第33話 北原先生と犯人

「それを、誰かが恨んでいて……」


 それを心の奥深くから恨んでる人もいた。

 

 ――なくなったのはあいつのせい。


 そのあいつというのは3役を指しているんだろうか?


 でも、それだけの理由ならなぜ僕らが被害を受けないといけないのか。


 3役は大人だからこうやって復讐することが難しいから生徒にしたというのだろうけど、別に僕以外にも伝統文化部の部員はいるし、僕らじゃないくてもいい気がする。


「もしかしたら、俺らを選んだのは、俺らが全員、北原先生の担任だからじゃね?」


「えっ……? 北原先生の担任だから……?」


 北原先生も恨まれていた?


 僕がどういうことかを考えようとする前に、流希が話し始めた。


 北原先生の職員室に置かれていた、こけしについて――


「あのこけし、誰かからもらったって俺は言っただろ?」


「うん」


 僕ら3人は小さくうなずく。あれは確か、病気か何かで教師をやめてしまった先生からもらったものだって言っていた。そして、その先生は北原先生を信頼していたとも同時にたしか流希は前に言っていた。


「その話を俺は思い出したら、なんか分かったんだよ。その話について話すとさ――」


 北原先生いわく、そのやめてしまった先生に信頼されていた理由は自分で言うのも恥ずかしいけれど、普段の授業もちゃんと計画を立ててみんなに分かりやすく教えていたところ、身の回りの変化にいち早く気づいて、生徒の悩みを聞いていたところ、そしてなによりも伝統的学校行事に力を尽くしていたところと……そんなんじゃないかって北原先生は少し照れながらかつて言っていたみたいだ。


 北原先生はその人が学校を辞める最後の日にあるものをもらったらしい。元々その人とは関わりもあり、お互いに年齢も近かったので、特に何も驚くことなくそのこけしをありがたく受け取ったらしい。


 そして、そのこけしを北原先生に渡してから、その人はこんなことを最後に言ったらしい。


『北原先生、今まで本当にありがとう。僕はさ、この学校の伝統を教えるとか守るとかいう強い想いが大好きだったんだ。僕は病気でやめちゃうけどこの学校で終れてよかったし、この学校に出会えてよかったよ。この学校の伝統を北原先生、これからも守って欲しい。伝統行事にも積極的に関わってくれた先生だから信頼しているよ。どうぞお願いします』


 そう言われたらしい。普通ならこんな会話の一文一単語まで覚えられないけれど、北原先生はなぜか、この人の言った一文単語が頭に残ってしまったみたいだ。


「そういうことか……」


 わけがわかった。


 北原先生を恨んでいたのは、お願いを交わしたのにもかかわらず、それを守ってはくれなかったから。知らぬ間に消えてしまったものを阻止することができなかったから。


 それだけじゃない。

 

 誰が犯人かも。どういう目的があるのかも。


 全てがわかった。


 どこかに秘密がある。


 きっと犯人は、今、校長室にいる――


 一番恨んでいる人がいる場所に。



 

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