絶好の強盗日和//生物化学兵器
……………………
──絶好の強盗日和//生物化学兵器
ファティマたちは次に生物化学兵器をどのように運用するかを話し合った。
「タンゴ・シックス基地に向けて投下し、敵戦力を撃滅します」
イズラエルがそう説明する。
「我々が利用している運送会社の宅配ドローンを使用して基地に生物化学兵器を使用。それによって敵戦力の殲滅を目指します」
宅配ドローンは大型の家具などを輸送するためのもので生物化学兵器のドラム缶も同様に輸送可能であった。
「また、この生物化学兵器について調査しましたが、この生物化学兵器は水溶性でかつ呼吸のみからの影響となります。つまり、生物化学兵器としては非常に扱いやすいということです」
この生物化学兵器は水だけで除染でき、ガスマスクを付けるだけで影響を避けられる。これより面倒な生物化学兵器は山ほどある。
「我々がこれを使用しても我々の側に出る損害は僅かでしょう」
「いい知らせです。遠慮なく使用することができますね」
「ええ。我々の戦いを有利にすることでしょう」
シシーリアが頷、イズラエルがそう結論した。
「生物化学兵器の使用、ですか。どうにも不安ですね」
「そうですね。銃弾で殺すのとはわけが違います。これは敵による無慈悲な報復を呼ぶかもしれません」
ファティマが渋い顔をするのにシシーリアがそう言った。
「残酷で大量に人が殺される。銃も広い意味で見れば同じことですが、生物化学兵器にはまた別種のものがある。これもまた変な話ですが」
「戦争という究極の非人道的な行いの中で人道を求めるのはどうなのでしょうね」
ファティマとシシーリアはそのような言葉を交わしながら攻撃開始を待った。
『スネーク・ゼロ・ワンより地上部隊へ。間もなく爆弾を投下する』
宅配ドローンは基地に荷物を届ける運送会社のIDに偽装している。
そして、タンゴ・シックス基地に生物化学兵器を投下。
「なんだ!?」
基地上空を飛びことを許可されていたドローンからの生物化学兵器による攻撃。
辺り一面に透明な死が撒き散らされた。
「く、苦し……」
「ガスだ! 防護装備を急いで装備しろ!」
タンゴ・シックス基地のジェリコ部隊が混乱しながらも対応しようと急ぐ。
「シシーリアさん。敵は大混乱ですよ」
「いいですね。では、仕掛けましょう!」
ファティマたちは装甲トラックでタンゴ・シックス基地に突入。装甲トラックはさらにテクニカルによって
HMG-50重機関銃などをマウントしたテクニカルがタンゴ・シックス基地に突入し、銃を乱射する。ガス攻撃で混乱状態にあったジェリコのコントラクターたちが次々に射殺されてゆき、死体が積み重なる。
「殺せ! ゲヘナ軍政府の犬を殺せ!」
そしてCR-47自動小銃を握ったグリゴリ戦線の兵士たちも基地に飛び込み虐殺の限りを尽くす。ジェリコのコントラクターたちはMTAR-89自動小銃などで応戦しようとするも六に応戦できていない。
だが、ジェリコとて訓練された
『チャリオット・ゼロ・ワンより各機。応戦せよ。グリゴリ戦線のクズどもを殺せ』
『了解』
「うわ──」
「怯むな! 進め!」
テクニカルがロケット弾で吹き飛ばされ、歩兵が機関銃に薙ぎ倒される。
「さあ、
「分かったよ」
ここでファティマたちが参戦。
サマエルが通信妨害を実行する中、防護装備を身に着けたファティマが“赤竜”とクラウンシールドを展開してアーマードスーツ部隊に迫る。
『チャリオット・ゼロ・ワンより各機。脅威となる目標を最優先で排除しろ』
アーマードスーツはファティマを狙って大口径ライフル弾やグレネード弾を浴びせかけた。だが、その全てがクラウンシールドによって阻止され、迎撃されてしまう。
「一気に片づけます!」
ファティマは“赤竜”の刃を走らせ、アーマードスーツを攻撃。アーマードスーツは次々に撃破されて炎上し、パイロットシートからパイロットが緊急脱出する。
「殺せ! 仲間の仇だ!」
「殺せ!」
だが、脱出したところで怒れるグリゴリ戦線の兵士たちによって嬲り殺されるだけであった。すぐ死ぬか、ゆっくりと死ぬかの違いでしかない。
「シシーリア様。ジェリコは制圧しました」
「分かりました。では、武器弾薬の鹵獲を」
ジェリコの警備部隊が制圧できたところで本来の目的である武器弾薬の強奪が始まる。武器弾薬が積み込めるだけ装甲トラックに積み込まれ、また基地で鹵獲した車両に積み込まれて行く。
「可能な限り運び出してください! 積み込めるだけ積み込んで!」
シシーリアが指示を出し、弾薬庫の扉が破壊されて多くの武器弾薬が運び出された。
「これも持っていけ!」
「全て俺たちのものだ!」
さらにはヘカトンケイル強襲重装殻やARM784主力戦車と言ったものも鹵獲されて運び出されていった。
「サマエルちゃん。ジェリコの方の反応はどうですか?」
「通信は妨害しているからこの基地が襲撃されていることは伝わっていないよ」
「オーケーです。何とかなりそうですね」
ファティマは作戦が順調なことにとりあえず安堵した。
「撤収、撤収! 引き上げるぞ!」
弾薬庫が空になったところでグリゴリ戦線が撤退を開始。
装甲トラックがテクニカルに護衛されてグリゴリ戦線支配地域へと脱出する。
「これだけの弾薬があれば長く戦うことができます」
シシーリアは拠点に運び出され、除染された武器弾薬を見て満足げに頷いた。
「アーマードスーツなども運用を?」
「いいえ。それらは私たちの資金繰りと技術では運用できません。フォー・ホースメンに売却し、その資金でソドムから武器を購入するつもりです。我々も使うことができる兵器をですね」
「なるほど」
確かに素人の寄せ集めでしかないグリゴリ戦線でアーマードスーツが運用できるとは思いない。それにアーマードスーツの類は運用するだけで相当な資金を消費する。
資金面で弱いグリゴリ戦線向きの装備ではなかった。
「何はともあれ
「どもです。しかし、懸念していることがあります」
「生物化学兵器ですか?」
「ええ」
グリゴリ戦線がふとしたことから手に入れた生物化学兵器。
ゲヘナ軍政府もいずれ漏洩に気づくだろう。そうなればすぐに対応するはずだ。
「我々が保有していることゲヘナ軍政府は快くは思わないでしょうが、今は敵による生物化学兵器での報復を抑止するために保有しておく必要が──」
そこでシシーリアのZEUSに着信。
「……ファティマさんの懸念が早速当たったようです。生物化学兵器を保管していた物資集積基地が攻撃を受けました。クレイモア空中突撃旅団です」
「どうします?」
「応戦し、排除します」
「了解」
そして、ファティマたちが物資集積基地を目指す。
……………………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます