マンハント//イーグル基地
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──マンハント//イーグル基地
翌日ファティマたちはバーロウ大佐が暇があれば顔を出せと言っていたことからイーグル基地に向かった。
「
ファティマがイーグル基地に向かうタクシーの中でサマエルに尋ねる。
「特にない、かな。お姉さんがいる場所にいることができればボクはそれでいいんだ」
「嬉しい言葉です」
サマエルは少しは精神面で回復したのか弱弱しいものの笑顔を浮かべている。
そして、タクシーがイーグル基地に到着し、ファティマたちはゲートのフォー・ホースメンの警備兵から生体認証を受け、基地施設内に通された。
「よう、ファティマ。いいところに来たな」
バーロウ大佐は執務室でファティマたちを出迎えた。今日は葉巻を咥えていない。
そして、部屋にはグレースと彼女の部隊である特殊作戦部隊バーゲスト・アサルトに所属するガーゴイルがいた。
「私向きの
「ああ。ちょっとばかり能力があり、そして有名人ではない人間が必要になった」
バーロウ大佐はそう言うとファティマたちに椅子に座るようジェスチャーした。
「
「
「そう、がっちりエデン社会主義党と癒着してやがるわけだ。で、そのおかげでエデン統合軍もMAGを支援してやがる。今回の
バーロウ大佐はグレースに説明するように投げる。
「説明する。エデン統合軍参謀本部情報総局の情報部隊がMAGのための作戦を行っていることが把握された。私たちフォー・ホースメンの支配地域で活動している」
「エデン統合軍参謀本部情報総局ですか? エデン統合軍の情報機関がMAGのために使い走りをやっているというのですか?」
「書記長ドミトリーの政治的バックにはエデン政府国防大臣ギャスパー・ゼレール元帥が付いている。そういうこと。腐敗の連鎖というもの」
「なるほど」
MAGの
「
グレースがそうファティマに
「了解です。しかし、この手の情報部隊を捕まえるのはなかなか難しいと思いますよ。まずこのような情報任務に従事する部隊は高度に偽装して潜伏しており、周囲に監視の目を光らせている」
「そう、通常の対ゲリラコマンド戦のように大規模な部隊を動員すればまず気づかれる。そして、敵は無理に戦闘に及ばず、逃げて情報を持ち帰ることを優先する」
「というわけなので、どのように?」
情報部隊の目的は情報を持ち帰ることだ。戦闘で敵を撃破する必要はないし、暗殺任務でも付随していなければ誰ひとり殺さず、侵入したことすら知られず任務を終えることを優先するだろう。
この手の覗き屋を始末するのは苦労する。
「よって動員するのは少数。まず、あなた、私、そしてガーゴイルの3名と私服捜査官数名。それから敵を捕捉した状況でバーゲスト・アサルトの本隊を。敵がMAGの本隊などを動かして脱出するならこっちもそれ相応の規模を」
「戦力の逐次投入は悪手とはいいますが、場合によりけりですね。地形や戦況に応じて投入すべき戦力は選ぶべきです。それでいいかと」
「戦力の逐次投入というものが戦力の分散を意味するなら、その点は問題ない。私たちは敵の情報部隊という単一の目標に向けて戦力を集中している」
「了解です。いつから動きますか?」
ファティマが頷き、そして尋ねる。
「あなたの準備ができてから。武装を準備して」
「来い、新入り。武器とその他の装備を渡す」
グレースがそう言い、ガーゴイルがファティマを武器庫に案内した。
「装備は指定する。任務の都合上、重装備は持ち込めん」
ガーゴイルはそう説明して武器庫で装備をファティマに渡す。
「PDW-90個人防衛火器、ですね。しかし、小さい銃をさらに切り詰めてますね」
PDW-90個人防衛火器はHW57自動拳銃と同じ口径5.7ミリ弾を使用するブルパップカービンライフルだ。だが、フォー・ホースメン独自の改良によってスーツケースに入るサイズにまでコンパクトにされていた。
「ああ。射程が犠牲になってるが、口径5.7ミリ弾は装甲に有効だし、この銃の出番は最後の最後だ。ギリギリまでは使うな。使うならこっちだ」
「HW57自動拳銃。サプレッサーとレーザーサイト、そしてマガジン拡張ですね」
「ああ。今回はそれで十分だろう。大事にはしない。ただのネズミ駆除だ」
ファティマがカスタムされたHW57自動拳銃を握り、マガジンとチャンバーに弾が装填されていないことを確認して構えてみるのにガーゴイルがそう言う。
「ところで、バーゲスト・アサルトというのはやはりフォー・ホースメンの兵士から選抜した部隊なのですか?」
「そういうわけじゃない。俺たちはそもそも最初はフォー・ホースメンじゃなかった。どこにいたかは教えられないがな」
「そうなんですか? では、どういう経緯で?」
「随分とお喋りだな、お前」
ファティマが質問を繰り返すのにガーゴイルが呆れた。
「遅いから見に来たけど。その子を口説いてるの、ガーゴイル?」
そこで武器庫にグレースが現れる。
「馬鹿言わないでくれ、少佐。こいつが知りたがりなんだよ。教えてやってくれないか。俺たちバーゲスト・アサルトについて聞きたいそうだ」
「ふうん。入隊する気になったの、新入りさん?」
ガーゴイルが言うのにグレースがファティマに尋ねた。
「いえいえ。そちらは私について知っていますが、私がそちらについて知らないのはどうかと思っただけです。相互理解は作戦を成功に導くうえで重要では?」
「そうね。この
「そうですか」
グレースが目を細めてローテンションに言うのにファティマは肩をすくめる。
「服もちゃんと渡して、ガーゴイル」
「分かってる。こいつを着てこい」
グレースに促されてガーゴイルがファティマに服を渡した。
モスグリーンの大きめのサイズのジャケット、厚手の黒いシャツとスキニージーンズ。そして、ジャケットの中に着こむタイプのタクティカルベストだ。自動拳銃用のホルスターもついている。
「俺たちは一般市民として行動する。目立たないようにな」
既にガーゴイルとグレースも似たような服装で軍服の類は身に着けていない。
「了解です。けど、そちらの顔のマスクは目立つのでは?」
「余計なお世話だ。さっさと着てこい」
ファティマがガーゴイルの顔の黒いフルフェイスマスクを見て言うのにガーゴイルが不満そうに吐き捨てた。
「どうです? 似合いますか、サマエルちゃん?」
「うん。似合うよ、お姉さん。格好いいよ……」
ファティマはタクティカルベストをジャケットの下に身に着け、なるべく軍人という印象を与えないようにしつつも動きやすいように衣服を身に着け、サマエルに見せている。サマエルはそんなファティマを見て頷いていた。
「準備できました」
「みたいね。似合ってる。問題なし。行きましょう」
「はい!」
ファティマはグレースとガーゴイルに従ってイーグル基地を出る。
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