第3話 ようじょせんぱいのマッサージ!


SE: 扉の開閉音

いらっしゃいです


ふっふっふ、この資料室で会うのも三度目ですね、後輩くん


今日の小松あずきは一味違うのです


とっておきの秘策を用意しましたからね


えっ、「お弁当の時も同じこと言ってた」って……


そんな細かいことはいいんです!


聞きたいですか?


そんなに聞きたいのですか?


う~ん、どうしようかなぁ……


……ああ、待って!


だ~か~ら~、


そうやって、ちょくちょく帰ろうとしないでください


そのムーブ、けっこう傷つくんですよ!


言います、言いますから!


実はですね……


昨日、オトナの女のなんたるかを見つけ出すため


オトナのお姉さんの配信動画を


たくさん探したのです


ち、ち、ち、違います~!!


アダルトサイトじゃありません~


というか、後輩くんはそういうの観てるんですか?


あ~、いっけないんだ~


……ふーん、ほんとですか~?


まあ、いいです


後輩くんが見てないというのであれば、


今日のところは信用しましょう


え、エッチな動画の話はおしまいです


話を元に戻します


え~っと、どこまで言いましたっけ?


そうそう……


それでオトナのお姉さんの配信動画を色々観ていて


気づいたのです!


オトナの女とは、すなわち


“異性に安らぎと癒しを与える存在である”、と!


や~、拍手ありがとうございます、ありがとうございます


えへへへへ~


ちょっと! だから帰ろうとしないでください!


「発見できて良かったですね」じゃないです!


ここからが本題なんです~


というわけでですね……


今からわたしが後輩くんに


マッサージをしてあげたいと思います


「なんで」ってなんでなんでなんですか?


……何言ってるか分からない?


ですから~、マッサージですよ、マッサージ


いや~、お姉様のバーチャルマッサージ配信動画


あれはヤバいですね~


同性のわたしでも、ちょっとハマっちゃいそうでした


あれぞ、あるべきオトナの女の姿!


えっ、観たい?


おやおや、後輩くんもお好きですな~


ふふふふっ、いいでしょう


特別にお教えしましょう!


後輩くんのスマホ、通信制限だいじょうぶですか?


まず動画配信アプリを起ち上げて……


……って違います~!


今日は一緒に動画を観る回じゃありません!


わたしが後輩くんにマッサージして、


そして「これぞオトナの女、尊敬すべき先輩に他ならない!」


と認めさせる日なんです~


動画のURLはあとで教えますから


今はマッサージ、させてください~!


えっ、いいんですか!?


ほんとですか!?


ありがとうございます


って、なんでわたしがお礼を言ってるんですか!?


ああ~、待って待って待って


……やります、やらせてくださいっ


では、まず椅子に座ってください


SE:椅子のガタっと鳴る音

肩からいきますよ~


うんしょ……んしょ……んん……んんー?


びみょ~に力が入れにくいですね~


なんか思ってたのとちょっと違います


後輩くん、制服の上着、脱いでもらえますか?


なんでセクハラですかっ!?


その下にシャツ着てる?


だったらいいじゃないですかっ!?


ほら、早く~


はい、オッケーです


畳んでここに置いときますね


もみもみ……もみもみ……ほっ……ふっ……


もみもみ……もみもみ……よっ……んっ……ふんっ……ん……んっ


お~、後輩くんけっこう凝ってますね~


ちゃんと運動してますか~?


首まわりも失礼しますね~


んしょ……んん……ふっ……よっ……ふんっ……


おお~、気持ちいい?


それは良かったです!


お母さんにもけっこう好評なんですよ~


えっ、ちっちゃい身体でがんばってて偉いって……


ちっちゃいは余計です~、もう!


後輩くんはいっつも一言多いんですから


は~い、じゃあお次は肩たたきしますね~


とん、とん、とん、とん、とん、とん……


とん、とん、とん、とん、とん、とん……


どうですか~、痛くありませんか~?


