第4話 後輩くんのマッサージ!


SE: 椅子に座る音

人にマッサージしてもらうなんて、あんまり経験ないので……


な、なんだかちょっと緊張しますね


……えっ、あ、はい。たしかにそうですね!


今こそ先輩の余裕を見せつけるときです


さあっ、偉大なる先輩様の肩を揉ませてあげるのです


ありがたく思いなさ……いでっ


いでででっ!?


ごめんなさいごめんなさい、調子乗り過ぎました


頭ぐりぐり止めてください~


もうっ!


後輩くんは女子に対して乱暴すぎます!


そんなんでちゃんとマッサージなんてできるんですか?


んっ……あふっ……ふあぁ……ああぁ……んおおぉ……


はうぅ……んん~……あふぅ……ふへぇ……ふひゅぅ……


お、おおおっ!?


こ、これは……メチャクチャ気持ちいいです


強すぎず、弱すぎず……絶妙な力加減です


後輩くん、一体、どこでこんな超絶技巧を!?


あっ……んん~……そこ、そこですぅ……もっと下……そこっ、そこですぅ……


はぁ~……ふひぃぃ……ふあうぅぅ……ふへえぇぇ……


……ツボに効きますぅ


絶妙すぎますぅ


えっ、お爺さんが整体師さん?


ちょ、ちょっと!?


プロの家系のサラブレッドじゃないですか!?


「そんなこともない」ってそんなことありまくりです!


レベルの違いを思い知りました……


うぅ、そんな人に偉そうにマッサージ講釈してなんて……


めちゃくちゃ恥ずかしくなってきました


あうぅ……ふぅん……あふうぅぅ……


ふゆうぅぅ……んひいぃぃ……おほおぉぉ……


へ、変な声……!?


出してません! 気のせいです!


変だと思うから変に聞こえるんです!


はうぅ……んん……ふあぁ……あひゅうぅぅ……


あ、効く、効く、効くぅぅぅ……あ”あ”あ”、ああぁぁぁ〜!


……し、仕方ないじゃないですか!?


こ、こんなの気持ち良すぎますっ


ええ!? ちょ、ちょっと……!


や、やめないでください!


声、ガマンしますから〜


がんばりますから~


お願いします〜


続きをどうか~


ん……んん……っ……くぅっ……ふっ……んんっ…


んくっ……ん……ふぅ……はふっ……んんん~……


ど、どうですか!?


ちゃんと声ガマンできてますよね!?


「余計ヤらしくなった」ってなんでですか!?


「小学生にイタズラしてるみたいで気が引ける」……?


って、そこぉ、誰が小学生ですか!


あんっ……んうぅ……ふあぁ……あふっ……


ふ、不意打ちとは卑怯です!


あ、こ、声ガマンでしたね、はい……ガンバリマス


んっ……くっ……んん……くっ……んふっ……ふぅん……うぅ……


えっ、そんなに固いですか、わたしの肩?


それにちょっと歪んでる?


ん〜、自分ではよく分かりませんが……


さ、三十代の肩ですか!?


しょ、ショックです


そんな方向でオトナ認定されてしまうとは……


やっぱりわたしも受験生ですからね


勉強疲れかもしれないです


「ソファで変な姿勢で寝るから」って


いつもわたしがここで居眠りしてるみたいに言わないでくださいっ!


後輩くんがきた時のことは、たまたまですよ、たまたま


あ……ん、んん……ッ……はぁうっ……


えっ……もうおしまいですか?


初回でやり過ぎるのもよくないのですか


なるほどです……


プロの言葉を信じます


いえ、もう完璧プロです


自信持ってください!


わたしの肩、生まれ変わったみたいに軽いです


はふぅ〜


大げさじゃないですよ!


あ、あの、後輩くん……


できれば背中と腰もお願いしたいのですが……


「絵面的にヤバい」って……


そんなことないです!


ごく健全なスキンシップです


お願いします、このとおりです


受験を控えた先輩の身体を助けると思って……


ほんとですか、ありがとうございます!


