私への興味
かっこ悪い。あまりにもかっこ悪すぎる。
王子様のくせにお姫様に捕まっちゃって、更に泣いてしまうだなんて。
そう思うと、もっと涙が溢れる。
「ごめんなさい、ごめんなさいっ・・・・!」
「・・・・なぁ、意味わかんねぇんだけど!」
突然の怒号に思わず体がはねる。
必死に涙を拭いながら顔を上げると、アルリィ様の怒った顔が目に入る。
悩まし気な雰囲気からは考えられないほど乱暴な口調で私に突っかかってくるその姿は、鬼気迫るものがあった。
「すっごい屈辱! なんでアタシたちの魔法を破れてるわけ⁉」
「そんなこと言われても、だって・・・・」
「信じられない! もういい、萎えたから帰りましょ、レミィ、エーミィ、ロミィ、ナオ!」
えっ、展開が急すぎません?
涙も引っ込んで呆然と座り込む私を置いて、アルリィ様は出ていこうとする。
それを止めようと姫様がひとり、ふたり、睨みつけた。
ナオラル様だけはうざったそうにその行動に眉をひそめている。
「貴方がそんな薄情だとは思わなくってよ、アルリィ」
「・・・・別にいいじゃない、こんな操れもしない弱っちい子供みたいな王子様。アタシたちには必要ない、そうでしょ?」
「それは、そうかもしれないけど・・・・」
なんかよくわからないけど、アルリィ様に全責任押し付けてもよさそうだ、チャンス!
好きなだけ暴言吐ける!
アルリィ様に声をかけ、振り向いた隙に言葉を浴びせる。
「あなたみたいな人、こっちからお断りですよ」
「んなっ」
「だってアルリィ様って、見るからに軽薄そうです。浮気とか不倫とか、すぐにやっちゃいそう」
「ぐはっ」
「言われたことにすぐ言い返せないのもなんだかなぁって感じ。そんなでは国が乗っ取られるのも時間の問題かもしれませんね」
「お、王子様、それくらいにしてあげてください」
まだ言い終わっていないけど、エミーラ様に言われて口をつぐむ。
もうちょっと言いたかったとは思うが、動かないアルリィ様の表情を見るに痛いところはきっと突けている。
ちょっと心も痛むし、だから、いいかな。
「ええと、その、帰ります?」
「私はそうします。皆様はどうなさいますか?」
「もう少しだけ話したいことがあって。アルリンはこちらで部屋に戻しておきますわ」
「分かりました。おやすみなさい、でよろしいでしょうか?」
おやすみなさい、というなんてことのないささやかな一言。
姫という立場ではあまり聞きなじみがなかったのだろうか。
すこしの間の後、エミーラ様が少し笑って同じ言葉を返してくれた。
「はい、おやすみなさい。いい夢を」
少しだけ道には迷ったけど、なんとか部屋には戻れた。
ベッドの木材もシーツのシルクも装飾に使われている技術も最高級。
柔らかい布団の中に入って、あれだけのことがあったから眠れなかったらどうしよう。
なんて考えた数秒後には意識が飛んだ。
目覚めもすっきり。
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