第12話

 祭りは盛大なものだった。きらびやかな行列がり歩き、奇妙な衣装をまとった人々が躍りながら丘の上のやしろへと向かう。社の脇にしつらえられた舞台では、神楽かぐら奉納ほうのうされるのを見ることが出来た。雅楽の音階が混ざり合い、不思議な色をかもし出す。村中がき立っていた。

 真咲たちは、屋台で買ったタコ焼きや焼きそばを食べながらそれをながめ、子供のように綿あめを持ってそぞろ歩き、ヨーヨー釣りや射的しゃてきなど昔ながらの屋台を楽しんだ。未優は射的で見事に一等賞の品物を落とし、鉢巻をした店の親父を悔しがらせていた。

「お姉ちゃん美人やから、キーホルダーもオマケね。丞玖、ええなあ。紹介せえよ。で、そっちは誰。この人の弟さん?」

 聞かれて丞玖が「今年の贄」と答えると、親父はまじまじと真咲の顔を眺め「こりゃ今年は豊作やな」と笑った。恥ずかしくなって顔を伏せた真咲の肩に手を回し、丞玖が「そうだろ」と、何故か自慢げに言った。

 日が暮れるとあちこちに吊り下げられた提灯ちょうちんに灯が入り、村は幻想的ならぎを見せ始める。流れて来る音曲おんぎょくもまた、深い色合いに変化したように思えた。

 紫の地に大きな花をあしらった浴衣を着た未優を、エスコートするように丞玖が歩く。その後ろをついて歩きながら、真咲は今度こそ本当にお邪魔虫な気がして、少々手持無沙汰になりつつあった。

 夜に行われる儀式の準備がある為、八時には戻るように言われている。真咲は二人の邪魔をしないように一足先に宿へ帰ることにした。

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