2.大発見と各国の反応

 歴史を動かしたのは、国際魔方陣天文台であった。探知魔法と知覚強化魔法を複合的に組み合わせた魔方陣を用いた望遠鏡は、魔王国に対する大戦勝利の立役者であり今後の人類魔法文明の飛行魔法の利用増大の安全と更なる発展の為、空を研究する……そういう名目で作られたものであった。


 それは本来気象や浮遊島や魔族残党を観測監視研究する為のもので、星見は活用の想定外だったのだが……


 たまたまテストでそれを夜空に向けた時、事件が起こった。


 従来の探知魔法より遙かに遠くを探知できるようにした巨大魔法探知機の探知範囲を夜空の月に向けた途端、魔力感知が異常反応を示したのだ。


 それは過去類を見ない巨大魔方陣であったからこそ探知できた事で、地上に強い影響をもたらすものでは無かった。


 だが、想定される月と地上の距離で、この反応が出るという事は。


「月には莫大な、殆ど無尽蔵と言って良い魔力がある!」


 魔力を資源とする事で高度に発達した魔法文明にとって、それはあまりにもとてつもない衝撃だった。


 つまるところ空に浮かぶ月は、魔王国の土地とは比べ物にならない程の魅力的な新天地だったのである。


 諸国はその発見に沸き立ち、かつ色めき発った。


 魔類の残党が散在する治めるに難い旧魔王国領の土地より月の方が遙かに魅力的であり、また月への到達を目指すのは戦争のように大量に人が死ぬ事の無い紳士的な競争であると考えられた。


 そして何より、月の無尽蔵の魔力を手に入れられればその時点でその国が覇権国となり、争うまでも無く魔王国の支配と国際秩序も決定される。


 それ故に、各国は月を目指したのである。

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