オンザジョブトレーニング//ノーヴェンバー・ケベック・ワン基地
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──オンザジョブトレーニング//ノーヴェンバー・ケベック・ワン基地
「よし。上手い具合に潜入できそうです」
ファティマたちは投影型熱光学迷彩を使用し、ゲヘナ軍政府支配地域をノーヴェンバー・ケベック・ワン基地に向かっていた。
反エデン・エリュシオンを掲げるテロ組織グリゴリ戦線に対する
既にファティマは戦術級偵察妖精でノーヴェンバー・ケベック・ワン基地の構造を把握している。そのデータを分析して侵入経路を計算したのだから当然だ。
ノーヴェンバー・ケベック・ワン基地は滑走路を有し、航空戦力を展開可能な基地である。南から北に向けて滑走路が走っており、西側に航空機を収容するバンカーや管制塔などの基地施設が広がっている。
また兵舎や弾薬庫も設置されており、前線基地として戦場で戦う戦闘部隊を支えられるようになっていた。
ファティマたちはその基地に南西からアプローチしている。
「そろそろです。ですが、襲撃を仕掛ける前に確認しましょう。脱出手段は?」
ファティマが一度空き家に隠れ、投影型熱光学迷彩を解除して尋ねた。
「それは大丈夫。こちらで手配してる。
「了解です。では、やりましょう」
グレースの言葉にファティマが頷くと再び投影型熱光学迷彩を展開。
そして、ノーヴェンバー・ケベック・ワン基地へと接近した。
「ここですね。妖精で見たように周囲には大型土嚢と有刺鉄線」
ノーヴェンバー・ケベック・ワン基地の外周は箱型の大型土嚢を積み上げ、その上に有刺鉄線を張り巡らせることで侵入を防止している。
「どうする、新卒さん?」
「もちろんここから侵入しますよ。鉄条網くらいどうにでもなりますし」
「あなたに続く。しっかりね。見てるから」
グレースがそう言い、ファティマが動くのを待つ。
「よっと」
ファティマは投影型熱光学迷彩を展開したまま
「まずは鉄条網を除去です」
そして“赤竜”を展開して鉄条網を切除。侵入経路を生成した。
「グレースさん。サマエルちゃんを連れて来てもらえますか?」
「ええ。分かった」
大型土嚢の上からファティマが頼むのにグレースがサマエルをひょいと子猫でも抱えるように持つとそのまま
「サマエルちゃん。行きましょう。こっちへ」
「うん」
そして、ファティマはグレースからサマエルを受け取るとノーヴェンバー・ケベック・ワン基地内に侵入した。
「問題は、です」
ファティマが壁の傍にあるプレハブ式の兵舎の陰に潜んで告げる。
「エージェント-29Cとやらがどこに置いてあるかですよ。この広い基地を当てもなくうろうろしてたらいくら投影型熱光学迷彩を使っていても見つかります。そちらに当てはありますか?」
「ない。この基地に運び込まれたのが確認されただけ」
「なるほど。では、この基地の端末にアクセスして記録を見る必要がありますね。リスクはありますが、当てもなく探すよりマシです」
グレースの言葉を受けてファティマがそう決断した。
基地の端末にアクセスし、ハックすればこのノーヴェンバー・ケベック・ワン基地の情報が閲覧できる。しかし、外部からこの手の軍事施設の端末をハックするのは不可能だ。物理的にアクセスする必要がある。
「待って、お姉さん。ボクが探してみるよ」
「おや。できそうですか?」
「多分」
サマエルがそう言うのに待つとファティマのZEUSにこのノーヴェンバー・ケベック・ワン基地の端末のデータが流れて来た。
「おお。これは、これは。よいですね。ありがとうございます、サマエルちゃん。グレースさんにも送っておきますね」
ファティマがサマエルに礼を述べるとともに流れて来た情報をグレースに転送。
「もう驚くのも無駄みたいね。確かにこの子は使える。認める」
「でしょう? サマエルちゃんはできる子なんです。さあ、ここからは私たちの
ファティマはそう言って基地内をエージェント-29Cが保存されている施設に向かう。
「ストップ。前方にMAGの警備兵2名。近くに振動探知センサーがあります」
前方に
「この作戦の指揮官はあなた。どう料理してもいいし、私が手伝ってもいい」
「では、お願いしましょう。右のコントラクターをそちらで。静かに」
「了解」
ファティマの指示にグレースが頷き、ふたりはMAGのコントラクターに密かに接近。
「全く。何が運ばれてきたんだ? えらく警備しろって上がうるさ──!?」
「──っ!?」
そして、ファティマとグレースはエネルギーブレードを形成し、同時にMAGのコントラクターに襲い掛かると喉を裂き、心臓を貫き、腎臓をめった刺しにして無力化。MAGのコントラクターがふたりに抱えられた姿勢でゆっくりと地面に倒れる。
「オーケー。いい仕事です」
「これぐらいは楽勝」
ファティマがグレースにサムズアップするのにグレースが無表情に返す。
「では、なるべく殺しはなしで。人が死んでるのが見つかれば警報が鳴り響きます。どうせガスで殺すんですから急いで殺す必要はありません」
「そうね。無意味な殺しはプロじゃない」
そしてファティマ、グレース、サマエルの3名は引き続き目的地を目指した。
どうしても避けられない敵以外は迂回して回避し、戦闘と殺しを可能な限り最小限に収めてファティマたちは目的地に近づいた。
「ここです。この中にあるみたいですよ」
そして、辿り着いたのは頑丈な鉄筋コンクリートの構造物だ。その施設は鋼鉄の分厚い扉で閉ざされており、カギは電子キーになっている。銃やエネルギーブレードで破壊して侵入できるものではない。
「カギが必要みたい。爆薬はあるけど使えば警報ね」
「それは困ります。脱出手段が到着できるようにする作業も残っているんですから。どうしたものですかね?」
グレースとファティマが施設の頑丈な金属扉を前に頭を悩ませる。
爆薬で扉を吹き飛ばすことは可能だ。だが、それでは基地中に自分たちの侵入を知らせることになってしまう。しかし、カギを探していたらやはりリスクとなる。
「お姉さん。ボクにやらせてくれないかな……?」
「おお。やれますか、サマエルちゃん。お願いします」
「うん」
扉の前にサマエルが立つと電子キーの数字の表示が一瞬バグを起こしたかのようにでたらめな映像を表示し、そして『OPEN』と表示されカギが解除された。
「やれたよ。役に立てたかな……?」
「もちろんです! 本当に助かります、サマエルちゃん。ではでは、中を拝見」
サマエルの手を握ってファティマが笑顔を浮かべ、それからファティマが金属の扉をゆっくりと開いた。
「これがエージェント-29C」
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