なら良かったです~


なかなか固くて反抗的な肩ですね~


後輩くん本人そっくりです


とん、とん、とん、とん、とん、とん……


とん、とん、とん、とん、とん、とん……


はい、肩たたき終了です


お疲れさまでした~


いえいえ~


お礼を言ってもらうのはまだ早いですよ~


今度は背中と腰のマッサージをしますので


あっちのクッションにうつ伏せになってください


ちょ~っとだけ、馬乗りにならせてもらいますね~


え~「それはさすがにマズい」って


大丈夫です、問題ないです


わたし、背中もけっこう得意なんですよ~


そういう話じゃない?


……「誰かに見られたら問題」ですか?


分かりましたっ


では、内側から部屋の鍵、閉めときましょう!


これなら、大丈夫!


「余計に危ない」……ですか?


もう~、わけのわからないこと言ってないで


おとなしくマッサージされてください~


大丈夫です、大丈夫


痛くしませんから


針とかお灸とか使ったりしませんから


そうこなくっちゃです!


じゃあ、ソファに横になってください


SE:ソファに横たわる音

もっと気楽な感じでお願いします


そうですそうです、その調子です


我が家だと思ってリラックスしてください


はい、じゃあ上、失礼しますね~


重くないですか?


平気ですか?


あっ、また「小っちゃいから」って言おうとしましたね!


なんとなく、気配で分かるようになってきました


もう~


「口に出してないからセーフ」って……


……まあ、いいです。そういうことにしてあげます


マウント取られたこの状況で


わたしのこと、子ども扱いしたらどんな目に合うか


よく想像してみてください


脇腹こちょこちょの刑に処しますからねっ!


……じゃあ、気を取り直して、マッサージいきます


ふんっ……んっ……よっ……ほっ……


んしょっ……ふっ……ふんっ……はっ……ふっ……


どうですか? 悪くない心地ですか?


それは何よりです


肩甲骨のあいだの、ここの筋肉をですね


ぐい〜っと……


そんでもってぐりぐりぐりっと……


腕回りも失礼しますね~


もみもみ……もみもみ……もみもみ……


痛くないですか?


ちょうどいいですか?


もう少しだけ、力入れますね〜


ん……ふっ……んん……ふぅ……


よいしょっ……ほっ……はっ……やっ……


よしっ、最後に腰のほうをお揉みしてフィニッシュです


んしょっ……ふっ……んっ……ふん……ん……んっ……


はっ……ふぅっ……はぁっ……ほっ……んん……んん~……


ど、どうですか、いい感じですか?


こうして触れさせて頂くと


男の人の身体ってやっぱり大きくて


たくましいですね


だ~か~ら~、なんでセクハラですかっ!?


せっかく褒めてあげたのに……


ではこれでマッサージ終了です


起き上がってください


SE:ソファから立ち上がる音

……ど、どうですか? 


安心しましたか?


癒されましたか?


おお! やった~!


これでわたしのこと、オトナの女と認識してくれますね?


ヴィクトリー、なのです!


ぶいぶい!


ふへへへ~、もっと褒めてください~


ってぇ、頭なでなではやめてください!


「喜び方が子どもっぽくてかわいい」って


だ~か~ら~、わたしは先輩です


オトナの女です!


今回ばかりはわたしの勝ちなので、


はっきりそう主張させてもらいます!


……へっ?


次は後輩くんがわたしにマッサージを……?


な、なんで!?


「自分だけやってもらいっぱなしじゃ悪い」って……


いえ、だってこれは勝負ですから……


ぜんぜん悪いなんてことないですよ


最初に会ったときから思ってましたけど、


後輩くんって口は悪いけど、意外と律儀ですよね


なんやかやで、こうして毎日用務室まで来てくれますし……


えっ、先輩特権……ですか?


えへへ~、そうまで言われては仕方ないですね~


じゃあ、お願いしちゃおうかな~


チョロい……って、聞こえてますよ~


もうっ!


じゃ、じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます


よろしくお願いします、後輩くん

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