魚澄フェイクウェイク

 そうそう。いや、何に驚いたってさ、つまり俺のクラスメイトの中に、固定の能力を持っている人がいるってことでしょ。

 そう、一般人からするとそれが驚きなんだよ。うん、多分他にもいる。

 

 朝起きて、支度。今はその後の状態だ。と、言っても。着替えながら、諒太の教師の愚痴を聞き流している最中だ。

「昨日の、例の事件。何か犯人は分かった?」

 諒太が言う。「six o'clock」と書かれたリストバンドが目立つ。

「いいや、全然」

 そうだよなあ、諒太は肩を落とす。

「もう手当たり次第に能力をコピーして、少しずつ絞って行った方がいいんじゃない?」

「犯人は絶対能力者だもんね。実質密室だし」

 実質、密室とリズムをつけてもう一度行った。着替えながら話していた影響か、途中からボタンを掛け違えていた。やり直しを喰らう。

「そう言えばね、少し前にものを開け閉めする能力をコピーしたことがあるんだ」

「どこで」

「音楽の授業中」

「じゃあクラスの誰かじゃん」

 恐らくその能力の持ち主が犯人だ。何故なら、それを使えば密室なんて関係なくなるから。

 と、いうことで。人員増強のため、使える人材探しだ。と、いっても、最近話題のキャリアアップのためのアプリ等を使うわけではない。

 まあ、真面目に言うと、二人ほど候補は居る。小暮碧生。少し痩せた、爽やかな印象のある好青年だ。クラスでの人気もある。恐らく、なんらかの能力を持っている。

 そして、山下夕。赤みのかかった茶髪の、小柄な女子。確か水卜夜と仲が良かったはずだ。こちらは、確実に能力を持っている。どう言う効果なのかはわからないが。

 ここらの辺りは、いや当たりは、智紀が考えても仕方がない。諒太以外と仲良くしてこなかったのは智紀の責任だし、交渉術、かっこつけず言えばコミュニケーション能力は、非能力者であれど、一般人以上に身についているはずだ。

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