 今、僕が言ったことを逢望さんはまとめてくれた。そう、僕が言いたかったことはつまりそういうことだ。人によっていろんな形があるから、自分がそれを一番だと思えれば、間違ってはない。


「素敵な考えだね。じゃあ、私たち、お互いをずっと想ってる……そんな関係にしようか」


「えっ……?」


「恋の形は人ぞれぞれだって言ったのは君でしょ? だから……」


 そうか……。僕はなんとなく逢望が言いたいことがわかった。そういうことなら、僕が言うことは、この言葉しかない。


「もちろん」


 電車がホームに入ってくる。


 その電車がゆっくりと止まった。


 電車の扉が開く。


 その電車に僕らは一緒に乗り込んだ。


 僕にとってはその扉の先が、なにか未来のように思えた。



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