第16話
「はい……。ええ、異常なしでした。ご心配をお掛けして……いえいえ、とんでもない。こちらこそ。……はい。……はい。御免くださいませ」
電話を切った麻美が、困ったように笑いながら真咲を振り返った。
「及川さんが心配してくださってるの。申し訳ないって。検査結果が異状なしだったって言ったら、やっと安心してくれたみたい」
九月に入ってから。つまりは丞玖の田舎から戻って来てから、
「とりあえず異常がなくて良かったわ。でも、お父さんは年末まで帰れないらしいの。ごめんね」
麻美の顔色が悪いのが辛かった。相当心配をかけてしまったのだと思う。
「大丈夫だって言ったのに」
迷惑を掛けたと思うと、申し訳なさから不機嫌になってしまう。それが余計に悔しくて、真咲は麻美と目を合わせられなかった。七月初めに倒れたことも結局バレてしまい、久しぶりに叱られてしまった。
「心配かけて、ごめんなさい」
麻美に聞いてみたかった。亡くなった母のことを。どんな人だったのだろう。何故死んでしまったのだろう。けれど、言えなかった。麻美が悲しむような気がして、尋ねることは出来なかった。
何故だか胸の奥に、また冷たい痛みを感じた。
──おいで
か細い声が呼ぶ。
四畳半の小さな和室。色
脳のどこかが
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