第35話
春と言ってもまだ肌寒さの残る日、中等部では卒業式が行われた。内部進学組がほとんどなので、別れの気分も盛り上がらない。
「で、当たって
真咲の問いに、「砕けるって最初から言うなよ」とぼやいてから、丞玖は言葉を継いだ。
「高校を卒業して、それでもまだ私が好きだったら、もう一度告白して。って、そう言われた」
中学卒業のタイミングで、丞玖は
「なあ、樋口はどんな女の子が好みなんだ? やっぱり日本人形みたいな」
丞玖が尋ねる。亡くなった母親のように色白で長い黒髪の。そう言いたいようだ。もしくは、あの女性のように。
真咲は
「そうだなあ。おっぱいの大きい人がいいかも」
しばらく沈黙した丞玖が、探るように聞き返す。
「麻美さん、みたいに?」
「うん。麻美さんみたいに」
冗談のつもりだったが、あながち嘘とも言い切れない。愛情深くて、強い人。あの時の
「お前なあ!」
がしっと、太い腕が首に回された。
「なに目覚めてるんだよ、このマザコン野郎が」
首を絞めながら、丞玖が
「……苦しい」
眩暈に似た
完
サウダージ ~氷霧に誘われし夜に~ 古村あきら @komura_akira
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