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「シュガー&ソルト」を出た僕は

自宅とは反対の方向へと自転車を漕ぎだした。



「クリーンマート 稲置市屯倉町店」

の店内は学校帰りの学生たちで賑わっていた。

今の時代には珍しいFC加盟店ではない

個人商店のコンビニだった。


レジに立つアルバイトの少女を見て

僕は頬が緩んだ。


彼女は「私立傾城学園」の生徒で

学校帰りにここでアルバイトをしていた。

名前はヨタカ。


コンビニの制服の名札には

片仮名で「ヨタカ」と書かれていた。

どういう漢字を書くのだろうか。

すぐに思いつくのは夜高か夜鷹か。

黒いストレートのロングヘアーと

若干のつり目から、

気の強い印象を受けるが、

同時にそれが彼女を大人ぽく演出していた。

近頃の女子高校生にしては珍しく

化粧っ気がなかったが、

それでも十分すぎるほど魅力的だった。


僕は成人男性向けの雑誌が陳列されている棚から、

表紙が過激な雑誌を選んでカゴに入れた。

そして二リットルのスポーツドリンクと

適当な弁当を選んで彼女の立つレジに並んだ。


「お待ちのお客様こちらへどうぞ」

もう一つのレジが空いて、

この店の店長である年配の男の声が聞こえた。

僕がそれを無視していると、

後ろに並んでいた学生がそちらへ進んだ。


ヨタカの立つレジが空いて僕はそちらに進んだ。

僕は静かにカゴを置くと少女の表情を盗み見た。

スポーツドリンクと弁当をレジに通した後、

彼女は僕の選んだ露骨な表紙の雑誌を手に取った。

一瞬、ぎこちない表情になったのを

僕は見逃さなかった。


「三点で千二百七十四円になります。

 お弁当は温めますか?」

微妙にうわずった彼女の声が

内心の動揺を物語っていた。

僕は首を振って温める必要はないことを示した。

彼女にチラリと視線を走らせると

彼女と目が合った。

僕は慌てて目をそらして

財布から千円札二枚と五円玉を出した。


「七百三十一円のお返しになります」

彼女は片方の手で僕の手を下から支えて

もう一方の手で僕の掌の中へ

そっと釣り銭を置いた。


「ありがとうございました」

店を出るときに背中越しに聞こえたヨタカの声は

普段と何ら変わりのないものだった。

僕は袋から雑誌を取り出すと

店の外にあるゴミ箱へ投げ捨てた。


今日のヨタカの反応は微妙だった。

そろそろ耐性がついてきたのかもしれない。

慣れというのは恐ろしい。

改めてそう思った。

もうあの手の雑誌で

彼女の動揺を誘うのは難しいだろう。


ヨタカのいない日に

バイトに入っている子は雑誌を見た後、

汚いモノを見るような視線を僕に向けてきた。

ヨタカと同じ高校の制服姿を見たことがあるので、

彼女も「私立傾城学園」の生徒だろう。

彼女の名札には「メシモリ」と書かれていた。

漢字では飯盛か飯森か、

どちらにせよこちらは淫乱だ。

そういうモノに対して耐性があるのだ。

そういえば以前、

この女がチャラチャラした若い男と

歩いているのを見たことがある。

つまりはそういうことだ。

その点ヨタカは純真無垢な存在だった。


どちらにせよ。

次回からはもっと過激なモノで

ヨタカの動揺を引き出すしかない。

たしかコンビニには避妊具が置いてあるはずだ。

彼女はどんな表情を見せてくれるのだろうか。

彼女の恥じらう表情を想像すると胸が躍った。

そんなことを考えているうちに

僕は自宅へ帰り着いた。

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