解放への道//情報収集

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 ──解放への道//情報収集



 キャスパリーグとグレースはファティマの求めに応じて現れた。


「キャスパリーグさん。密輸ネットワークを使えばこのインディゴ・ファイブ情報基地のどの当たりまで侵入できるでしょうか?」


「ふむ。ある程度のところまでいけるっすよ。お望みなら基地まで何としてでも送り届けることもできるっす」


「了解です。では、お願いします」


 ファティマは続いてグレースの方を見る。


「グレースさん。隠密ステルスとコンピューターに詳しいバーゲスト・アサルトの隊員の方を貸してくれませんか? それが必要なのです」


「分かった。エキドナを貸すけど私も同行する」


「分かりました。お願いします」


 ファティマはふたりの承諾を取ると作戦会議を始めた。


「作戦目標はインディゴ・ファイブ情報基地のデータサーバー。ここに近々行われるMAGの暗殺作戦についての情報があります。それを得て、対策を取らなければなりません」


 作戦目標はインディゴ・ファイブ情報基地。そこにあるデータサーバー。


「今回は全く侵入に気づかれないように一切の交戦を禁止します。殺すのも殺されるのもなしです。侵入が発覚すれば計画は変更されますから」


 重要なのは侵入を察知されないことだ。死体や行方不明者が出ればゲヘナ軍政府側は侵入に気づき、MAGは情報を盗まれたとして計画を変更してしまう。そうなれば侵入した意味は無に帰す。


「よって動員する戦力は最小限。正面切ってドンパチする気はないですし、そうなったら作戦は失敗です。非常時には逃げの一手で行きましょう。少数の部隊ならば機動性にも問題ありません」


「同意する」


 ファティマがそう締めくくるのにグレースが頷いた。


「では、キャスパリーグさんの密輸ネットワークを利用し、インディゴ・ファイブ情報基地に侵入。情報を盗んだら気づかれずに脱出です。準備を!」


 ファティマの求めでこの戦時中でも密輸を続けているキャスパリーグがゲヘナ軍政府支配地域に入ることのできる車両を準備。


「今回は一緒に仕事ビズをやることになったね」


「よろしくです、エキドナさん」


 バーゲスト・アサルののエキドナも合流。


「では、始めましょう」


「乗り込むっす!」


 キャスパリーグの用意した車両にファティマたちは乗り込み、インディゴ・ファイブ情報基地へと向かう。


「警備が厳重になっていますね」


「けど、抜け穴はあるってわけです」


 インディゴ・ファイブ情報基地までは特に問題もなく進めた。ゲヘナ軍政府は警戒態勢を強化していたが、元が汚職軍人ばかりであったことを考えればその警備に穴はある。


 それはゲヘナ軍政府長官がフリードリヒからルーカスに変わっても劇的に変わるものではない。そもそも人材がいないのだから。


「そろそろインディゴ・ファイブ情報基地の検問チェックポイントです。警戒してください」


「了解」


 ファティマが指示を出し、車両がインディゴ・ファイブ情報基地のゲート前に進む。


「止まれ!」


 検問チェックポイントの兵士が車両を呼び止めて運転席にいるキャスパリーグを見てにやりと笑った。


「おい。通行料だぜ、キャスパリーグ」


「あいよ。これでいいか?」


「オーケー。行け」


 キャスパリーグのおかげで小遣い稼ぎをしている汚職軍人はあっさりと買収されて検問チェックポイントを通過させた。


「到着っすよ」


「ここからは慎重に。外科手術のように、ですね」


 キャスパリーグが合図し、ファティマたちが降車してインディゴ・ファイブ情報基地内に侵入する。投影型熱光学迷彩を使用して、ファティマたちは密かに基地施設内に侵入し、事前に調べおいたサーバー室を目指した。


「サマエルちゃん。念のために通信妨害をお願いできますか?」


「うん。分かったよ」


 ファティマの求めでサマエルがゲヘナ軍政府の通信妨害を実施し、基地警備部隊の通信が妨害される。


「オーケーです。ですが、殺しはなしです。いいですね?」


「ええ」


「では」


 ファティマたちは前進を再開し、敵との交戦を避けてサーバー室を目指す。投影型熱光学迷彩をフルに活用し、さらにはサマエルによる無人警備システムの無力化なども組み合わせて瞬く間にサーバー室に迫った。


「ここです。目的のサーバー室ですよ」


「電子ロック。どうする?」


「アリスさんからIDを調達してもらっています。それを使いますよ」


 サマエルに強引にハックさせて突破しても良かったが、不審なログが残ると不味い。ここはアリスが調達したIDを使ってサーバー室に侵入した。


「エキドナさん。後はお任せしますよ。我々は警戒を」


「了解」


 電子機器に詳しいエキドナがサーバー室にあるいくつもの高度軍用グレードのサーバーにアクセスしてデータをダウンロードし始める。


「お姉さん。警備はまだ気づいてないよ」


「オーケーです。まだまだ時間がかかりますからね。交戦は絶対に避けなければいけない以上、敵が来たらできることは皆無です」


 サマエルの報告にファティマがそう言う。


「ダウンロード完了。情報を手に入れたぞ」


 そこでエキドナが報告。


「脱出しましょう。静かに」


「お姉さん。敵の警備が不審に思って捜索を始めてる。どうしよう……?」


「逃げるが勝ちです。急いで脱出を!」


 サマエルの報告にファティマがそう言って脱兎のごとくインディゴ・ファイブ情報基地からの脱出を始める。


 投影型熱光学迷彩を使用し、インディゴ・ファイブ情報基地内を進む。


「そっちはどうだ!」


「無人警備システムがやはり停止してる。何かしらの障害のようだ」


 ゲヘナ軍政府の軍人たちがファティマたちの進む方向に現れて停止している無人警備システムの点検を始めた。


「ダメだ。ここに問題はない。中央管制室に行こう」


「ああ」


 だが、ゲヘナ軍政府の軍人たちは去り、再び進行方向が開ける。


「今のうちですよ」


「ええ」


 ファティマたちは大急ぎでインディゴ・ファイブ情報基地から脱出。


「キャスパリーグさん、出してください!」


「あいよ!」


 車両に乗り込んだファティマたちがインディゴ・ファイブ情報基地から逃げだした。


「情報は暗号化されてますか?」


「されているが、そこまで高度な暗号じゃない。解読可能だ」


「それはいいニュースです。これから拠点に戻って早速解読しましょう」


 ファティマたちは拠点に急ぎ、そこで暗号を解読してMAGが計画している暗殺計画についての情報を得た。


「暗殺計画について分かりました。まず暗殺計画は間違いなく行われるということ。そして、暗殺対象は私はジェーンさんたちではありませんでした」


「狙われているのは誰だ?」


 そう告げるファティマにジェーンが尋ねる。


「シシーリアさんです。彼女が狙われています」


……………………

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