オンザジョブトレーニング//警報
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──オンザジョブトレーニング//警報
エージェント-29Cはロケット弾の弾頭としての運用を想定して保存されていた。
ファティマたちが侵入に成功した施設内にはMAGが保有している口径122の多連装ロケット砲の弾頭という形で、エージェント-29Cが並んでいた。無数のロケット弾の弾頭の中に何もかもを殺す化学兵器が収まっている。
「グレースさん。爆薬をお願いできますか?」
「任せておいて」
そして、そのロケット弾にグレースが戦闘工兵用の梱包爆薬をセットしていく。それは高威力の電子励起爆薬であり、少しの爆薬でここにある全てのエージェント-29Cを誘爆させて使用不能にできる。
「セット完了。次はこの基地のレーダーを無力化する」
「了解。向かいましょう」
グレースが指示し、ファティマとサマエルがエージェント-29Cの保管施設を出た。
再びノーヴェンバー・ケベック・ワン基地を投影型熱光学迷彩を展開して進み、この基地の航空機の管制などを行うレーダー施設へと向かう。
「ところで、どうしてレーダー施設を?」
「脱出する時にパワード・リフト攻撃機に追い回されたい?」
「ああ。それは嫌ですね」
グレースが言うのにファティマが同意。
「お姉さん。また通信を拾ったからそっちに送るね」
「お願いします。後は逃げるだけですから騒ぎはごめんですよ」
サマエルが再びMAGの通信を傍受してファティマに中継した。
「今のところ、まだ敵は気づいてないです。急ぎましょう、グレースさん」
「ええ」
ファティマたちは着実にレーダー施設に近づいたときだ。
『
サマエルが傍受し、ファティマに中継していたMAGの通信に警報が流れた。
同時にノーヴェンバー・ケベック・ワン基地でサイレンが鳴り響き、MAG部隊が一斉に戦闘態勢に入り、猟犬の生物学的構成要素を組み込んだ
投影型熱光学迷彩の弱点は音と臭いで、トレーサードッグは脅威だ。
「不味いことになりましたよ! レーダー施設をとりあえず潰しましょう! 後は脱出手段が確保されるまで暴れてやります!」
「ええ。ちょっとした持久戦ね」
ファティマたちはレーダー施設へ急ぎ、そこでレーダー施設を防衛しているMAG部隊と遭遇。ヘカトンケイル強襲重装殻2体と
「ここは私がやります」
ファティマは“赤竜”を展開し、まずアーマードスーツに“赤竜”の刃を二本向けて撃破。さらにMAGコントラクターを一気に襲って八つ裂きにする。
「クソ! 敵襲だ!
「
MAG部隊が助けを求めるも通信が繋がらない。
「通信は妨害してるよ、お姉さん」
「グッドジョブです! このまま殲滅します!」
ファティマはMTAR-89自動小銃で生き残りのMAG部隊を銃撃し、サプレッサーで完全に抑制された銃声とともに銃弾が放たれ、MAGのコントラクターは射殺され壊滅。
「進みましょう、グレースさん! もう
そう宣言してファティマは投影型熱光学迷彩を解除し、同時に赤いエネルギーシールドを展開して突き進む。
「いたぞ! 侵入者だ! 撃破しろ!」
『トライロバイト・ゼロ・ワンより攻撃を開始する。随伴歩兵は警戒せよ』
MAGが基地に配備していた主力戦車であるMBT90主力戦車5台が現れ、MAGの1個歩兵中隊約120名とともに前進してくる。そのMBT90主力戦車の55口径140ミリ主砲はファティマたちをしっかりと捉えていた。
「来ます! 後ろに下がってください! エネルギーシールド展開! クラウンシールドも同時展開です!」
MBT90主力戦車が発射した
「グレースさん、サマエルちゃんを後方に連れて下がってください! あれは私が撃破します! 全てを!」
「本気なの? 敵の規模は尋常じゃない」
「大丈夫ですよ! 私ならやれます! サマエルちゃんの力で!」
ファティマは獰猛な笑顔でそう宣言するとクラウンシールドで敵の攻撃を弾き、エネルギーシールドを展開した状態でMAG部隊に向けて前進。
『なんだこれは!? 砲弾を弾いているだと……!?』
『トライロバイト・ゼロ・ワンより小隊全車。エーテル粒子浸食弾でやるぞ。完全を期すために共同交戦を実施。戦術リンクを使用せよ』
5台のMBT90主力戦車がエーテル粒子による構造物を侵食する特殊な砲弾を装填。さらにそれに同時にそれを着弾させることで威力を増加せるために共同交戦を実施する。
『小隊全車、撃て!』
そして、MBT90主力戦車5台が一斉に砲撃。主砲から放たれた砲弾がナノ秒の狂いもなく同時にファティマが展開しているクラウンシールドに着弾した。
『やったか?』
『待て。まだ熱源を捉えている! やってないぞ!』
MBT90主力戦車の熱光学センサーはファティマがまだ人間の形を保って存在していることを探知。先ほどの砲撃の効果がないことに戦車兵たちが狼狽える。
「オーケーです。やってやりましょう。エネルギーを凝集させ──」
ファティマの赤いエネルギーシールドの効果範囲がファティマの方に向けて縮小し、さらにエネルギーシールドの正面に七個のクラウンシールドが密着する。
全ての攻撃を弾き続けた赤い粒子が凝集されていく。
不気味な静寂とともに土埃が一斉に舞い上がり、周囲の空気が帯電したかのように電気の弾ける音を響かせ始めた。ファティマの赤いエネルギーシールドの赤さが濃くなり、血のように真っ赤になる。
『再攻撃を実施! 装填──』
MBT90主力戦車が小隊指揮車の命令で再びエーテル粒子浸食弾を装填し、ファティマに叩き込もうとした瞬間、それは起きた。。
「──シールドインパクト!」
凝集されたエネルギーが一斉に解放され、正面に投射される。何もかもを吹き飛ばす膨大なエネルギーがMAG部隊に襲い掛かった。
『う、うわっ──』
MBT90主力戦車の主砲がへし折れ装甲が溶けるようになくなっていき、さらには弾薬が誘爆し、砲塔から火山が噴火したかのように炎が吹き上がる。5台の戦車がその装甲が何の役にも立たずに撃破された。
「畜生! これは──」
歩兵も装甲を展開した
MAGの歩兵中隊はミキサーに放り込まれたように八つ裂きにされ、挽肉にされ、さらに細かく分解されて死体の欠片すら残らず消し飛ばされた。
ノーヴェンバー・ケベック・ワン基地の基地施設の建物も破壊され、まるで巨大な爆弾でも落ちたかのようにごっそりとファティマの前方に何もない空間が広がる。
「やりました」
ファティマがその様子を見てにやりと笑った。
「……もう意味が分からない」
「お姉さん、凄いよ! 凄い!」
グレースが現実逃避するように首を横に振り、サマエルは嬉しそうに微笑んでいる。
『どうなってる!? 今の爆発音は何だ!?』
『確認を急げ! 航空部隊も出撃しろ! 急げ、急げ!』
MAGの通信はただただ混乱していた。
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