第13話 僕の罪

「どうしたの……?」


 急に逢望さんが出してきた大きな声に僕の心臓も驚いてしまったようだ。ホラー系のドラマとか映画で急にどこからか手が伸びてきたときのような驚きだった。急に何だと思いながらも、逢望さんにそう聞く。


「外にあるプランターに少しひびが!」


 逢望さんが斜め下を指していたので、僕の瞳を逢望さんが指している方向へと向ける。僕らのクラスのベランダではいくつか季節の花がプランターに植えられ、育てられているが、そのうちの一つのプランターが少し欠けていたのだ。大きさとしてはそこまではなく、花にも特段影響はなさそうだが、僕ははっとある出来事を思い出した。


 あれ、なにか……。


 ひび……。


 もしかしたら、


 もしかしたら、


 ――それは僕の犯した犯罪かもしれない。


 ――それは僕の罪かもしれない。


 少し前といっても数日前の話になるが、僕は掃除当番で教室の掃除をしていた。僕以外にも3人いたが、1人はさぼりなのでそもそもいなかった。残りの2人はゴミ箱にペットボトルなどのゴミが溜まっていたため、そのゴミを捨てに行ったので、教室には必然的に僕一人になった。それでも掃除をしていたというんだから一応偉いことは偉いんだろう。


 その日の前日は面白いユーチューブを見つけて、夜通しそれを見ていたため、かなりの寝不足で判断力がかなり落ちていた。その証拠にその日あった漢字テスト(小テスト)の点はいつもの半分ぐらいしか点が取れなかった。


 そのこともあってか、僕は持っていたほうきを子供みたいに振り回していたわけではないと思うが、そのほうきがどこかに当たりバン! というような大きな音を立ててなにかにぶつけてしまった。


 そしてそのぶつけたところが、窓の開いていたところの付近の外だったのだ。もしかしたらそのときに僕がぶつけてしまったのかもしれない。あの後、何かにぶつけたかと(判断力が鈍っていたので)見たわけでもないし、それだけの力でプランターにひびが入るのかという疑問は残るが、僕がやった確率はかなり高いといえるだろう。


 だからこれは僕の罪かもしれない。僕の犯した事件なのかもしれない。さっき逢望さんがいっていたように、この世には大きさは様々だが、多くの事件が起きている。その一つの事件の犯人が僕なのかもしれない。


「――さよなら」


 あれ――誰かに押された? 強い力で今、押された? 一瞬の出来事で何が起きたか把握できない。でも、外に身をのり出していたところから誰かに落とされたのは間違いないんじゃないだろうか。

 

 僕の罪に対する、刑罰? 


 逢望さん……?


 僕の体は一瞬、宙を待った。僕が外に放り出される。ここは校舎の3階。7メートルとか8メートルぐらいはあるだろう。こんなところから落ちたらどうなるんだろう。


 そもそも、なんで僕は外に放り出されてるんだろう。ゆっくりと時計の針がまるで四分の一ぐらいのスピードまで遅くなったかのように感じる。


 僕はこのまま死ぬのだろうか? 


 でも、なんでこんなところで死ぬんだろうか?


 別にどこで死にたいとかいう希望はないけれど、こういう形の最期は望んでいなかった。


 今から仮に死ぬんだとしたら、なんか後悔あるかな。別にないかもしれない。僕の人生ってそんな感じなのかもしれない。そう考えると、少し寂しくもある。


 本当かな――


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