第6話 ようじょせんぱいの命令?
(第二用務室。後輩くんとあずきが椅子を並べ問題集を解いている)
……ですから、ここからここまでの文が関係代名詞の内容ですので、
こうくくって訳してあげると分かりやすいのです
一見長い文章もこうやって構文ごとに考えてあげると……
そうですそうです、後輩くんなかなか呑み込みが早いです
……分かりやすい? わたしの教え方が?
えへへ~、そう言ってもらえると光栄です
「意外」ってなんでですか!?
言ったでしょう、わたしは優等生だと
あ~、疑ってたんですか~?
「初めて先輩らしいと思った」って……
だ~か~ら~、褒めるときはもっと素直に褒めてください!
後輩くんの勉強をしっかり見てあげられるわたしはオトナの女
どこからどう見ても偉大なる先輩様でしょう?
あ~、また笑う~!
そんなにわたしが先輩には見えませんか?
……えっと、「この喋りかたのせい」ですか?
たしかに、後輩くんは最初あったときからタメ口でしたね
そう言われてみると……
いえ、別に後輩くんに遠慮してるわけでは……
ただのクセです
え~、ほんとですか?
もっと偉そうにしたら、先輩っぽく見えますか?
め、命令するんですか?
わたしが後輩くんに?
え~、「試しに」って……
じゃ、じゃあコホン……
やってみます
こ、後輩くん!
たまには後輩くんが、わたしにコーヒーを淹れてくださ……
えっと……い、淹れなさい!
……淹れ方が分からない?
仕方ないですね~
じゃあ、一緒にやりましょう
まずはポッドを洗って、フィルターをここに設置してですね……
おいしく淹れるコツはこうやって……
電動式なので、ここに水を設置してあげるだけで……
スイッチオン、です!
はい、上手です
後輩くん、いつも吞み込みは早いんですよね~
はい、ではあちらの棚からカップを取って並べてください
ありがとうございます
……ど、どうでした?
全然ダメ!?
途中から丁寧語に戻ってた?
ちっとも先輩らしくない?
……なんと!?
も、もう一回、今度こそうまくやってみせま……
……や、やるわ!
え~っと、じゃあ……
後輩くん、今日は第二用務室のお掃除をする日です……なの!
だから、先輩として命令しま……命令するわ!
わたしの代わりに部屋を掃除してくださ……掃除しなさい!
そうですね、え、えっと、まずは棚のほこりをはらってもらって……
そのあいだにわたしはモップの準備を……
えっ? それも後輩くんがやってくれるんですか?
わたしは何もしなくても……?
「ソファでふんぞり返ってろ」って……
そ、そういうわけには。
わ、分かりました、先輩らしく、ですね!
そ、そう。いい心がけね
じゃ、じゃあお願いしま……するわ!
SE:ソファに座る音
(後輩くん、掃除を始める)
SE:掃除の音
そうそう、その調子……
バケツはあっちにあるから水を用意して……
ああ、はい。隙間のほこりもお願いしま……するわ
えっ、そこまで丁寧にはわたしもやってないけど……
せっかくだから?
じゃ、じゃあよろしくお願い……す、するわ
……あの、ほんとにわたし手伝わなくても?
そ、そうですか……
(後輩くん、掃除音を続ける)
う、うぅぅ……
んん~……
む、胸が痛い……
あ~、やっぱりダメです!
もう無理です、ギブアップです!
後輩くんに命令してこき使うなんて
わたしにはできません!
心がズキズキ痛いです
今日もわたしの負けでいいです!
もう~、なんでそんなに笑うんですか
「そのほうがわたしらしくていい」ですか……
そうですね
無理に背伸びして、オトナっぽく振る舞おうとするのも
なんか違う気がしてきました
というか、その……
できればなんですけど……
今後も、勝負のこととかなくても、第二用務室に来てもらうの……
ダメ、でしょうか?
「どうして」って、それはえっと……
その、なんと言いますか……
楽しいから、です!
後輩くんとここで色々やって過ごすのが……
楽しくって
なんだか最近は、後輩くんがいつ来てくれるんだろうって
ソワソワしてしまって……
一人でこの部屋を管理していたときより、
ずっとずっと楽しいんです
えっ、後輩くんもですか?
ほ、ほんとに?
「毎日来るのを楽しみにしてる」って……
そう思ってくれるんですか?
た、たしかに二年生の教室からここ、離れてますもんね
そんなにいつも急いできてくれてたんですか
それは申し訳ないですが……
けど、嬉しいです
えへへへへ「もっと一緒にいたい」ですか?
ふへへへへ~、わたしもです!
だ、だって、嬉しくって顔、にやけちゃいます
うへへへへ
へ、「変な声」って失礼な!?
後輩くんだって、今顔思いっきりにやけてますよ~
ほんとです
SE:チャイムの音
あっ、もうこんな時間
そろそろ下校しないとですね
はいっ、また明日です
SE:扉の開閉音
あ、待って!
わたしもすぐにしたくするので……
今日は一緒に帰りませんか?
だめ、ですか?
オーケー?
ほんとですか?
やった~!
すぐ準備しますねっ
はいっ
また明日からもよろしくお願いします
後輩くん
SE:ドアの開閉音
END
ようじょせんぱいが勝負をしかけてきた! 倉名まさ @masa_kurana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます