第22話 怪奇現象?
次に僕らは、担当になっていて僕の部活の部室でもある、伝統文化部の部室に向かった。そこが最後だ。でも、さっき図書室にある時計で確認したが、もうかなり時間が遅くなってきている。そのせいか、時々あくびが出るようになってきた(でも、あくびをしてるところを逢望さんに見られるのは少し恥ずかしいので、バレないように横を向くなどしてあくびをしている)。
「お母さんたち、今頃、警察に連絡してくれてるかな?」
「いや、まだ時間的にはな……」
もうこの時間とはいえ高校生ならこの時間に出歩いてる人だってぼちぼちいるからまだその希望は薄いんじゃないだろうか。正直なところ早く警察に見つけてほしいところだが、まだパトカーのサイレンの音すら聞こえない。
「はぁーあ」
あれ、これは僕のあくび……?
いや、でも僕は今あくびしていない気がする。流石に自分のしたあくびか他人のかぐらいは分かる。ということは……。
「あ、ごめん」
どうやら逢望さんのあくびだったようだ。そうだよな、経験もしたことないような場面にいて、もうそれに夜だ。逢望さんだってあくびぐらいはする。
「いや、別に全然……」
別に何も謝るほど失礼なものじゃない。というか、人間だから出て当たり前なものだ。でも、逢望さんのあくびしている光景はなんだか自然だった。
「ん? あれって、まさかお化け!?」
突然、逢望さんが変なことを言い出した。そして、逢望さんは真っ直ぐと前の方に指をさす。流石になにかの置物だとかそういうのだよ……と思いながら僕も見てみる。でも、たしかになにか人影のようなものが2つ見えるような気がするのだ。それも、動いている。流希と笛乃さんは他の棟を捜査してるはずだからこの棟にいるのは僕たちだけなはずなのに。だからこんなところに人はいないはずなのに。犯人だってたぶん今までの感じから単独犯なような気がするし、2つあるってことは……。
ということは――
「いや、流石に嘘でしょ」
そうだ、ここは夢の世界ではない。非現実っぽい状況に立たされてはいるけれど、一応、現実世界だ。そんな漫画とか小説とかでしか出てこないような心霊現象がこんな間近で起こるはずない。人間の世界はだいたい予測できる範囲のことしか起こらないんだから。でも、最近テレビで見た心霊現象特集のおかげで、余計に僕の心が乱れる。
「じゃあ……なに?」
「知らないけど、でも、この世のなにか!」
この状況にいるんだから、お化けじゃなくたとしても何か不気味なことが起きるのは至って普通なのではないか……そうとまで思えてきた。いや、そんなことはないはずなのに。
「じゃあ、少し近づいてみる?」
「うん。でも、ゆっくりだよ!」
でも、僕らがお化けとかそういうのだと思っていたものは、近づいていくとそういうものなんかじゃないということがすぐに分かった。
「なんだ笛乃ちゃんと、流希くんだったのか……」
なんだ、僕らの仲間だった。あのとき無性に怖がっていた僕が少し恥ずかしくなる。
「ん? どういうこと?」
笛乃さんが逢望さんの言った言葉にハテナマークを3つ頭の上にならべてそう聞いてきた。
「なんか、暗いのもあって、お化けとかそういうのに見えたんだよね。だってほら、2人はこの棟にはいないはずだから……。どうして2人はここに?」
「ごめんね、驚かせちゃったみたいで。私たちは終わったから地学室に戻ってきたけど、2人はまだいない感じだったから。じゃあ2人を探して再会しようと思って」
そういうことか、それなら納得だ。笛乃さんの説明で理解できた。ということは僕らはかなり長く2つの教室について調べていたみたいだ。まあ、僕らのホームルーム教室では流希のラブレターを読んでいたし、さっきの図書室だって逢望さんの経験談を聞いていたから無理もない話であろう。
「2人はどう?」
「あと想之也くんの伝統文化部の部室だけ」
「そうか、じゃあ4人で行く? そこでお互いの成果というかも含めて」
流希の言葉に僕ら3人は賛成したので、最後の伝統文化部の部室へは2人も混じり、4人で行くことにした。
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