浮かぶ日までの待ち合わせ
架空生物の面影
浮かぶ日までの待ち合わせ
空白に飴玉ひとつ「場所取りは任せてね」って置いててくれた
カーテンの裏で手招く夜がいて背中を浸す朝の日課
泣き止んだあの日の月が真ん丸になったらパンに乗せてチーズも
靴先の詰まったティッシュが邪魔なこと他の人には言えないままで
真っ白な壁を通った影たちの正体は誰も知らないんだね
少しずつ分厚くなった皮膚はまだ奥の心を守るに弱い
花束は猫がくふんと咳く度に増えてみんなでポッケを逃げて
太陽を浴びる猫背の内側で昨日の僕をこっそり連れてる
床につく尾ひれが邪魔と言うけれどいつでもあとを追えるから好き
手の中は今日何もなく見えていてこれまでの君が僕に笑う
吸い込んだ小魚たちが泳ぐからあれから肺がくすぐったくて
落ちていた錆を欲しがる膝小僧 傷はどんなに変身するの?
一昨日に日だまりをすくい口づけたあの子に似てるくらげが揺れる
明日着るつもりで干した抜け殻を町で見かけた知らない顔の
あの頃に定規を当てた物はもう溶けてピンクの水になって
お腹からはみ出て落ちた亡霊を犬が舐めてるアイスみたいに
かさ張ったカバンの隅に本当は見せたいものが身をひそめてる
石鹸とお風呂に入り泡ぶくになった僕らは分裂したて
水たまり シーラカンスが顔を出し誘い込んでる静かの夜へ
君の目に飛び込んでから十年間僕は鰓と呼吸をしてる
浮かぶ日までの待ち合わせ 架空生物の面影 @coelacanthus
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