第5話 ようじょせんぱいの添い寝!

SE:扉の開閉音

こんにちはです、後輩くん


やっぱり律儀ですね〜


こうしてちゃんと来てもらえると、ホッとしますね


も、もちろん勝負のためです


ふっふっふ、今日はとっておきの秘策を考えてきました


四日ぶりに先輩の偉大さを思い知るといいのです


……あれっ、後輩くん、なんだか反応薄いですね


ぼ〜っとしてます?


とりあえずコーヒー淹れましょうか?


……って、フラフラじゃないですか!?


大丈夫ですか、風邪ですか!?


とにかく座ってください!


SE:椅子に座る音

「ただの寝不足」?


……いったいどうして?


えっ、新作のゲーム……ですか?


あ~、それ、有名なシリーズですよね


タイトルはネットのCMで見て知ってます


新作の発売日、金曜日だったんですね


はぁ……そんなに楽しみだったんですか?



おお、それほどまでに……


後輩くん、意外とゲーマーだったんですね


まだまだ、知らない面がたくさんありますね


で、昨日もやり込んでいて


気づいたら朝だった……って、徹夜したってことですか!?


そりゃフラフラにもなりますよ!


後輩くん、人のことさんざん子供っぽいって言っておいて


自分もけっこうアレじゃないですか……


「ぶっちゃけ今日も早く帰ってゲームしたい」って


だ〜め〜ですっ!


そんな体調で下校したら、車に轢かれちゃいますよっ?


とにかくソファに横になってください


勝負も今日のところは休戦です


さあ、早く!


SE:ソファに横になる音

コーヒーはやめにして


よく眠れるハーブティーを淹れてあげますから


待っててください


SE:ティーポットを用意する音

SE:お湯を沸かす音

できたら、ちょっとだけ起き上がってくださいね


SE:ソファから立ち上がろうとする音

いいから! 遠慮しちゃだめです


今はわたしに任せて、寝ててください


今日も部屋の内鍵かけときますから


ゆっくり寝てください


ほら、上着も脱いで


楽にしちゃってください


たしか奥のほうに毛布もあったはず……


待っててくださいね~


(あずき、毛布を抱えてやってくる)

……あれ、もう寝ちゃったんですか?


よっぽど眠かったんですね、もう……


こんな体調でも約束守って来てくれるのは嬉しいですけど……


お茶は一人で飲むとしますか


SE:毛布をかける音

SE:椅子に座る音

SE:ティーカップを机に置く音


ふぅ、ちょっと寂しい気もします


ふふふっ、こうしてみると寝顔はかわいいですね~


こっそり写真、撮っちゃおうかな?


って、何を考えてるの、わたしは!?


ん~、それにしても……平和な寝顔ですね~


見てるだけで、こっちも眠たくなってきちゃいます……


ふあ~あ……


(あずき、あくびをしながら)

それにしても……


この毛布、けっこう手触りいいですね


うちのお布団よりもイイやつなのでは……?


ずっと用務室にしまわれて使われてないのも


ちょっとかわいそうな気がしますね


ふふっ、ほんとに平和な寝顔ですね~


はぁ~、ソファ占拠されてしまいましたが……


今日もお昼寝日和です


ちょ、ちょっとだけわたしも端のほうに


お邪魔させてもらおうかなぁ


また後輩くんに怒られるでしょうか……?


一瞬、一瞬だけですので……


後輩くん、寝てますよね?


(少し大きな声で呼びかける)

寝てますよね!?


寝たふりしてこっそり薄目開けてませんよね?


お~い……! お~い……!


つんつん、つんつん……


だ、大丈夫そうですね


じゃあ、ちょこっとだけ……


失礼しま~す


(SE:毛布の中に潜りこむ音)

な、なぜでしょう


ものすごく落ち着きます


男の人と一緒のソファで寝てるなんて


もっとドキドキするものかと思ってましたが……


(あずき、大きなあくび)

ふあぁ、不思議です……


後輩くんの温もり、すっごく落ち着きます


も、もう少しだけくっついても大丈夫でしょうか?


起きないでくださいよ~


ふあぁ、後輩くんの眠気が


あっという間に乗り移ってくるみたいです


ああ、これはマズいです……


まぶたを開けていられません


ふあぁぁ


(あずき寝息を立てる)

すぅ~……すぅ~……すぅ~……んみゅう……

(以下、10分ほど、あずきの寝息だけが流れる)


すぅ~……すぅ~……すぅ~……んん?


