2-1話 生、玉虫色
黒色と茶色と赤色とオレンジ色と黄色と緑と青と紫と灰色と白色と金色と銀色。
点々とした色の数々。
玉虫色のそれが目の前に広がっています。
母がいました。
「お母様この緑のあれはなんですか? と言っても、お母様が知っているとしたらびっくりするのですが。それで、どうしてここに?」
「はぁ、あんた、私が知るはずないでしょうに」
お母様は身振り手振りで私の異常さを押し付けてきます。
「お母様、プレゼンテーションではないのですから、そんな事されなくてもわかります」
「そう? あんたは相当なわからず屋だと思うのだけれどね。どうしてって? あんた、どうして船に乗ったんだい。あれほど乗るなと言ったのに」
「誕生日でしたし、お父様がお母様に内緒で釣りに行かないかって誘ってくれたからです、それに理由もなしに、ただ乗るなって、カエルだってもう少しまともなことを言います」
「そんなものけろけろ鳴くだけだろうさ、それにそれのせいであんたは嫌な目にあったじゃないか」
「どういうことです?」
「あんたが私の言うことに従わなかったからそうなったんじゃないか」
「お父様がなくなったのは私のせいだって言いたいんです! 意味がわかりません因果関係は皆無ですと何回も言っています!」
「別にそんな事は言っていないさ」
私は右手をそれに叩きつけました。
「ぺしん」という可愛げな音がこだましました。
わたしはハッとします。
黒い点3つに一人で話しかけていました。
「またです」と思いました。
いつも通りのくだらない変な空間です。
夢を見るときいつもこんなんです。
いろんなトラウマを押し付けてくるのです。
決定的なところで言うと
「はぁ」といつも通りため息を吐きました。
そうすると玉虫色のそれが私に迫ってきて、触手のように絡みついてきます。
といっても、そんなふうに感じるだけでして、実際のところがどうなのか分かりませんし。
すこしずつ周りがオレンジ色に明るくなっていきました。
熱くも寒くもないふわふわする感じです。
眼の前にオレンジの火がありました。
もくもくの黒い煙を出しながら大きくなって行くそれは、人々を怖がらせるのには十分なほどのものでした。
女の人と男の人の美声があたりに響いています。
どこかの言葉で歌われているそれは、内容こそ黒い箱のように分かりませんが、それが良いものではないと察せます。
私の足元には知らない血女が転がっていました。
目が合いました。
横からふらりとあらわれた白い女がバターナイフを手に持っています。
近くで倒れている女を刺し始めました。
嘲笑うように叫んで発狂しながら、ゆっくりと何度も何度も繰り返します。
また別の男が来ました。
足元に転がっている血濡れた女に、ゆらりとお散歩みたいに歩いて来ます。
目を閉じました。
ふわふわしたそれにくすぐられて、目が覚めました。
最悪の気分です。
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