第27話
邦彦の妻になってからの雪絵は幸せそうだった。そして幸せであることへの不安を、時折り麻美に
雪絵の不安が
「ばちが当たったの。
雪絵は話してくれた。故郷に伝わる
雪深い里の神社には、村を守る神が祭られているのだという。巫女は神様の妻として
許嫁は二十歳になったとき、後に十代の候補がいる場合にのみ許嫁の任を解かれる。普通の娘として結婚も許されるのだ。
雪絵が生まれた時にも、次の年に生まれた従妹の華絵にも神託はあった。順番から言って巫女になるのは雪絵の筈だった。けれど古い巫女が亡くなったとき、村人は皆、雪絵ではなく従妹の華絵を推した。何故なら、華絵には明らかに巫女としての資質が備わっていたから。
人には見えないものを見、聞こえない筈の声を聞く。そんな華絵を、村人は神様の嫁にふさわしいと判断したのだ。
華絵は
「自分だけ幸せになろうとしたから、いけなかったの」
雪絵はそう言って泣いた。華絵を身代わりにして逃げたから、神様が怒っているのだと。
「麻美ちゃん。私が死んだら、この子をお願い」
雪絵の手を握り、麻美は黙って頷くしかなかった。
それから
生まれたばかりの赤ん坊を胸に抱き、静かに雪絵は旅立った。二十一歳だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます