ワールシュタット作戦//分裂
……………………
──ワールシュタット作戦//分裂
「ソロモン
ファティマが面接に訪れたこともあるMAGの本社ビルで経営幹部がそう語る。
「エデン統合軍はウェストサイドセクター・ツーでの敗北以降敗北が続いています。我々も多くの戦力を失いました」
「では、どうしろと?」
経営幹部の報告にソロモンがそう尋ねる。
「我々の側で解決できる問題ではありません。我々と契約しているアンドロポフ閣下にどうにかしていただかなくては」
「ふうむ……」
MAGはドミトリーについている。ソロモンはドミトリーの曾孫であり、これまでドミトリーの政治的な力による恩恵を受けていたのだから当然と言えるだろう。
しかし、ドミトリーが不利になっていくのに焦りが見られた。
「ソロモン
「分かった」
会議室から出てプライバシーモードでソロモンがドミトリーからの連絡を受ける。
「ドミトリー。何か?」
『ソロモン。やってほしい
「聞きましょう」
ドミトリーが告げるのにソロモンがそう返した。
『ゼレール元帥を暗殺してほしい。テヘーロがゼレール元帥を解任するならば味方になると言っている。だが、この状況で彼を解任などすればエデン統合軍は我々から離れてしまうだろう』
「だから暗殺を、と?」
『その通りだ。我々の仕業だと分からないように殺してほしい。できるか?』
「努力します」
『頼んだぞ』
こうしてMAGはゼレール元帥暗殺を引き受けた。
だが、この情報はMAGの経営幹部に接触しているアリスから漏れることになる。
「アリスからの情報だ。MAGが国防大臣のゼレール元帥の暗殺を企てている」
「MAGの独断ですか?」
ジェーンが知らせるのにファティマが尋ねた。
「いいや。ドミトリーからの依頼だ。ドミトリーはゼレール元帥を切り捨てるつもりのようだな。どうも統合特殊作戦コマンド司令官のクリスティーナ・テヘーロ中将と取引したようだ」
「取引の内容は?」
「ゼレール元帥を解任し、クリスティーナを新しく軍のトップにする。その代わりに統合特殊作戦コマンド司令官はドミトリーの側に就くということだろうな」
「なるほど。しかし、それだけと厄介な統合特殊作戦コマンドが国家非常事態委員会と合流してしまいますね……」
「ああ。あまりいい状況ではない」
このままだとドミトリーの国家非常事態委員会とクリスティーナの統合特殊作戦コマンドが合流し、その結果として敵勢力が強化されてしまう。
「では、ゼレール元帥にドミトリーが暗殺を企てていることを通知しましょう。それによってゼレール元帥とドミトリーを争わせます。敵を分裂させ、逆に敵の勢力を削ぐというわけです」
「分かった。では、ゼレール元帥への接触を試みよう」
「お願いします」
そして、ファティマの要請でジェーンがゼレール元帥への接触を試みた。
いくつかの繋がりを使用してゼレール元帥に糸が繋がる。
「ゼレール元帥と連絡が取れる。誰が伝える?」
「私が。繋げてください」
「了解だ」
そして、ジェーンが手に入れたゼレール元帥への通信をファティマに繋ぐ。
「ゼレール元帥ですね?」
『匿名通信とは誰だ?』
「デモン・レギオンの司令官であるファティマ・アルハザードです。あなたに警告するために連絡しました」
『警告だと?』
ファティマの言葉にゼレール元帥が訝しむ。
「ドミトリーがMAGにあなたの暗殺を命じています。恐らくは統合特殊作戦コマンド司令官クリスティーナ・テヘーロ中将と手を組むためです。警戒してください」
『何を馬鹿なことを。私とドミトリーは60年以上の付き合いだ。私と彼は同志だ。彼が私を裏切るなどあり得ない』
「そのドミトリーは今や大変な危機にあるのです。あなたのことを考えているような余裕もないでしょう。彼は自分が生き残るためならばかつての友人を切り捨てることぐらいはやりますよ」
『くだらん。そうやって我々を仲違いさせるつもりか?』
「信じなければあなたが死ぬだけです」
『そうか。そんなことは──』
そこで銃声がけたたましくい響いた。
『何事だ!?』
『攻撃です、閣下! 我々は攻撃されています!』
『どこのどいつだ!?』
通信の向こうでゼレール元帥が部下に叫んでいるのが聞こえる。
『MAGです! 恐らくはウィッチハント部隊!』
『何だと……。まさか……』
ゼレール元帥を襲撃したのはMAGの精鋭ウィッチハン部隊だった。
「信じていただけましたか?」
『ああ。信じよう。それで私にどうしろと言うのだ?』
「生き延びてください。そし我々に合流することを勧めます」
『それしか選択肢はなさそうだな』
「こちらから迎えを送ります。その
『分かった。それまで持たせる!』
ゼレール元帥からの通信はそこで終了。
「グレースさん。バーゲスト・アサルトを動員します。私も同行しますのでゼレール元帥の保護のために出撃準備を」
「分かった」
バーゲスト・アサルトが動員され、ゼレール元帥の保護に向かう。ファティマも久しぶりに前線に向かうことになった。
バーゲスト・アサルト所属のナイトゥジャー汎用輸送機に乗り込み、そしてゼレール元帥から送られてきた位置に向けて飛行。
現在エデンの航空優勢はどちらも握っておらず、デモン・レギオンでも空を飛行して空中機動することができた。
『ハーピーより愉快な仲間へ。
「了解」
ナイトゥジャー汎用輸送機を操縦するハーピーが報告し、グレースが頷く。
「現地上空を飛行中のドローンからの映像。ゼレール元帥はこの別荘に立て籠もっている。警備のための人員は1個歩兵小隊」
「敵は?」
「バルチャー攻撃機2機を上空援護機として有する空中機動部隊で規模は1個歩兵中隊。これはウィッチハント部隊という情報。ヘカトンケイル強襲重装殻に似たアーマードスーツも存在している」
「バルチャー攻撃機をまずは叩きましょう」
「ええ。それから地上部隊を」
ファティマたちは段取りを決めて作戦空域に侵入。それから
『敵機捕捉! ドッグファイトだ!』
上空のバルチャー攻撃機にファティマたちが乗ったナイトゥジャー汎用輸送機が攻撃を仕掛けた。
『攻撃を受けた! 敵だ!』
もう1機のバルチャー攻撃機は回避運動を行いながら自身が装備している
『未確認の物体が向かって来る!』
『未確認とは何だ!?』
しかし、そこで赤いエネルギーブレード──“赤竜”が飛来し、バルチャー攻撃機のコックピットを貫き、反重力エンジンを破壊して撃墜。
「オーケー。これで着陸できるはずですよ」
「ハーピー。
ファティマが言い、グレースが命じる。
ファティマたちを乗せたナイトゥジャー汎用輸送機は降下地点の敵に向けてロケット弾と機関砲弾を叩き込むとファティマたちを降下させた。
……………………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます