第11話 職員室と先生
「だめだ、前も開かない。皆、帰っちゃったらしい」
職員室の後ろのドアが開かなかったので、流希は前のドアも確かめてきてくれたが、どうやら鍵がかかって閉まってるようだ。何度も流希はドアを開けようと試みてはいるが開きそうにはない。なぜか学校の校舎は古いのに、最近ドアだけ付け替えたみたいで、ガチャガチャしてたら開いてしまったみたいなことはなさそうだ。まだ誰かしらいるかなと思ったが、これでは万事休す。せめてドアだけでも開けば誰かに電話することができるのに。
「スマホがあればな〜」
「笛乃、2つ持ってたりはしないよな……?」
「なんで私!? もってないよ! 流希だってもってないしょ!」
「まあまあ」
なんか僕らの前で笛乃さんと流希の小さな喧嘩のようなものが始まりそうな感じに少しピリッとしていたので、逢望さんが慌てて静止に入る。そのおかげで、2人は収まった。
「でもさ、やっぱ私たちの世代って、スマホに知らず知らずのうちにけっこう頼ってたんだね。こんなにもスマホが便利な道具だったとは……。便利なものを見つけるってある意味怖いね」
その言葉に反論することができないぐらいだ。何か便利なものを見つけるのはある意味怖い。便利なものが色々出ている現代って怖い世界なんじゃないだろうか。昔の方がよっぽど――
「あー、あの先生の机、汚いなー」
ドアの小さな窓ガラス部分のところから笛乃さんが一番端で、僕らの方を前としたときに2番目の席を指した。確かに何が書いてあるのかはここからでは全く読めないが紙が散乱しているのはたしかで、おまけにお酒のおつまみになりそうな柿の種の袋が真ん中に堂々と置いてある。
「これは、隣のクラスの担任の井原先生だなー。でも、机のきたなさ割にテストの問題用紙はプロが作ったみたいにクオリティー高いんだよな。裏と表があるって意味で、これの犯人、井原先生だったりする説ない?」
「なにそれ、理科とお酒にしか興味なさそうなあの先生が? まさかー。ないない。でも、流石、
「もしかしたら結婚生活になにかあって、その原因が私たちにあって……まあ、考え過ぎか。というか、私たちの担任の、北原テーチャーはまあまあだねー。もう少しきれいにすればモテるかもしれないのに。あれ? なんか漫画が置いてあるような……なんのやつかは分からいけど……」
「というか、先生方をなんで疑ってるんだろう。まあ、考えれえば考えるほど分からなくなりからもうやめよっと」
なぜか分からないが、この3人は、先生の机がきれいかどうかでのトークで盛り上がってる。僕にはどうも興味が出ない。たしかにそういうので性格は出るというが、だからなんだという問題に僕は思える。井原先生は僕らのクラスも受け持ってるので、ある程度は知っているが、なんかたまに意味不明なことをいう不思議な人だ。正岡先生が美女と結婚したというのも学校の大ニュースになったのでもちろん知っている(ちなみにだが、その奥さんは少しモデルをやってるらしい)。
「あれ、なに?」
逢望さんが僕らの担任の北原先生の机に置かれているやや細長いものを指す。ここからは角度の問題的に少し見づらいかもしれない。
「あー、あれはこけしだね。どこのかはここからじゃ判断できないけど、こけしは宮城とか山形とかで有名だね」
「おー、さすが伝統文化部!」
「あ、うん。ありがとう」
ここで僕の部活が活躍する場面があるなんて思ってもなかったが、逢望さんにそう言ってもらえることはかなり自信になる。これだけのために僕は伝統文化部に入ったのかもしれない(もちろんそんなことはない)。僕の顔の周りに嬉しさの風船が飛んでいきそうだ。
「あっ! 俺なんか聞いたことあるかも、そのこけしについて。なんか俺らが1年のときに病気かなんかで夏でやめちゃった先生からもらったんだって。なぜかその先生は俺らの担任の北原先生をなぜか信頼してたらしい。その話、先生から詳しく聞いたは」
たしかに僕らが1年の途中でやめてしまった先生が僕らの学年とは関わりが特に無かったのであまりはっきりとは覚えてないがそんな人がいた気がする。たしか、北原先生と同じぐらいの年の人だった。
「じゃあ、まあいなかったということで、それぞれ分かれて何かないか見つけますか。時計は電気がつかない教室も多いから気にするのは難しいと思うけど、一応1時間弱ぐらいには地学室に戻ってこよう!」
別にいいのだが、なぜか急に流希がリーダー感を出し、そうやってまとめると、僕らはさっきグッパで別れたペアにそれぞれ分かれて担当の場所に散った。
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