七夕の願い
月瀬
星に願いを
いつか星に願ったのは、彼のしあわせだった。
私は
私と彼は、雨の降る悲しい七夕の日に、病院で出会った。私たちは、七星病という、非常に稀な病気の患者同士で、趣味も似ていて、運命だと思った。
でも彼は、翌年の七夕の日に、私を置いて逝ってしまった。七星病は、運命の相手と出会った者のどちらかに死をもたらしてしまう、非常に残酷な病気なのだと、泣きじゃくる私に語る母の顔は、今でも忘れられない。
残されたのは僅かに彼の体温が残る病室のベッドと、彼の親類からの恨みの籠った視線。
それと、最後に彼が私に託した、ロケットペンダントのみだった。
―来年もその翌年も、僕は君に逢いに行く―
彼は私に、忘れられない呪いをくれた。その日私は、冥府でも彼に幸あれと、私に出来る最大の呪いを彼へ送り、夢現へと旅立った。
翌年の七夕。私は再び、彼と出会った。
「七織。ただいま。」
そう言って微笑む彼は驚く程に透明で、白い顔をしていた。
それから七夕になると、必ず彼は私の元に来てくれた。その幸せな時間だけを頼りに、私は日々を生きていた。
そして今年は、彼と出会ってから七度目の七夕。もう、私にはわかっていた。彼が毎年私の前に現れる理由を。
「
いつかの七夕のように、空には雨が降っている。
「七織、気付いてたんだね…僕が君のことが心配で成仏できずにいたことを…。」
彼の頬を一筋の雨が流れ落ちる。
きっともう、大丈夫。だから今日だけは、貴方の運命でいさせて欲しい。
その日から、彼は私の前に現れることは無くなったし、私も彼のことを考えなくなった。
それでも七夕には願ってしまう。彼の来世に幸あれと。
ある日の七夕。私は病院で、七星病の青年に出会った。''大丈夫。私が必ず、貴方を治してみせるから。''そういうとその青年は、嬉しそうに微笑んだ。
七夕の願い 月瀬 @tukise_
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