第22話
まだ秋の終わりだというのに、そこはもう雪景色だった。純白の着物を
戸籍謄本に記載された雪絵の実家は、真咲の家からは遠く離れた北国にあった。連絡はしていない。自宅のどこを探しても、連絡先なんてものは出てこないだろう。住所だけが頼りだった。引っ越しているかもしれない。もう誰も住んでいないのかも知れない。そう思いながらも、真咲は何かに
同じ
祖父母の家を訪ねてみたい。丞玖にそう話した時、気は確かかと言われた。電話番号も分からない。そもそも、そこに住んでいるかも不明だ。「生きているかどうか……」と言いかけて、丞玖は口を
せめて手紙を出してからにしたらどうかと言われたが、真咲は待てなかった。母についての真実を知りたかった。いや違う。母に、会いたかった。
一緒に行くと言う丞玖を断って、今朝早く家を出てきた。麻美には何も言わずに。
ある古い日本家屋の前に立ち止まったとき、納屋のように見える建物から出てきた老人と目が合った。道を尋ねようとした真咲は
「……あの」
「ゆき……」
そう言いかけた老人は、こちらに歩み寄り、真咲の腕を
「真咲か?」
掠れた声でそう聞かれ、真咲は黙って頷いた。老人の顔には怒りに似た
「なんで戻って来た」
掴まれた腕の痛みと老人の険しい表情が、真咲を打ちのめした。走って逃げたかったが、ショックのあまり脚が動かない。連絡もなしに訪れたことで、歓迎されないかも知れないとは思っていたが、これほどまでに拒絶されるとは思わなかった。真咲は
手の甲にポツリと
顔を上げると、目の前に眼を赤くした老人の顔があった。
「よう来た。……よう帰って来んさった」
老人はむせぶように言って、真咲を抱き寄せた。
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