第16話 大日本帝国宇宙軍設立(2)

1919年4月


 蒼龍は帝国大学を2年で卒業し、学習院での同級生だった同志数名とともに、宇宙軍創立メンバーとして任官された。


 任官されたのは以下の通りである。

 ・高城 蒼龍   たかしろ そうりゅう

 ・有馬 勝巳   ありま かつみ

 ・池田 政信   いけだ まさのぶ

 ・大岬 太郎   おおみさき たろう

 ・白次 良田人  しろつぐ らたひと

 ・三宅 康正   みやけ やすまさ

 ・森川 出水   もりかわ いずみ

 ・米倉 友実   よねくら ともざね


 階級は全員中尉だが、この中では、高城蒼龍が暗黙の了解で盟主になっている。


 そして早速、かねてよりの計画を実施する。


「池田中尉、早速だが、アメリカに飛んで商会を立ち上げて欲しい。“ハ号計画”の通りだよ。今のところ変更は無い。」


 蒼龍は、宇宙軍の創立と同時に実施すべき計画を、“イ号計画”から“ト号計画”まで7つの計画にまとめ、同志たちと綿密に打ち合わせをしていた。池田政信には、21世紀の経済学を徹底的にたたき込んだ。現時点において、間違いなく世界トップレベルの経済的知識と感覚を持っている。


 “ハ号計画”は、アメリカに商会を作り、宇宙軍が活動していく上での拠点とすることが記されている。いくつかの持ち株会社を通して支配することにより、日本の資本が入っていることを巧妙に隠すことも忘れない。


 欧州大戦が終わり、下落していたNYダウ(株価)は、1929年10月まで、幾度かの調整はあったがほぼ一直線に値上がりし、約6倍にまで達する。


 また、ニューヨークの不動産価格も、欧州大戦途中から急激な値上がりを開始し、1925年まで上昇を続ける。


 この”事実”を知っている高城蒼龍にとっては、アメリカで儲けることなど造作も無いことだった。


「株を買って売るだけの簡単なお仕事だよ。レバレッジを限界までかけて取引をすれば、5年で日本の国家予算規模の資金をプールできる。1929年10月になったら、全力で売り浴びせれば、さらに大もうけだね。」


「売り浴びせって・・あんた、容赦ないわね。世界恐慌でたくさんの人が自殺に追い込まれるのよ。わかってる?」


「わかってるけど、アメリカのバブル崩壊まで防ぐことは出来ないよ。俺が出来るのは、日本への影響を最小限に抑えることかな。日本で深刻な恐慌が起こらなければ、結果的に軍部の暴走を防いで、世界からの孤立も防ぐことができるかもしれないしね。それに、株で儲けることが目的じゃないよ。儲かったお金で、オーストラリアと中国にあるボーキサイトと鉄鉱石の鉱山を買い占める。今はまだ、アルミニウムの需要はたいしたことないから、安値で買えると思うんだよね。それに、コバルトやネオジムとかの希少金属も備蓄したいし。それと、満州にある油田地帯も地下資源ごと購入しないとね。」


「なるほどね。地下資源の権益を抑えるのね。」


「その通り。高性能な兵器を開発しても、その数をそろえることは難しいと思うんだよね。人材育成の問題もあるし。いくら高性能なジェット戦闘機を100機揃えたとしても、2,000機のレシプロ攻撃機に飽和攻撃されたら、いつかは突破されるよ。しかも、高性能にすればするほど、損害に対する補充がままならない。人間についても同じ事が言えるね。だから、高性能兵器1に対して、通常レベルの兵器10くらいの割合でハイ・ローミックス戦略を取ろうと思う。そうすると、どうしても豊富な資源が必要になるんだよね。」


 ―――――


「三宅中尉には、ロ号計画の実施をお願いするよ。」


 三宅康正は、機械技術に才能があったため、蒼龍は技術系の資料を書いて彼に渡し、豊富な知識を付けさせた。そして、ロ号計画の責任者として抜擢する。


 ロ号計画とは、宇宙軍兵学校技術士官課程をつくり、全国の工業高校から優秀な生徒を募って、新技術の習得や開発を行うという計画である。


 そして、標準的な工業規格の策定や、基礎技術の底上げを行い、徐々に一般企業にもその技術を浸透させていく。また、兵学校で開発した製品を、宇宙軍の外郭企業で生産し販売するという役目もある。


 三宅は、日本の工業力の源となる人材を、数多く育成していくのだった。


<イ号計画に続く>


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