(あずき、目を覚ます)

あれ、ここ……?


第二用務室?


またわたし、お昼寝しちゃったのか……


んん~?


でも、なんかいつもよりソファが狭いような……


(あずき、横で寝ている後輩くんに気づく)

ふ、ふえぇぇぇ!?


そ、そうでした!


寝不足の後輩くんを寝かせてあげて……


そのまま……


こ、これはマズいです


まるで寝込みを襲ったかのようです


これじゃ、オトナの女どころか痴女です


後輩くんが目を覚ます前に脱出しないと!?


(あずき、起き上がろうとする)

SE:ソファのきしむ音

こ、後輩くんの、腕が胸のあたりに


はうぅぅぅぅ


にぎにぎしないでくださいぃ


こ、これ、どかしたら起きちゃうでしょうか?


というか、か、顔、近い……!?


と、吐息が当たって……


あうぅぅ、なんだか顔が熱いです


あうあうあうあう……


な、なんということでしょう


こんなときに限って……


おトイレ……行きたくなってきました


ヤバいです、この状況はほんとにマズいです


今まで築きあげた先輩の威厳が


粉々に砕け散ってしまいます……!


小松あずき、人生最大のピンチかもしれません!?


そぅっと、そ~っと脱出を……


はうぅぅ、なんでこんなことに……


(後輩くん、寝言を言って寝返りをうつ)

ほわっ!?


……お、起きてないですね?


寝返りうっただけ……?


せ、セーフですね?


ふぅ……


それにしても後輩くん、熟睡してますね……


よっぽど寝不足だったんですね


今夜はゲームはほどほどにしてくださいね……


よっ、ふっ……ほっ


(あずき、ソファから立ち上がる)

SE:ソファがきしむ音

ふぅ、なんとか脱出完了しました


って、スカートがぁっ!?


ひ、引っかかって取れない!?


あうぅ、めくれそうです……


なんという……!


後輩くんめ~


よくもわたしのスカートをお尻の下に……


ううぅ、と、取れない……!


(後輩くん、不意に起き上がる)

(あずき、盛大にすっ転ぶ)

SE:あずきが転ぶどさどさという音)

へっ、うわああぁ!


あっ……


こ、後輩くん、そ、その……


お、おはようございます


こ、これはなんでもないんです!


ちょっとけつまずいてしまって


なっ!?


そんなに笑うことないじゃないですか!?


わたしのかっこう、そんなに変ですか?


……あっさりうなずかないでください~


もうっ!


言っておきますけど、後輩くんだって、爆睡してたんですからね


それはそれはおマヌケな寝顔だったんですから


って、そんなにヘコまないでください


今のは売り言葉に買い言葉と言いますか……


ごめんなさい、そんなに変じゃなかったです


むしろ、どっちかというとかわいかったというか……


ひゃあうっ、で、ですからなんでもないです~!


「寝てしまってごめん」って、ぜんぜん気にしないでください


むしろ、ゆっくり休んでもらえて嬉しいです


……えっ、変な夢を見た気がする?


ゲームのやりすぎなんじゃないですか~?


そういうのじゃなくて……?


わたしが後輩くんと一緒に二人で……


な、な、な……なんですか、それ!?


そんなわけないじゃないですか!?


……あ、いや大声出してすみません


ゆ、夢の中の話ですもんね!


後輩くんは何も悪くないです


……顔赤い?


こ、これは怒ってるわけじゃなくて……


そ、そのぅ、ほら、あれです、なんというか……


と・に・か・く……!


さすがに下校しないと、先生に見つかったら怒られる時間ですよ


体調大丈夫そうなら、支度してください


……スッキリした?


それは良かったです


ゲームもいいですけど、あまり夜更かししちゃダメですよ?


せっかくなら、元気な後輩くんに明日も会いたいです


はい、また明日です


(後輩くん、部屋を出る)

SE:扉の開閉音


ふ~、まだ顔が熱い気がします


気の迷いで大変なことをしてしまいました……


でも……


後輩くんのおとなり、すごくホッとしました


不思議です


……あっ、そうでした!


おトイレ……!

(あずき、急ぎ足で部屋を出る)

SE:扉の開閉音


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