では、さっそくソファに


SE:ソファに横になる音

さあ、後輩くん


遠慮なくどかっと乗っかってください


何をまごまごしてるんですか、さあっ


SE:後輩くんがそっと上に乗る衣擦れの音

え、えっと、その態勢キツくないですか?


もっと体重かけて大丈夫ですよ?


そうですか、後輩くんが大丈夫ならいいんですが……


んっ……うんっ……はうぅっ……ほふぅっ……


あうぅ、死ぬほど気持ちいいのですが!?


後輩くん、かまわないのでもっと力強く


思いっきりやっちゃって下さい!


あはふぅ……ふひゃふいぃ……んむうぅぅ……


へっ、声気持ち悪い?


な、な、な、なんてこと言うんですか!?


レディに対して失敬な!


あふぅ、ひゅみぃぃ、ふじゅうぅぅ


だ、だってぇ……


こんなの、ガマンしろという方が無理です


横暴です!


あうぅぅ、分かりました、分かりましたっ


声ガマンしますからやめないでくださいぃ!


ん………うん……くぅっ……ふ〜ふ〜……


はうぅぅ、溶けるぅ


全身が溶けていきますぅ


ふはぁ〜


まるで温泉に浸かってるみたいな気分です〜


肩凝り、疲労回復、冷え症にも効きそうですね


これから後輩くんのことを


温泉くんとお呼びしても……?


あっ、いでででで


ちょ、ちょっと敬意を込めて命名したのに


なんで怒るんですか〜


わ、分かりました、撤回します


だから、マッサージ止めないでください〜


ん……はう……ッ〜〜……!


はぁ、腰回りも効きますぅ


大変助けられておりますぅ


だいたい、学校の椅子


女子のお尻を乗っけるには固すぎると思いませんか!?


あ〜、もちろん男子もです


そこは男女平等で……


後輩くん、生徒会長にでもなって


そこへん改善してもらえませんか?


「生徒会長にそんな権限ない」?


ん〜、そうなんですか?


あっ、いや、わたしもよく知らないです


んっ……んふ……くぅっ……あふ〜……


はうぅぅぅ……


え、ええっ!?


もうおしまいですか!?


も、もうちょっと下のほうも


お願いできませんか……?


はい、お尻と腿の付け根あたりを……


「これ以上は本気で……」って、大丈夫です、危なくないです!


スカートがまくれそう?


ふ、ふえぇぇ!?


し、失礼を……!


でも、大丈夫です!


下にショートパンツを履いてますから!


これも女子のたしなみというものです


気にせずやっちゃってください!


絶対訴えたりしませんから〜


どうかお慈悲を〜


はうぅ、ありがとうございます


ありがとうございます、後輩様~


んっ……ふくっ……ふみゅっ……ふひいぃ……


はふぅ〜、い、生き返る〜


もう片方も……お、お願いします!


はむぅ……ふひぃ……ふへぇ……おふうぅぅ……


ああぁ〜、天国ですぅ


極楽ですぅ


SE:ソファから立ち上がる音

このたびは誠にありがとうございました


大変助けられました


ふへへへへ、恩返しに後輩くんの家に、機織りに行きたいくらいです


へっ? 勝負……?


ああ〜、すっかり忘れてました!


今日のとこは……よくて引き分けです


正直に言えば、負けたと思います


後輩くんのマッサージに比べたら


わたしのなんて子どものまね事レベルでした


「そんなことない?」「気持ち良かった?」


ああ~、そう言って頂けると大変ありがたいですが……


けど、これで勝ったとは思えません


どう考えても、わたしのほうが癒されてしまいました


しかし、次こそは!


必ずや、オトナの女と認めさせてみせるのです


もちろんです!


まだやるに決まってます!


ですから……明日もちゃんと来てくださいね?


あっ、そっか、明日はお休みでした


三連休……ですね


次にお会いするのは火曜日ですね……


そっかぁ……


い、いえ。別にガッカリしたりなんかしてませんよ!?


連休のあいだに、たっぷり次の作戦を練っておきますから


覚悟してください!


……も、もちろん受験勉強だってちゃんとやります〜


余計なお世話です〜


でも、心配してくれてありがとうです


その辺は、ちゃんとしておきますので……


はい、では、また火曜日にです


後輩くん

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