1.当時の国際関係と国際魔方陣天文台の建造

 当時の人類世界には、以下の諸国が存在した。


 森林連合王国、山人ドワーフ親方国連邦、大草海単于国、組合ギルド共和国、天空帝国、魔法皇国の六カ国である。


 森林連合王国は魔力樹液を分泌する法樹を魔法の為の魔力源とする森人エルフと森に住む獣人達の二人の王を有する王国であり、山人ドワーフ親方国連邦は各地で魔炭・魔油・魔宝石・魔金属を鉱山から発掘する山人ドワーフの親方徒弟の支配制度からなる鉱山単位の連邦国家、大草海単于国は怪物を牧畜使役しそこから魔力資源を得る草原小人と草原獣人達の集まりであり、その時々で有力者が指導者である単于を持ち回る。


 そして組合ギルド共和国、天空帝国、魔法皇国が、最大人口を誇る間人ヒューマン達の国家群であった。


 組合ギルド共和国は大商人達の合議による都市国家の通商連合であり、天空帝国は最も飛行魔法を発達させそれを誇り国号とした新興の軍事国家、魔法皇国は飛行魔法開発より古い時代から魔法研究を行ってきた魔法使い達の学園と研究対象である魔法を崇拝する魔法教の神殿総本山が複合した、かつて勇者を生み出した神聖研究国家。


 これら三国家はそれぞれ資金力、軍事力と人口、魔法技術において間人ヒューマン以外の人類を主な人口とする国家に対して優越であったが、魔力資源に冠しては非間人ヒューマン三国に劣り、故に魔王国相手に共闘していた時は兎も角、魔王国の脅威が無くなった今、非間人ヒューマン三国に魔力資源を握られている状況は当然人類三国にとっては面白い状態では無かった。


 また、非間人ヒューマン三国においても、鉱山採掘で森に環境的な負荷を掛ける事から森林連合王国と山人ドワーフ親方国連邦の仲は良くなかった。


 そこに旧魔王国領土しょくみんちという巨大な土地パイをどう統治分割するのか、という結構な火種が投じられたのである。


 必然、一触即発の自体となった。


 だが、各国もそこで即座に戦争にいかないだけの理性は持っていた。等しく魔王国と戦った仲という意識もあり、そしてまた、二度の大戦で、戦というものがどれほど甚大な被害をもたらすかという事も骨身にしみていた。再度の大動員など、国家の大戦で負ったダメージを考えれば避けたい。緊張緩和を求めて外交が重ねられ……会議が進まず踊りまくる中、苦し紛れに幾つかの国際的協力によるプロジェクトがひねり出された。


 ……とりあえずのポーズでしかなかったその一つである、航空魔法発展の為の研究施設としての国際魔方陣天文台の建設が、歴史を大きく動かす事になる。

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