6(完).マポロ計画、月世界到達、そして未来へ

 天空帝国の計画は、遂に月着陸に手を伸ばした。三日月の弓に矢をつがえる少年神の名からマポロ計画と名付けられた、最終局面である。


 最早事ここに至れば、新時代の覇者は天空帝国である事は明白だった。


 各国は独自の計画を諦め、その独自魔法技術を供出し計画遂行を早める事で天空帝国に対して貢献し、それにより利権を確保する事を選び。


 開発は加速し、遂に至った。


 糸巻ロケットは更に巨大化し、三つの加速糸巻ブースターロケットに最早柱の如き過去最大の箒を一本づつ、第一弾糸巻ロケットに箒を十、第二・第三弾にそれぞれ五つの箒を搭載し、三つの箒を有する第四段糸巻ロケットを月軌道に投入するという凄まじいもので、“飛ぶ教会”を通り越し“飛ぶ城”という名で呼ばれる程の偉容だった。


 ここまで大規模になったのは、とにもかくにも月までの圧倒的な遠さである。


 19万大隊王尺38万km。大量の魔力油を拭かし発射台魔方陣の絶大な魔法支援を受けても尚、到着には4日かかる。


 気がつけば25年前の魔法大戦時はせいぜい時速100~400大隊王尺200~800kmで飛ぶものが大半で、漸く最も速い飛行手段が音速に至るかどうかであった事を考えれば正に魔法学の空前絶後の進化速度、その絶頂をこの時人類は極めていたと言って良かった。

 

 山人ドワーフの鍛冶魔法で作られた外殻は羽毛の軽さと竜鱗に勝る堅さを持ち、森人エルフの魔法は船内環境を万全とし、小人の糧と薬は道中の魔女達の生命を満たし、魔法皇と魔法大司教達の知力強化による演算は万全の道程を導き出し、組合共和国の資金と通信技術が天空帝国を支え、体力自慢の獣人魔女が乗り込んだ。


 そして、遂に。


 ――――――――


 四日間の旅により月面に舞い降りたマポロ計画の三魔女を待ち受けていたのは、観測通りの砂漠の下から這い出してくる、銀色の肌を持つ宇宙魔族とその友として傍らに立つ、宙用羽鎧で真空から身を守った魔王国の崩壊から逃れてきた魔族達だった。


 これが、第三次魔法大戦の始まりであり……


 第三次魔法大戦終結を以て人族と魔族の恒久和平が結ばれるまでの、最初の一里塚であった。

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魔法世界の宇宙開発! 博元 裕央 @hiromoto-yuuou

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