目標フォー・ホースメン司令官//電磁パルス

……………………


 ──目標フォー・ホースメン司令官//電磁パルス



 アリスが手に入れた情報では暗殺が行われるとされた日時が訪れた。


「今のところ、周辺に異常なし」


「防空レーダーも異常を捉えていないが、MAGはステルス作戦機を有している」


「そうね。面倒なことになりそう」


 ガーゴイルの指摘にグレースが頷く。


 MAGはレーダーによる探知を避けて作戦空域で行動可能な無人攻撃機やパワード・リフト輸送機を保有している。


「では、予定通りあなたたちは外周の警戒。私とファティマ、サマエルたちは屋内で警戒する。敵がステルス機を動員していても直接建物に乗り付けるようなリスクは犯さないはずよ」


「了解、少佐」


 バーゲスト・アサルトは半数が従来の基地警備部隊とともに外周を警戒し、半数が建物内で待機し、バーロウ大佐の直接的な護衛と進入阻止に当たる。


 フォー・ホースメンは地上レーダー基地と早期警戒機のレーダーが空を見張り続け、偵察衛星と戦略級無人偵察機が画像情報で周辺を把握し続けた。


 しかし、その攻撃を避けることはできなかった。


 MAGが投入したのはファントム無人攻撃機を改良した無人攻撃機だ。レーダーに対するステルス性能は当然として、熱光学迷彩も備えており、画像情報でも把握することはできない機体だった。


 その無人攻撃機が電磁パルス爆弾を投下した。


 ブルー基地上空で強力な電磁パルスが生じ、基地施設がダウン。


「電磁パルス。強化外骨格エグゾは動く、ファティマ?」


「ええ。大丈夫ですが、他の基地施設は怪しそうですね。既に電気が落ちています」


「けど、あの情報は正しかった。やはり今日仕掛けて来た」


「叩きのめしてやりましょう」


 ファティアとグレースは近接戦闘CQB仕様のMTAR-89自動小銃を構えて周辺を警戒する。ZEUSと強化外骨格エグゾは生きており、最低限の指揮通信と戦闘は行える。その点問題ない。


「ガーゴイル。お客さんが来る。気を付けて」


『了解』


 外周ではガーゴイルたちが警戒している。


「サマエルちゃん。通信は拾えますか?」


「やってみるよ」


 ファティマが求めるのにサマエルが応じた。


『リッパーより本部HQ。予定通り進行中。以後の無線連絡は傍受と妨害を避けるために封鎖する』


本部HQよりリッパー。了解した』


 僅かな無線通信が流れるのをサマエルが傍受。


「お姉さん。やっぱり来ているよ、敵。けど、こっちの動きは想定されていて、通信を避けるように言っている」


「流石に学習しますか。いつまでも対策しないとは思っていませんでしたが」


「どうしよう……」


「想定していても妨害すれば何かしらの意味はあります。妨害を」


「分かったよ」


 サマエルが通信妨害を開始した。


「敵は空中機動部隊です。パワード・リフト輸送機が向かって来るはず。しかし、ステルス機の上に熱光学迷彩まで備えているのでは探知は困難です」


「分かっている。しかし、トレーサードッグを動員しなくてよかった。トレーサードッグに頼っていたらさっきの電磁パルスで大きな穴が開いていた」


「ええ。AIや妖精の類でも攪乱されます」


 電磁パルス爆弾は強力だった。電磁パルスのせいで無人警備システムの類は徹底的に破壊されてしまったのだ。


『少佐。反重力エンジン音を犬が拾った。連中、熱光学迷彩を備えたパワード・リフト輸送機を使っているぞ。噂のナイトバード汎用輸送機だ』


「実戦配備されていたとは驚きね。特定して迎撃して」


『了解』


 ガーゴイルたちは軍用犬が反重力エンジンの音を捉え、接近しているウィッチハント部隊の迎撃に回った。


「いよいよパーティーの始まりですね。楽しくなりそうでうんざりです」


「全くね。けど、今のところパーティーの主賓に出席の予定はない。バーロウ大佐は地下の耐爆バンカーにいる。殺させなければパーティーはおじゃんよ」


「ええ。やりましょう」


 それのファティマとグレースの会話の直後に窓ガラスが割れた。


接敵コンタクト!」


 飛び込んできたのはMAGのウィッチハント部隊だ。


 サプレッサーが装着されたMTAR-89自動小銃を握り、強化外骨格エグゾを装備した彼らが飛び込んできて戦闘を開始。ファティマたちと銃撃戦を繰り広げる。


「“赤竜”!」


 銃弾が飛び交い、お互いにエネルギーシールドで身を守る中、ファティマが“赤竜”を展開し、その刃を敵に向けて叩き込んだ。


『何だこれは!』


『クソ。エネルギーシールドが──』


 “赤竜”が一斉にウィッチハント部隊を薙ぎ払う。エネルギーシールドを貫き、その強化外骨格エグゾの装甲を貫いた。


 串刺しにされたウィッチハント部隊のコントラクターの死体が転がり、生き残りは遮蔽物へと向けて退避を開始。


「いい感じです。まだまだやれますよ」


「ええ。けど、どうもおかしい。彼らにはわざわざ私たち警備と戦う意味なんてないはずなのに。特に隠密作戦なら」


「それは……確かに」


 わざわざ隠密作戦を実行しているのに正面から警備と戦うのは得策とは思えない。彼らは静かにバーロウ大佐を殺し、そして静かに逃げるのが一番いいはず。


「何か裏がある。警戒して」


「了解です。このまま──」


 そこでファティマが何かに気づてクラウンシールドを後方に展開。「


「ちっ!」


「グレースさん! 後方に敵です!」


 超高周波振動刀が弾ける音が響き、ファティマがグレースに警告。


「こいつは……リーア・エラザール!」


 そう、ファティマたちを背後から襲撃したのはウィッチハント部隊の指揮官リーアだ。彼女がマニュピレーターアームとリモートアームで構えた6本の超高周波振動刀を構えてファティマたちへと向けて来た。


「切り刻んでやる、民兵ども」


「やれるものなら!」


 ファティマがリーアとの戦闘状態に突入。


 ファティマは“赤竜”を放つがリーアは超高周波振動刀で弾きながらファティマへと肉薄してくる。


「くっ……! やるようですが、こちらも負けませんよ!」


 ファティマは一気に攻撃に出てリーアを押し返そうとするが、次の瞬間リーアがその姿を消した。投影型熱光学迷彩だ。


「この! 面倒なことを!」


 ファティマはクラウンシールドを周囲に展開してリーアの攻撃に備える。


『少佐! 別のパワード・リフト輸送機が着陸したみたいだ! こっちは対応が飽和している! そっちで対応できるか!?』


「こっちも絶賛戦闘中。分からない」


『クソ。こいつらは陽動だったな!』


 そう、ウィッチハント部隊はまず警備のバーゲスト・アサルトなどの戦力に正面から攻撃を仕掛けて戦力を拘置して、その隙に本命の暗殺者たちをブルー基地内へと送り込んだのだ。


「気づくのが遅かったな。ここで刺身なるといい!」


「あいにく生のお魚は趣味じゃありません!」


 早くバーロウ大佐の下に向かおうとファティマがリーアと激戦を繰り広げる。


……………………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る