第25話 報告Ⅰ

「あー、2人ともただいまー」


「あ、おかえり」


「おまたせです」


「です〜」


 2人は僕らがトイレに行っただけなのに温かく迎えてくれた。


 2人もなにか女子トークでもしていたんだろうか。僕らが入ってくる前、外で少し笑い声が聞こえた。もしかしたら、僕らと同じような話を2人でもしてたのかもしれない。僕のことについて話題になってたかもしれないと思うと、少し恥ずかしい気もする。


「じゃあ、お互いの発表でもするか」


 僕と流希はさっきのように座る。


 まず2箇所を調べた僕と逢望さんペアから成果を発表することにした。始めは僕らのホームルーム教室について。


 ホームルーム教室ではまず窓と掃除用具庫が空いていたことが一番気になった点だ(掃除用具庫が空いていた犯人は僕らなんだろうけど)。そして、笛乃さんの机の中にあった祭りのポスターが何か引っかかったことを報告した。笛乃さんの机の中にあったそのポスターは本当は僕が笛乃さんの机を探しているときに出てきたのだが、それを言うのは流石に気が引けたので、たまたま風か何かで落ちてきたのを僕が拾ったという設定に変えて話した。


 あと、これは2人には言わなかったが、僕が犯した罪が分かったり、それにより僕の過去の記憶がなぜだか蘇ってきた。そこで僕はこのまま死んでしまうとかは嫌だという気持ちが強く出てきた。


 これについても、伏せてあるけど教室では流希の失敗したやつだけれど、ラブレターを2人とも興味があったので拝借したな。


「ほー、窓とかが開いてたのはなんか怪しいねー。っていうか、ごめんね、ポスター。ちゃんと奥に入ってなかったみたい。落ちたときに滑ったりしてない?」


「あー、全然大丈夫です! 大丈夫です!」


 笛乃さんからの言葉に嘘をついたことが少し痛む。そういうことを気にかけてくれるとは思ってなかったから。たしかに、さっき流希が言ってくれたことはあってるのかもしれない。自分の持ってる力の多くを他人に使ってあげられる部分を。


「そうならよかった。じゃあ、図書室については?」


「図書室はねー」


 図書室はまず逢望さんが前に笛乃さんから聞いて知っていた隠し鍵をとって中にはいったが、その鍵に少し違和感があった。どこか少し体温が感じられのだ。


 そしてカウンターの近くのホワイトボードに気になる記述があった。これが犯人が書いたものかは分からないが、僕らはそう見ているという見解とともに。


『明日8:00 最終』


『職員室に?』


『なくなったのはあいつのせいだ』


 書かれていたのはこの3点。


 そして帰りの際に『4➡2』と書かれた色紙があったことも一応伝えておいた。それも4の数字が2の数字よりも倍以上大きく書かれていたことも追加で。ただし、これは誰のか(犯人かそうじゃないか)という見解を添えて。


 ここからは2人には話してないが、恨むことについて逢望さんが過去の辛い経験を僕に話してくれた。人間は自然に恨まれていて、恨んでいること。


 でも、逢望さんが話してくれたものは最後まで聞くことはできなかった。だから、過去の逢望さんが話の続きである部分をどう生きて、今、ここでこの姿でいるのかは分かっていない。


 そう言えば、あそこでは逢望さんと無事に出ることができたらお互いを名前呼びしようと言うことも約束した気がする。少し恥ずかしい約束をしたんだ。


「そうか、なんか犯人って意外とメッセージというかをたくさん残してるところが、少し気になるよね」


「そうだよな。なんとなく分かりそうなものから、あんまりよく分からないものまで」


 そう、そのことについては僕らも少し話していた。この事件はどうせあと少し経てば警察が僕らを見つけ、僕らは普通に出られるようになり、そして警察の捜査が入り、犯人が残したものがたくさんあるから、すぐに犯人は見つかって事件は完璧に終わってしまいそうだと僕は思う。


「だから、犯人は逮捕されてもいいと思ってるんじゃない? それまでしてしたいことでもあったんじゃない? もしくは、その人が相当やばい人っていう可能性もなくはないけど……」


「まあ、相当ヤバい人っていう説は一旦置いておいて、なにか明確な意志があるのは俺も1票。その明確な意志が知れればなにか見えてきそうだけどな……」


どうやら、まだまだ僕らはこの謎を解くことはできないようだ。









 


 

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