目標フォー・ホースメン司令官//ゲームセット

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 ──目標フォー・ホースメン司令官//ゲームセット



「ファティマ! そいつを突破して大佐のところに向かって! 援護する!」


「了解です!」


 グレースがファティマを援護して立ち塞がるリーアを突破させようとする。


 容赦なく空中炸裂エアバースト弾を叩き込み、リーアを守勢に追いやった。


「ふん。流石にあの化け物とプラス・アルファじゃあ分が悪いか。だが、やれるだけやっておくとしよう!」


 リーアはファティマから狙いを逸らし、グレースに超高周波振動刀を向けた。


「させません!」


 それをファティマがクラウンシールドで防衛。


「おっと。手元がお留守のようだぞ」


 しかし、注意がグレースの方に向いたファティマに超高周波振動刀が襲い掛かる。


「残念でした。私はそこまで注意散漫ではありませんよっと!」


 ファティマは飛来する超高周波振動刀を迎撃し、反重力エンジンが組み込まれたリモートアームごと撃破した。


「よし。時間だ。撤収!」


 仕事ビズは終わったとばかりにリーアたちは赤外線遮断の効果もあるスモークグレネードを投擲し、そのまま消えた。


「とりあえず凌ぎましたがバーロウ大佐が」


「まだ間に合うはず。急ぎましょう」


「了解です!」


 ファティマたちはバーロウ大佐が潜んでいる地下のバンカーを目指す。


 あちこちに基地の守備隊と交戦した痕跡が刻まれており、どうやら基地守備隊は突破されてしまったようだ。


「バーロウ大佐と連絡は?」


「地下のバンカーとは通信できない」


「では、直接行って確認するしかないですね」


 グレースに言われてファティマが先を急ぐ。


「そろそろ地下バンカー」


 グレースが前に出てバンカーの入り口を確認した。


「突破されている。だめかもしれないわね」


「ありゃりゃ」


「冗談よ。あの人は大人しく殺されるような人間じゃない」


 ファティマが戸惑うのにグレースがそう言ってバンカーに進んだ。


「遅いぞ。何をやってた、護衛が」


 バンカーの中にはバーロウ大佐とバーゲスト・アサルトのメンバーがいた。そして無数のウィッチハント部隊のコントラクターの死体が転がっている。


 バーロウ大佐の手には超高周波振動刀が握られており、血が滴り落ちていた。


「あれま。あなた自身も強いとは」


「伊達に荒くれ者たちのボスをやってるわけじゃない。他の連中は?」


 ファティマが感心するのにバーロウ大佐が尋ねる。


「無事。敵は撤退した。これで終わりね」


「結構だ。イーグル基地に戻るぞ。ここの無人警備システムは既に機能していない。イーグル基地の方がマシだ」


「了解」


 バーロウ大佐がうんざりしたように言うのにグレースが了解した。


車列コンボイを準備して。イーグル基地に戻る。それから防空体制を強化するように伝えておいて」


『了解、少佐』


 ファティマが指示を出し、車列コンボイが準備されバーロウ大佐たちが乗り込みイーグル基地へと帰還した。


「ご苦労だった、ファティマ。報酬だ」


「どうも!」


 バーロウ大佐がファティマの端末に報酬を送金。


「それからもうひとつ。今回で随分と借りができた。デモン・レギオンには積極的に協力してやろう。そっちが何かやるときには知らせろ。手伝ってやるよ」


「ありがとうございます」


「それじゃあ、俺たちは防空体制を見直さにゃならんのでな」


「失礼します」


 それからファティマたちはイーグル基地を出た。


「お姉さん。今回は危ない場所にも入ったし健康診断は受けた方がいいと思う」


「そうですね。そうしましょう」


 サマエルに言われてファティマはウェストロード医療基地に向かう。それから受付を済ませてミアの診察室に通された。


「やあ。検査を受けに来たのかな?」


「ええ。あれから何か分かりましたか?」


「残念ながら何も。君はテリオン粒子を無視できない濃度で含みながらも、健康に全く害を受けていないということしか」


「そうですか。では、今回も一応お願いします」


「ああ。検査をしよう」


 ファティマはミアによって検査を受けた。いつも通りの検査だ。


「悪い知らせがある。君の体内のテリオン粒子濃度は上昇している」


「今回の仕事ビズは重度にテリオン粒子に汚染された地域を通過したのでそのせいでしょうか?」


「可能性としては。だが、やはり健康被害はない。不思議だ」


 ミアが首を傾げ、検査結果が表示されているタブレットを睨む。


「アヴァロン・リカバリーの方で新しい検査機器を導入したと聞いた。よければそちらで検査を受けてみてくれないか? 何か新しいことが分かるかもしれない」


「分かりました。私も自分の体に何が起きているのか分からないのは怖いですから受けておきます。ありがとうございました」


「いや。力になれなくて済まない」


 ミアは申し訳なさそうにそう言い、それからアヴァロン・リカバリーにファティマが向かうことを連絡した。


「向こうはいつ来てくれてもいいそうだ」


「分かりました」


 ファティマたちはウェストロード医療基地からアヴァロン・リカバリーに向かった。


「何も異常がないといいね……」


「ええ。でも、急がないと地上はテリオン粒子のせいで平均寿命が短いそうですから」


「うん……」


 タイパン四輪駆動車の助手席に乗っているサマエルが頷き、バックミラーを見る。そこにはサマエルと同じ姿をしたあの少女が映っており、彼女は小さく不気味に笑うと姿を消した。


「何もないと……いいね……」


 サマエルはそう呟くのみ。


 そして、ファティマたちはアヴァロン・リカバリーに到着。


「ようこそ、ファティマさん。この度は我々の研究に協力していただきありがとうございます」


「自分のためでもありますので」


 研究所所長のレガソフ博士自らが出迎え、ファティマは研究所内に通された。


「では、検査を。最新の検査機器が手に入ったのですよ。テリオン粒子が人体に及ぼしている影響をリアルタイムである程度把握できるものです」


「それを使えばどうして私の内部にあるテリオン粒子が健康被害を与えていないか分かるのですか?」


「恐らくは、ですが。少なくとも今まっでより有力なデータが手に入るはずです」


「お願いします」


 ファティマはレガソフ博士に連れられて検査室に入る。


 検査室に置かれていたのはMRIのような大きな検査機器でエデンでは旧式の品だが、ゲヘナにおいては最新の検査機器である。


「検査を担当します。まず検査着へ着替えていただけますか」


「はい」


 女性の検査技師に促されてファティマは着替えて検査を受ける。


 重低音の音が機械から響いてファティマの体内がスキャンされて行く。


 テリオン粒子がファティマの体内でどのように機能しているかが分かるのだ。


……………………

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