第40話 その後の展開
この後、犯人は僕ら4人を閉じ込めた学校から無事に解放した。それから犯人は近くの警察署に自ら出頭して、監禁罪や建造物侵入罪などの罪で逮捕されたようだ。
調ベに対しても、動機に対しても僕らが経験したり、聞いたりしたことと同じように素直に答えたようだ。この犯人が今後どのような罰を受けるのかはまだまだ先の話なんだろう。でも、僕らはもう犯人には十分罪と向き合えてると思うから、僕が口出しできるようなことではないけど、できるだけ短い期間で終えることをどこかで願っている。
この元教師が起こした伝統行事を守るために生徒4人を監禁したという異例の事件は全国のニュースでも度々取り上げられ、僕らのところに取材が来ることもあった(僕らはその取材を全て丁重にお断りした)。この事件について、そこまでして生徒を監禁したことについてはどうなのか? 元教師として生徒を利用するのはどうなのか? というような犯人に対する批判は集まった。しかし、受け継がれてきた伝統行事をなくすのはどうなのか? 今の時代にも必要ではないのか? という学校側に対する批判も同時に起きた。この伝統行事を巡る批判は生徒内でも起き、僕らが復活を求める署名活動などの運動をするまでに発展した(夏休みにもかかわらず、多くの人が学校に足を踏み入れ、署名してくれた)。
この問題をめぐり学校の3役などは臨時で記者会見を学校の会見としては異例の大規模な場所で開き、まず生徒監禁事件について事前に防げなかったことや学校の管理が十分に行き届いていなかったことなどを謝罪した。それとともに伝統行事は生徒たちの今後の未来のためにも必要であり、また、これまでこの学校に携わっていた方々を含め多くの人への配慮も、労いも足りていなかったとして多くの人の意見も聞かず勝手に伝統行事をなくしてしまったことを謝罪し、伝統行事を例年と同じ形で、すでに時期がすぎてしまったものについても日程を改めて組み直して行なうことを約束した。
これであの犯人の約束は果たせたが、僕と流希も勝手に学校に侵入したことについて厳重注意を受けた。それに僕はもう一つ、プランターを少し壊してしまったという自らの罪も告白したから流希よりも余計に怒られてしまった(この罪は今すぐに告白しなくてもよかったかもしれない)。
閉じ込められた学校から解放され、家族と再会したときは、家族の皆が泣きながら僕にハグしてくれた。数年ぶりにしてもらったハグは不思議な感触だった。でも、柔らかかった。お母さんが一番泣いてるかと思いきや、一番泣いていたのはお姉ちゃんだった。何度も何度も「心配したんだよ。生きてくれててよかった」と言っていた。なんだかそれが一番お姉ちゃんだと僕が感じた瞬間だった。
そんな風に、色々あったけれど、伝統行事も復活することができたし、僕ら4人は無事だったので、僕は特に何か過去を後悔することはたぶん何もない。
ただ、少しあるのだとしたらあれだろうか――
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