第2話 出撃

僕は、自分の軍隊を見てこう言った。


「今回は、帝国と戦線を同じくする。我々の役目は遊撃である。目下の目標は敵の補給戦の分断にある。各々の奮戦に期待する。」


歓声が聞こえたが僕はそれを横目に壇上を降りあとは副官に任せた。


「レオ少尉。」


「どうかなさいましたか。隊長!」


「いや。あまり気張るな。それでは、すぐに疲れて敵の集中砲火に合うぞ。」


「ありがとうございます!隊長殿!」


彼は、あまり実践経験がない仕官候補生からの叩き上げの軍人だ。今回は初陣となる軍人のうちの1人だ。そして、今回私の右腕となる人だ。


「何か連絡はあるか?」


「いえ。特には。」


「分かった。では、定刻通り進軍を始める。それまでは休むように。」


僕は、コーヒーを片手にこの後のことを考えていた。


「副官。ご苦労。」


「いえ。これぐらいお安いご用です。」


副官がテントへと戻ってきた。


「どうかしたのですか?」


悩んでいることがバレてしまったようだ。

レオ少尉は頭にハテナを浮かべていた。


「そんなに分かりやすかったか?」


「いえ。これは、長年付き合ってきた友人としての感です。」


傭兵育成機関で出会ってこの方10年来の友人であるオスカーは能力は高いが感情的な性格であることが少し残念だ。


「僕の懸念を話そう。」


ーーーーーーーーー


定刻を迎え作戦の実行を宣言した。

本陣は既に放火がまじりあっていることだろう。


私たちは、飛行魔法で低空飛行をしている。


「隊長!前方1000mにて行軍する部隊を発見との報告!」


「戦力は?」


「陸上型戦艦を3隻と補給艦を多数とのことです。」


「分かった。第2、第3中隊は第1中隊の私とともに突撃!第4、第5中隊はオスカー少佐とともに遠距離攻撃!第6中隊はその支援に当たれ!」


「「「了解!」」」


私は、指示を出すとともに速度を上昇させ敵の補給艦隊へと肉薄して行った。


我々魔法航空部隊は魔法師のエリートの集団だ。

さらに、人間なのでそのサイズ故にレーダーに映りにくい。

そのために開発されたのが魔導反応レーダーだ。

魔法を使用するためには必ずと言っていいほど、魔法特有の波が発生する。

それを感知するためにそのようなレーダーが作られた。


「500m!敵の放火があるぞ!エンゲージ!」


我々は、散らばり敵の対空砲火を散らばらせるために散開した。

上空からの射撃は一番効率がいい。だがしかし、敵もそれを予想するゆえに上空の対空砲火は増設する。


しかし、こちらはヒットアンドアウェイに徹することで敵の集中を散漫させる。


「敵のシールドを狙え!」


私は、敵のシールド発生させる機関を狙うように指示。

そして、一つ破壊することで有効打が増える。


「一つ破壊!」


「オスカー!」


私の通信とともに敵の陸上戦艦が爆発した。

後方からの狙撃だ。


「このまま続け!」


それからは、私たちの圧勝だった。

敵の戦力が9割を撃墜または戦闘不能になるころには敵の組織的抵抗はなくなり補給部隊は壊滅した。


帰路に就いた私たちは、それこそ戦勝ムードの中速報が届いた。


「大敗した?」


私たちは、仮設テントの中でこれからのことを考える。


「どうやら、敵の中に強敵がいたようです。現在遅滞戦闘を行っているようで、突破されるのも時間の問題です。」


レオ少尉の報告により我々は頭を悩ませた。


「敵国の後ろを回るのはいかがですか。我々のスピードをもってすれば反対側の中立国まで逃げられるかと。」


オスカー少佐の意見には賛成だが。


「それは、可能だが。そこからでは、本国に帰ることが難しい。」


私は、その意見を一蹴した。


「ベル大尉。そちらはどうだ?」


私は、技術士官のベル大尉を呼び出した。

彼には現在我々が鹵獲した敵の陸上戦艦を解析してもらいつかるように復元してもらっている。


「はい!現在のところ約7割解析復元は終了していてもうすぐ運用が出来るところまで来ております。」


「それは、行幸です!」


これで我々の体力の温存につながる。


「どうしますか?」


僕は、少しの思考の後に口を動かした。


「まずは、目標だ。」


地図に指をさして話始めた。


「今いるのは、帝国と敵国の国境沿い。そして、目標は、本国に帰ること。」


「それは、同感です。この戦に価値はありません。我々は勝利の請負人ではありません。雇われた兵です。たかがバイトです。」


「オスカー少佐。それは、言いすぎです。」


レオ少尉はオスカーをなだめた。


「続けるぞ。」


周りの意識を少し引き締めさせた。


「本国の場所は、ここから南の位置にある。つまるところ中立国の南の位置だ。さらに、中立国からでは、我々の国へ入ることが出来ない。」


仲が悪いわけではない。簡単に言うと、平和を唱える国と戦争に人を送る国だ。そこに壁があるのは必然だ。


「かと言って、帝国はこの戦争で大敗している。撤退の路線も敵国に堕ちていると考えていいだろう。」


皆もうなずいている。実際に我々の撤退するルートにはすでに敵国の部隊が展開していた。


「では、向かう場所は、敵国に向かうしかない。北側は高い山脈が連なっているからな。」


つまるところ敵の軍隊の後ろを通って、中立国と敵国の間を通って南に抜けるしかない。


そこには更なる問題がある。


「それでは、この国へ貸しを作りかねません。」


「それが、問題だ。」


そこは、スメラギ家が統治するソル皇国。


「何か問題があるのですか?」


レオ少尉が質問してきた。ベル大尉も同じ疑問を持っている。

僕が、口ごもっているとオスカーが代わりに答えてくれた。


「アルトに惚れている女が現在そこの女皇で彼女が欲しているということだ。」


皆がこっちを見ている。冷たい目で。


「ついでに言うと、その彼女とアルトは一夜を共にしている。」


「それを言うな!」


他の者たちは口を大きく開けている。


「その時、出来た子供今何歳だっけ?」


「あーもう!」


他の者達からはさらに冷ややかな目で見られている。


「分かった。ソル皇国に向かおう。」


僕は、意を決した。















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