絶好の強盗日和//おぞましい事実
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──絶好の強盗日和//おぞましい事実
ファティマとサマエルは装甲トラックに積み込まれたグリゴリ戦線の生物化学兵器をソドムに売り渡すための取引、その護衛を務めていた。
「流石にもう襲撃はなさそうです」
ファティマはサマエルが傍受している通信を聞きながらそう言う。
「そうだといいのですが」
シシーリアはそう言いながらソドム支配地域に入った。
ソドム支配地域で指定された倉庫へと向かう。
「ようこそ、シシーリアさん」
「ええ、エルダーさん」
シシーリアたちを出迎えたのはエルダーだ。
「例の商品は?」
「こちらに」
エルダーが尋ねるのにシシーリアが装甲トラックに積み込まれた生物化学兵器を示す。インナーサークルが護衛しているそれをエルダーの部下が確認。
「間違いないようです」
「では、予定通りの金額をお支払いしておきますね」
「その前にこの生物化学兵器を誰に売り渡すつもりかお聞きしても?」
「詳細は教えられません。ですが、あなた方に敵対する勢力に売却する予定はないので安心してください」
「分かりました」
「では」
エルダーは生物化学兵器を引き取って去った。
「さて、これからやるべきことはまたクレイモア空中突撃旅団に襲撃されることがないようにすることです」
「どのように?」
「こちらが把握しているゲヘナ軍政府の
生物化学兵器は持っていればゲヘナ軍政府から目の仇にされる呪いのアイテムだ。それがなくなったことをゲヘナ軍政府に知らせなければならない。
それからファティマたちグリゴリ戦線の拠点に戻った。
「武器弾薬は十分すぎるほど補充できました。これでこれからも戦うことができます。あなたのおかげですよ、ファティマさん、サマエルさん」
「いえいえ。皆さんが戦われたからですよ」
ファティマはそう謙遜しておいた。
「ファティマさん。デモン・レギオンが行動を起こされるのであれば我々は喜んで力を貸します。約束しますよ。ともにエデンとエリュシオンを打ち倒しましょう」
「ええ」
シシーリアにそういう約束を取り付けてからファティマはフォー・ホースメン支配地域に戻ろうとした。
「お姉さん」
だが、そこでサマエルが声を上げる。
「どうしました?」
「あの、せっかくアヴァロン・リカバリーがあるところに来たから検査を受けていかない……? あの博士もお姉さんに研究に協力してほしいって言っていたから……」
「そうですね。そうしましょう」
サマエルの提案でファティマたちはアヴァロン・リカバリーの研究施設へ。
「ようこそ、ファティマさん」
レガソフ博士自身がファティマを出迎えた。
「あれから何かわかりましたか?」
「いえ。残念ながら未だ何も。検査に協力していただけますか?」
「もちろんです」
ファティマはレガソフ博士の求めに応じて検査室に入り、検査を受ける。
「ファティマ。今回の検査結果の分析は私が担当するよ」
「カーター先生。お願いしますね」
フォー・ホースメンの軍医ミアが客員研究員としてアヴァロン・リカバリーを訪れており、ファティマのデータの分析に当たった。
そして、数時間後ファティマが呼び出される。
「何か分かりましたか?」
「……ああ。分かった。我々が思い違いをしていたということがね」
「え?」
ミアが重々しく口を開くのにファティマが首を傾げる。
「君の体内のテリオン粒子濃度は上昇している。そして今回の精密検査で君の体内のテリオン粒子も他と同様に君の体を傷つけていると分かったんだ」
「で、でも、先生たちは健康そのものだって……」
「そうなんだ。そこが重要だ」
焦るファティマにミアがゆっくりと告げ始める。
「テリオン粒子は君の体を傷つけている。君の体は少しずつ朽ち始めている。だが、まるで自作自演のように君の体内のテリオン粒子は君の体内で自分たちが破壊した細胞の役割と果たしているんだ」
「それはどういう……」
「君の体は徐々にテリオン粒子へと置き換わっているということだ」
「そんな」
ファティマがミアの言葉に愕然とする。
「今は大丈夫だ。テリオン粒子が自分たちが破壊した細胞の役割を果たしている。問題は君の体の全てがテリオン粒子へと置き換わってしまった場合だ」
「その場合、どうなるのですか……?」
「恐らくは死ぬ」
ミアはそうファティマに予告した。
「もっと早く見つけられていたらと後悔するばかりだ。しかし、仮にこれを初期の段階で見つけられも結果は変わらなかっただろう」
「そう、ですね。残された時間は?」
「今のペースで浸食が続くのであれば……半年」
ファティマの問いにミアが余命を宣告した。
「カーター先生。エデンとエリュシオンには進んだ医療技術があるのですよね?」
「あるだろう。テリオン粒子の研究についてはエリュシオンが詳しいはずだ。だが、君はまさか……」
ミアの表情が驚きに変わっていく。
「半年でエデンとエリュシオンを落とします」
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