第13話
唇に紅を差され、花嫁衣裳のような白
「綺麗やねえ」
着物を着せてくれた女性が、満足そうにそう呟く。
「十時や。そろそろ行くで」
入り口から声が掛かり、丞玖の祖母が頷いて真咲の手を取った。
廊下に用意された屋根のない
──
ふと、そんな歌が頭に浮かんだ。真咲が着ているのは
かつて婚姻は家と家とのもので、花嫁は相手の顔も知らずに
石造りの階段を上がり切ると、ほの暗い灯りの中に小さな社がぼんやりと浮かび上がった。昼間は神楽が催され賑やかであったその場所は今、しんと静まり返り、虫の鳴き声すら聞こえない。人々の息遣いが聞こえる程の静けさだった。
輿が停まったので降りようとした真咲を、誰かの手が止めた。小さな
「飲み」
知らない声に飲むよう促され、真咲は盃に口をつけた。酒は滑らかに喉を通り、胃袋へと流れて行く。一拍遅れて喉が熱くなり、身体の内部で熱が発生したように感じた。
「さあ、こっちへ」
手を取られ、輿を降りる。少し足元がふらついた。
木の感触の階段を裸足で踏み、開けられた扉を潜る。一段高くなったところに
「朝まで目え開けたらあかんよ」
その声を潮に、人の気配が遠ざかった。少し離れたところで
完全な闇が真咲を包んでいた。
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