ゲヘナ・リボルト//エデン社会主義党

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 ──ゲヘナ・リボルト//エデン社会主義党



 エデンにおける唯一の政党であり独裁体制を敷くエデン社会主義党。


「これは軍の失態でしょう!」


 その党大会にて批難の声を上げるのはトロイカ体制の一角であるアデル・ダルランだ。急進的な改革派閥の指導者として知られる彼女は国防大臣ギャスパー・ゼレール元帥を睨みならそう叫んだ。


「ゲヘナ軍政府は大敗を喫しました! それは間違いありませんね、ゼレール元帥?」


「起きたのは反乱勢力との小競り合いに過ぎない。大敗とは過剰な表現で事実を歪めていると言わざるを得えないだろう」


 アデルが問うのにゼレール元帥がそう返す。


「そうですか? 少なくとも死傷者は2万人以上で大規模な基地を占領されました。そして未だ奪還できていない。それでも小競り合いだと?」


 アデルの指摘にゼレール元帥が黙り込んだ。


「そしてさらに調べたところによれば現地で契約を結んでた民間軍事会社PMSCであるMAGは適切な装備を保有しておらず、契約を履行できていなかったということです。これはMAGのみならず、MAGを増長させた政策にも問題があります!」


 アデルがそう批判の声を重ねる。


民間軍事会社PMSCにあまりの多くをゆだね過ぎているのです。民間軍事会社PMSCには自浄機能がなく、政府に対して過大請求を続け、その中身は汚職軍人というプロ意識のない人間ばかり」


 アデルは民間軍事会社PMSCを批判する意見を述べ立てる。


「ゼレール元帥は国防大臣として今の間違った政策を押し進めた。その結果として今のような民間軍事会社PMSCによる軍の弱体化を招いた。すぐにでもゼレール元帥は辞任し、政策を改めるべきです!」


 ゼレール元帥はトロイカ体制の一角であるドミトリーのバックであり、ゼレール元帥の失脚は彼にも影響する。


 アデルはそれを分かった上でゼレール元帥を避難していた。


「責任はゼレール元帥にはない」


 そこでそう発言するのはドミトリーだ。


 ドミトリー・アンドロポフは超高度延命措置で200年以上今の地位にいる。


「エデンからゲヘナ軍政府に対する支援が不足しているのが今回の敗北の原因だ。もっと多くの武器と兵士を送るべきだったのだ。それが一部のエデン社会主義党の党員によって妨げられた」


 ドミトリーはアデルを見ながらそう語る。


「その人間は民間軍事会社PMSCを批判するためにあえてゲヘナ軍政府に対する支援を妨害したと思われる。民間軍事会社PMSCはエデン統合軍の将兵と同様に指揮が高く、プロだと言うのに」


 ドミトリーが嘆くように発言すると賛同する党員たちの声が響く。


「そして何より民間軍事会社PMSCの社員たちもまたエデンの同志たちなのだ。我々は同志たちを助けなければならない。民間軍事会社PMSCであることなどは全く関係がないのである」


 ドミトリーがそう言うと彼は拍手を浴びた。


「同志レナト。あなたはどう思われますか?」


「自分としましては中長期的な視線で見ることが必要であると思いますな。民間軍事会社PMSCだから無能だとか民間軍事会社PMSCでも有能という結論を出すにはあまりにも速いかと」


 アデルが尋ねるのにレナト・ファリナッチがそうあいまいに答える。


民間軍事会社PMSCはエデン統合軍を骨抜きにし、正常な軍事作戦を行うことを妨げている。これは何としても回渇すべき案件であるjと考えます。我々は盗人を同志とは言わないのです」


「何だ、その発言は!」


 アデルはそう言い、様々な声が飛び交う。


 エデン社会主義党は明確に権力闘争の状態に入った。


 トロイカ体制の指導者たちは敵対し、お互いを蹴り落とそうとしている。


「これまでのゲヘナ軍政府の敗北について理解するためにゲヘナ軍政府長官のフリードリヒ・ヴォルフ上級大将を党大会に招集します」


 そして、失敗続きのゲヘナ軍政府長官であるフリードリヒ・ヴォルフがエデン社会主義党の党大会に呼び出された。


「ヴォルフ上級大将。ゲヘナ軍政府はどうして敗戦を続けているのですか? 原因は何なのですか? ゲヘナ軍政府長官として責任を持って説明してください」


「はい、同志。私はゲヘナ軍政府長官として厳格にゲヘナにおける軍政を行ってきました。その上で説明します。ゲヘナ軍政府が面している問題について大勢が間違った認識であるということを」


 アデルが尋ねるのにフリードリヒそう言った。


「今、ゲヘナ軍政府が直面しているのは労働者のデモや一部の反政府勢力によるテロなどではないのです。戦争です。我々はゲヘナにおける一大勢力との戦争に突入しているのです!」


 フリードリヒが叫ぶ。


「全くもってその認識がエデンには欠如しています。今は戦時だと認識すべきなのです。戦時において相応しいように団結し、そして全力を挙げて敵と戦うべきです」


「戦争だというのですね?」


「そうです。戦争です。これは背信者たちによる背信者戦争です」


 フリードリヒは党大会でそう言った。


 それから党大会は紛糾し、民間軍事会社PMSCの在り方や戦争の戦い方を巡って大揉めしたが具体的な結論は得られなかった。


「ドミトリー。正直に言ってMAGの状況はよくない。失敗が続いている。私としても庇いきれない。まだアデルに批判されるかもしれない」


「アデル。全く忌々しき女だ。新しいことは必ず成功すると思い込んでいる。どこまでも愚かな女!」


 ゼレール元帥が告げるのにドミトリーが呻く。


「しかし、これまでのようにMAGに契約を回して、こちらの大部隊を展開させることはできないのか? そうすれば戦争は終結するし、大部隊を展開させれば勝利だっていくつか得られることだろう」


「それは難しい。MAGが唯一の最大勢力であった時代は終わったのだ。今やレナトがジェリコのバックに付き、ジェリコが勢力を伸ばし続けている。前のようにMAGだけが党幹部の庇護を受けているわけではないのだ」


「レナトも無能だな。こっちの足を引っ張りおってからに」


「しかし、こちらとしてもMAGが大部隊を展開できるように便宜は図るつもりだ。ソロモンとも話し合っておこう。だが、我々の戦場はゲヘナひとつだけでないことは認識しておくべきだ」


「どういうことだ?」


「分かるだろう。レナトは何故今になってジェリコのバックについた?」


 ドミトリーが尋ねるのにゼレール元帥がそう指摘した。


「まさかクーデターの可能性があると?」


「ある。アデルは国家保安委員会のシー・ヤンを味方に付いている。そして、国家保安委員会の傘下には特殊作戦部隊がおり、それらはエデンにも展開しているのだ。それらが行動を起こせば」


「確かに不味いな。MAGを全てゲヘナに投じるわけにはいかないか」


「そうだ。だから、今はゲヘナで戦いながらも、エデンで警戒すべきだ。裏切者の動きについて」


 ドミトリーにゼレール元帥がそう言ったのだった。


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